第二章 冒険者登録編

第14話 ダンジョンをお掃除

「よし。じゃあ始めて行くかな」

「ワンッ!」

「ピキッ!」


 俺が道具を手にするとモコもデッキブラシを握りしめた。どうやら一緒に掃除してくれるらしい。ラムもすごくやる気なようだけど流石にラムは掃除道具を持てないか。


 さてまずは川に向かう。そこで水を洗浄機に補充した。この高圧洗浄機はタンク式だからタンクに水を補充して扱える。水源が川の水なのもあってこれにした。


「さぁまずはここだ」

 

 ダンジョンの壁には大量の落書きが残されている。これがずっと気になっていたんだ。この機会に全部洗い落とそう。


 スイッチを入れジェット噴射で水を掛ける。これでまずは汚れを洗い流す。


「ワン!」

 

 するとモコがデッキブラシを手に持って俺の横に立った。どうやら手伝ってくれるようだ。

「それならこの壁をそれでゴシゴシ磨いてくれるかな?」

「ワオンッ!」


 任せてと言わんばかりに元気のいい返事だな。さてタンクの中が空になったし俺はまた川に向かった。水道がないから川まで汲みに行く必要がありこれはわりと手間かもしれない。


「ピキィ」


 ラムが俺の肩に乗った。一緒に川までいきたいようだな。ラムをつれて川までいくとラムが川に飛び込んだ。もしかして川で涼みたかったのだろうか。


 川でパシャパシャしているラムを微笑ましく思いつつ俺はタンクに水を補充した。


「さて戻ろうか」

「ピッ!」


 ラムが俺の肩に戻ってきたのでダンジョン前に戻るとモコがデッキブラシでダンジョンの壁をゴシゴシと磨いてくれていた。落書きもだいぶ薄くなってきている。


「いいぞモコ。その調子だ」

  

 俺も再度ジェット噴射をお見まいした。やはりこういう道具を使うと汚れを落とすのも早いな。


「よし。ダンジョンの外側はこれでもう大丈夫だろう」

「ワン!」

「ピキィ」


 モコも満足そうだ。ラムも嬉しそうにしている。さて引き続き中の掃除だ。中の壁にも落書きはある。それに落書きを落とした後は投げ捨てられたゴミもなんとかしないとな。

 

 しかしよく見ると放置ダンジョンだからって好き勝手な真似してるものだな。どこの誰かはわからないが酷いことをするもんだ。


「俺たちで綺麗にしてやるからな」


 ダンジョンにそう語りかける。まぁダンジョンが聞いているとは思えないが。


――ガ、トウ……。


「うん? モコ、ラム、今なにか言ったか?」

「ワウ?」

「ピキィ~?」


 問いかけてみたがモコモラムも?顔だった。何か聞こえた気がしたけど気の所為だったかもな。


 さて再びジェット噴射を使用するもすぐにタンクが空になった。やはり家庭用だから水もそんなに長くもたないな。


「じゃあまた水を汲みに――」

「ピキィ~!」


 俺がそう言うとラムがピョンピョン跳ねて何かを訴えかけてきた。何だろう? と思っているとラムが高圧洗浄機の蓋の上に体を乗せてピョンピョン跳ねている。


「ラムそれは乗り物じゃないぞ」

「ピッ! ピキ~」


 体を左右に振ってどうやらそういうわけじゃないと言いたげだ。う~ん、もしかして――


「蓋を外せばいいのか?」

「ピキィ」


 どうやらそういうことらしい。なのでタンクの蓋をあけるとなんとラムが体から水を放出してタンクの中身を補充してくれた。


「驚いたなラム。そんなことが出来たのか」

「ピキィ~♪」


 俺が感心してみせるとラムは満更でもないようだった。しかしこれで川まで汲みに行く頻度はへるな。勿論ラムが貯めた水だって無限というわけじゃないからその分はまた汲みに行く必要があるかもだが。


 そんなことを考えているとなんとラムが壁に向かって自ら水を放出して掃除をし始めた。


「おぉ! ありがとうラム」


 お礼を伝えるとラムが嬉しそうにピョンピョン跳ねた。ラムも掃除に参加したかったのかもしれない。

 

 その後ラムはなんと洗剤まで体に取り込んだ。最初は驚いて吐き出すよう言ったがラムはそのまま洗剤入りの水を放出して壁を掃除してくれた。

 

「参ったな。高圧洗浄機顔負けじゃないか」

 

 おかげでより掃除が捗った。俺とラムで壁に水を掛けそれをモコがブラシで磨く。ある程度洗浄機で汚れを落とした後はラムが水掛け担当となり俺もブラシで壁を擦っていった。


 こうしてダンジョンの落書きが消えていきすっかり汚れが目立たなくなった。その後は落ちているゴミを拾い選別してゴミ袋に入れていく。モコは勿論ラムも器用に拾ってくれていた。 

 

「よし! ゴミも片付いたな」

「ワン!」

「ピキィ~♪」


 すっかり見違えたダンジョンを見回し俺たちは満足げに頷いた。分別したゴミは出せる日にちを確認して一番近くのゴミ収集所まで持っていくことになるだろうが、とにかく今は感慨に浸りたい気分である――

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