第28話 邪魔してくる二人
「担当者さんもこんな奴の相手して大変だよな。あぁそうだ知ってますか? こいつ俺の同期だったんですが前の職場で顧客情報漏洩させて首になったんですよ。履歴書とかその辺しっかりチェックしてくださいね」
「……一体なんですか貴方たちは?」
阿久津が俺を嘲笑うと目の前の担当者が眼鏡を光らせて問いかけた。
「おっとこれは失礼。この男が適当なこと言ってたらいけないと思ってつい。しかし貴方はまた知的な美人ですね。俺の担当も貴方みたいな人だったらよかったのに」
「ちょっと阿久津!」
阿久津の奴、今度は俺を担当してくれている彼女にまで声かけてるぞ。本当気の多い奴だ。未瑠も眉を怒らせているな。まぁお前は阿久津の事言えないが。
「余計なお世話です。そもそも履歴書こそ記入して貰ってますが首になった理由までは問いません。それよりも貴方たち、冒険者をやろうとするにはあまりに品性がなさすぎです。恥を知りなさい!」
「なッ!」
担当者の女性が阿久津と未瑠に向けて怒鳴ってくれた。阿久津も言葉を失っている。
「香川の言うとおりだ。お前たちもさっさと次に進みなさい。無駄口叩いている暇はないぞ」
すると他の担当者が二人を叱咤した。見たところ阿久津か未瑠を担当した人っぽいな。
「チッ。可愛くない女だぜ。いくぞ未瑠」
「偉そうにしないで!」
そんな捨て台詞を吐いて阿久津が出ていった。未瑠もその後を追いかけていく。
「えっと、ありがとうございます香川さん」
今他の担当者がそう呼んでいたから俺も呼んでみた。よく見るとネームプレートにも香川 香の文字があった。
「失礼だと思ったから言ったまでです。それよりも続けますよ」
表情を変えること無く香川が手続きを続けてくれた。基本的には書類に不備がないかの確認を取ってるように思える。
「そういえば履歴書なども必要なのですね。少し驚きました」
何となく世間話程度に話を振ってみた。香川は本当に淡々と業務をこなすので沈黙に耐えきれずと言ったところなんだけどな。
「履歴書は手にしたジョブに適正があるかを図る上で重要です。その為に一通り書いてもらっているのです」
「え? 履歴書がですか?」
「ピキィ?」
「ワオン?」
香川の答えに山守は勿論ラムとモコも不思議そうにしていた。俺としても履歴書が必要な理由がジョブに関係していたとは意外に思う。
「ジョブストーンでジョブが身につくにしても個々の能力によって発揮できる力に違いがあるのです。例えば戦士系のジョブならやはり体育会系の方が実力を発揮しやすいですし魔法系は学が高いほうがその力を発揮しやすい。これはただのイメージなどではなく研究でも明らかにされてます」
説明を聞いて正直驚いた。まさかそんな研究がされているなんて。でも、よく考えたら当然かも知れない。
ジョブを手に入れると本来人ではありえないようなスキルを使用できるようになるわけだし、そんな奇跡みたいな効果を発揮できるジョブストーンについて研究者が放っておく訳がない。
「それなら風間さんの適性はどうなんですか?」
横で聞いていた山守が香川に確認した。まさかそこを彼女が聞いてくれるとは思ってなかった。いや、確かに気になるところだけど。
「先ず大前提として農民のジョブと相性が良いのは農業の経験が有る方です。そのまんまに思うかもしれませんけどね」
ま、まぁ言われてみれはその通りだよな。
「ただ農民に関しては似たような事をしていても効果は上昇しますからね。貴方はキャンプが趣味ということですがそれも農民の適正を図る上で有利に働きます。結論で言えば農民としては十分やっていけると判断します」
「ワオン!」
「ピキィッ」
香川の判断にラムもモコも嬉しそうだ。何となく俺が農民としてやっていけると察したのかもしれない。
「よしよし二匹とも可愛いぞ~」
俺は二匹の頭を撫でた。モフモフしてて癒されるな。ラムもモコも気持ちよさそうに目を細めた。
「書類はこれで問題ありませんね。それではこの後は二階で採血してもらい基本的な身体検査を受けてもらいます。また今回は既にモンスターも使役されてますので二匹のモンスターの体も調べさせてもらい鑑定も受けてもらいます」
書類のチェックが終わったと思えばどうやらまだまだやることは多そうだ。
「それらが一通り終わり問題がなければ冒険者として手続きを進めさせて頂きます」
最後にそう締めくくられ俺たちは指示通り動くこととなった――
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