第19話 生産に役立つジョブ

 改めて俺はジョブについての詳しい説明を見ることにした。壁に映し出されたステータスから気になった点を聞くことで詳細を知ることが出来るのだ。


「この農民について詳しく知りたい」


ジョブ説明

・農業に強い生産系のジョブ。戦闘だけではなく農業に関わる行動でもレベルを上げられる。畑を耕し作物を育てることが得意。スキルも生産に関連する物が多く戦闘はあまり得意ではないが、特定の道具の使用やジョブレベルが上がることで戦闘に適したスキルを覚えることがある。


 農民の情報が壁に表示された。これが農民の基本的な情報か。生産が得意なジョブだったわけだけど、一応戦闘面で役立つスキルを覚えられる可能性もあるようだ。ただ基本的には戦闘向きではないのだろう。


 もっともこの放置ダンジョンでは戦闘が起きる可能性がそもそもない筈だ。だから生産に関するスキルの方がありがたいといえる。


「スキルについても詳しく知りたい」


 俺がそう言うと、今度はスキルについての?明が表示された。


スキル

・土壌改良(5㎡)……土壌を改良し作物が育ちやすくなる。効果範囲は5㎡まで。

・土鑑定……土を鑑定し質や状態を把握出来る。

・耕作力向上(小)……畑を耕す能力が僅かに向上する。

・栽培力向上(小)……少しだけ栽培に関する影響が強化され、作物の成長が早くなり栄養価も高くなる。


「おお、コレは確かに作物を育てるのに役立ちそうだ」

「ピキィ♪」

「ワンワン♪」


 俺がそう言うとモコもラムも嬉しそうだ。しかし、流石にレベルが低いからかスキルの効果はまだ高くなさそうだ。

 

 とは言えあるとないとでは大きく違うだろうから素直に喜んでおかないとな。


「さてと、ジョブの詳細はだいたいわかったし早速一つ試してみるかな」


 さっきから気になっていたこと。それは昨日ダンジョン内で蒔いた種がもう芽生えてることだった。


 太陽の光も入り込まない洞窟タイプのダンジョンでこんなに成長が早いなんてとても気になる。


 だから俺は早速取得したばかりのスキルを使ってみることにした。


「スキル・土鑑定!」  


 種蒔きした箇所の土を見ながら鑑定してみた。これでどんな結果が出るのか、と考えていたらまたジョブストーンが輝き光が伸びた。それを壁に当てて内容を投射する。


鑑定結果

・ダンジョンの土

ダンジョン内に存在する土。長年放置された結果、上質な魔力を含んだ土となった。とても栄養価が高くこの土があることで肥沃な土地となり作物が育つ上で最適な環境となる。この土で育った作物は魔力の影響で様々な効果が付随されることだろう。


「おぉぉ……なんかすごい結果が出てきたぞ……」

「ピキュ~?」

「ワン!」


 鑑定結果をみた俺は驚きと喜びが同時に湧いてきていた。そしてモコとラムは鑑定結果をみたことで不思議そうに鳴き声を上げている。


 それにしてもまさかダンジョン内の土が畑用の土として使えるとは思わなかった。そしてこれだけ早く芽が出てきたことにも合点がいった。


 豊富な魔力が含まれていることで成長を後押ししているのだろう。これなら太陽の力が無くても十分に作物が育つかもしれない。


 幸い他にも土壌改良のスキルがある。5㎡という効果範囲も最初に扱う広さとしては十分なものだ。


「よし! これでダンジョンで新たにやることが見つかったぞ。ここで作物を育てるんだ!」

「ピキュ~♪」

「ワオ~ン!」


 俺の決意を後押すようにモコとラムも喜んでいた。飛び跳ねてはしゃぐ姿がとても可愛らしい。


「貴方たち! ここで勝手に何をしているのですか!」


 その時だった。ダンジョン内に響き渡る怒声。声は若い女の子の物だった。慌てて振り返ると、そこには高校生くらいに見える女の子の姿があった。


「あ、あの……君は?」

「わ、私はこのダンジョンを管理する山守やもり 秋月あつきです。無断で私の土地に入り込むなんて……貴方たち泥棒なの!」

「泥棒って……」


 女の子は怒っていた。それにしても今この子、山守って言っていたよな? その名字には当然覚えがあった。なぜなら山守はこの山の所有者でもあったからだ。でも俺が知っているのは山守の爺ちゃんだけなんだが――

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