第21話

 顔を見合わせて首を傾げる2人に、冷たい2対の視線が返る。


「信用ナイね」


「総長、あんたこないだ皇劉で何してきたか思い出してくださいよ。あの後、俺土下座して回ったんすよ」


「ご苦労」


 手を上げて軽く労う正木に、馬場の蟀谷が引き攣る。


「とにかく、絶対俺かフォンさんを連れてってもらいますから」


「俺、色紙持ってこうかな」


「じゃ俺、マイ特攻服にサインもらお」


「烈、俺たちの服紺色じゃん」


「あ、そっか。じゃ、白のマジック用意しねぇと」


 『白虎』それは、四神の中で西の守護獣であり、風を司るとされている。

 奇しくも、自由気侭を地で行く男たちをトップとNo.2に持つチームは、自由を象徴する神獣の名を冠していた。


「あ!それから、馬場」


 思い出したように、正木が馬場に向き直る。


「“秋月 璃依”って呼ばれてる女。あれ、バイヤーの方じゃなくて、斡旋グループの方っぽい」


「“呼ばれてる女”って、何か言い方可笑しくない?」


 迅の突っ込みに、正木は笑って返すだけだった。


「でも、薬持ってたんすよね?」


「あれは多分、広告塔ってとこだろうな。客と使って、あわよくばって感じ」


「ドッチにしても、末端ネ」


「でも、他人家ひとんちの庭、荒らした代償はとってもらわないと」


「使えるもんは使わないと、失礼だろ」


 取り出したスマホが、メッセージの着信を知らせる。


『秋月 瑠璃』


「ねぇ?“秋月 璃依”ちゃん」


 四神一喰えない男は、愉し気に微笑する。




――ドガッ


「ぐぅっ・・・オェ・・・」


 腹を押さえ嘔吐えずく男の周りには、同じように苦しむ男が転がっている。


「なんやぁ、もう終わりなん?皇劉ゆうからどないなもんかと思たら、大したことないのぉ」


 男は、転がる男たちを馬鹿にしたように咥えていた煙草を吐き棄てる。


「あ゛?」


 怒気を孕んだ眼で睨み付けられた男は、それさえも可笑しそうに哂う。


「何や、その眼」


 ゆっくりと振り上げられた脚は、次の瞬間全体重をかけて振り下ろされる。


「ッグァ」


「弱い犬ほど、よぉ吠えよる」


 胃液を吐き出す男を見下ろし、嘲笑を漏らし背を向けた。


「南雲によろしゅう言うとって。今度は、俺が大事なもん壊したるってな」


 霞む視界の中、去りゆく男が残した言葉を理解しないうちに、男の意識は遠のいた。

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