第12話 12司支

 イリスを狙う武装集団を全員倒したカケルとダイの二人はしばらく座り込んで休憩をしていた。


 「あぁー疲れた」

 「疲れたってそもそもお前があの時黄昏荘にこいつらが現れた時にボコボコにしとけばよかっただろうが!」

 「あ?それじゃあすぐに話が終わっちまうだろうが!目的が分からないことにはイリスちゃんがどうなったかも分かんねーしな」

 「それはそうだな。悪りぃ」


 カケルとダイが少し休憩をしていると、突然カケルのスマホに九条からの電話がかかってきた。


 『もしもしカケルか?そろそろ片付いた頃だろ』

 「おう、解決したぜ?」

 『ならそこから直ぐに逃げろ。政府の奴らがそっちに向かっている』

 「は!?」

 『じゃあ早く逃げろ。もう三分も待たずして来るぞ気をつけろよ』

 

 そう言って九条は電話を切り、カケルとダイは二人で顔を合わせ、イリスを連れて急いで逃げ出した。

 入口まで戻ってきたカケルとダイ、イリスの三人だったが、電磁塔前に多くの警察と異様な気配を発している三人組の男が既に到着していた。


 「良いか!今から電磁塔内に突入するぞ!中にいるものは一人も取り逃すでないぞ!!外の待機組もだ!!出てきた奴らは誰も逃すでないぞ!!!」


 入口から次々と警察官が入ってきた為、三人は物陰に隠れた。


 「おいおい、どうすんだよこれ・・・」

 「全部どっ飛ばすか?頑張れよカケル」

 「お前な〜。ところであいつら誰?」


 カケルが指差した先にいるのは一際目立つ出たちをした三人組だった。


 「あーえーと誰だっけなんか見たことあんだけど何だったっけ?」

 「お前だから補習になりかけるんだぞ・・・」

 「あの三人はこのネオ・アストラルシティを管理している現内閣の荒神宗一郎の下にある十二の役職、12司支と呼ばれている役職に着くお二人です。右の背が小さく少し小太りな方が法務部トップの牛次さん、真ん中の背が高く、背と同じくらいの長さの剣、龍骨剣を持っている方が全警察のトップとして君臨している天辰さん、そして左にいる萌え袖でウサ耳フードを被っているのが宇佐美さんです」


 あのウサ耳はともかく後の二人に関しては他の奴らよりも数段階強い。カケルはもしもの為にすぐに動けるようにダイとイリスに言おうとしたら電磁塔内から武装した集団を捕らえた警察官達が次々と現れた。


 「あいつら捕まったのか」

 「そりゃそうだ」


 その中から武装した集団のリーダー格だった男も捕らえられ連れてこられた。

 かなり抵抗したのか何人かの警察官は他の警察官に運び込まれていた。


 「クソッ!離せ!」

 「大人しくしろ!」

 「これで全員か全くこの大事な時期に何てバカな真似をしてくれたんだ!貴様ら覚悟はいいだろうな!」

 「あ?全員だと?何を言ってんだ。俺達を倒したガキ共がいないじゃないか」

 「何?本当か!すぐに探し出さんか!」


 バタバタと慌ただしくもう一度入口から電磁塔内に入っていった。

 リーダー格だった男はその隙をついて警察官の拘束を振り解き拳銃を奪って走って逃げ出した。


 「しまっ、!?」

 「ハァ…ハァ…まだだ、まだ捕まってたまるか。どこにいったぁぁぁぁ!」


 叫びながらイリスを探して逃げ出した男だったが、その目の前に天辰が現れた。


 「大人しく投降しろ。そうすればそれ以上怪我をしなくて済むぞ」

 「黙れ!邪魔をするな!」

 「・・・仕方ない」


 天辰は少し鞘から少し刀身を取り出し銃弾を全て切り裂いた。

 リーダー格の男は銃弾を切り裂いたと言うあり得ない光景を目にして尚もその男を倒せると思ったのか、弾がなくなった拳銃を乱暴に放り投げ殴りかかった。

 決着はすぐに着いた。

 男が殴りかかったと思った次の瞬間には既に天辰はその男の後ろを歩いており男は倒れていた。


 「すぐに運べ」

 「流石だな天辰よ!あの孤狼の弟子なだけはあるわ!」

 「それよりも宇佐美よ。先の奴が言っていた者達がどこにいるのか分かるか?」

 「はいはーいちょっと待ってね〜。うさぎちゃんのみみラビットイアー


 フードをさらに深く被った宇佐美はフードについていた耳をすませた。

 そしてカケル達が隠れている方へ指を向けた。


 「おい!バレちまったじゃねーか!早くずらかるぞ!」

 「バカか!あんな数逃げ切れるわけないだろ!」

 「んだと!?」

 「あ、あの天辰さんがいないのですが・・・」


 カケルとダイがそれに反応し、恐る恐る自分達の後ろを振り返ると天辰が後ろに立っていた。


 「「や、やべ〜」」

 「"龍振"」


 天辰が手のひらをカケル達の前へやると三人の体は後ろへと吹き飛ばされ電磁塔外へと放り出された。


 「いってぇ!?」

 「イリスちゃん無事?怪我はないかい!?おいコラクソジジィ!テメェイリスちゃんの顔に傷でもあったらどうするつもりだコラ!」

 「ダイさんお、落ち着いてください私は大丈夫ですから」

 「貴様らかぁ〜勝手に電磁塔に入るとはいい度胸ではないか!」

 「チッ、こうなったらぶっ飛ばすしかねぇな!やるぞダイ!」


 覚悟を決めカケルが構えをとり殴りかかろうと動き出した時、下にある影が妙に大きくなっているのに違和感を感じ、上を見るとそこには刀を抜いた天辰が体を捻りながらカケルを切り裂こうとしていた。


 「"龍抜"!!」

 「クソッ!!」


 カケルも直ぐに体勢を変え天辰の刀とカケルの拳がぶつかり合い、周囲一帯にいた人間を吹き飛ばす程の衝撃波が起きた。


 「あのバカ、イリスちゃんに傷でも着いたらぶち殺してやる」

 「そんな所でぼっーとしててもいいのか?」

 「あ!?」

 「ブルース・バーブ!」

 「いッ!?ぐっ!!?」


 ダイがカケルと天辰の戦いに夢中になっている所を牛次による突進によってダイは警察官達がいるところまで吹き飛ばされ取り押さえられた。

 イリスはダイに近づこうとしたが牛次によってそれは阻まれた。


 「ダイさん!」

 「おっとお前も逮捕させてもらうぞ」

 「いたっ、離してください!」

 「おいこら小太りじじぃ」

 「んグッ!?ガハッ!!!」


 牛次は振り返りざまに、ダイによって顔を蹴り飛ばされ、小太りな体は警察官達を下敷きにして倒れ込んだ。

 

 「ダイさんご無事でしたか?」

 「大丈夫、だい、ゴボッガバッ!あのじじぃ本気で頭突き喰らわせやがったおかげで肋骨何個かやっちまってんなこれ」

 「そこまでだ」


 ダイとイリスの元に天辰がカケルに刀を向けながら歩いてきた。

 ダイとイリスもそれを見て渋々降参し、三人は捕えられ警察署まで連行される事になった。

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