第27話

愛という感情や、

恋や友情などというものからは、


無縁な世界で生きてきた。


生まれた時からそうだ 。


お袋は普段から明るいが、

昔、1人で泣いていたのを見た事がある。


ただ一度だけ 。


お袋は堅気の人間だ。

だからこの世界で生活していくには、

それなりの覚悟があっただろう 。


千歳もそうだ 。


借金のカタに売り飛ばされてきた

堅気の女 。


俺の仕事について何も知らないだろう。




「若、明日の夜はどちらへ?」


聞いていたのかのように、


朔夜はニヤニヤ聞いてくる。


「盗み聴きとは悪趣味だな 、」


「ち、ちがいますよ?

ただ、あのー 、」


完璧に動揺してんじゃねぇかよ。


「千歳に見せたいものがある、」


「それでは貸切に致しましょうか?」


貸切にすると、

千歳が不思議に思い、


怖がらせてしまうかもしれない。


「いや、いい」

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