第1話「ツチノコのチノさん」妖怪

 ◆登場人物紹介◆


 チノ

 ツチノコの女の子


 ゆうま

 人間の男の子7歳




 ★☆∴─────────────────────────∴★☆




 ある所のある野原に、ツチノコの里と言う、ツチノコ達の住みかにツチノコのチノさんが住んでいました。



 チノさんは、人間の年齢で5歳です。

 チノさんは、体のまん丸い幻のヘビさん。



 昔から、ツチノコ一族は、人には関わらないように生きて来て、姿を透明に出来る力を待っていた。


 だから、人間達が躍起やっきになってツチノコを探しても、見つかるはずがない。



 でも、たまに子供のツチノコやドジっ子のツチノコがいて、姿が透明に出来なくて 人に目撃されてしまうことがあった。



 そんな時は、おとなのツチノコが助けるんだ。

 なので、捕まることはなかった。



 そんなある日にチノさんが、ご飯を食べている時に、1人の人の子に目撃されてしまったんだ。



 男の子はしゃがみながら、きょとんとして、チノさんに訪ねた。

「……ヘビさん、ヘビさんは“ツチノコ”なの?お婆ちゃんから聞いたとおり、まん丸だねえ」



「きゃーっ、人間ッ!みつかっちゃったのこっ!!!」

 チノさんは真っ青になって、逃げようとしました。



 チノさんは、お父さんやお母さんから、人間はみんな、自分達を見世物にする怖い生き物だと、聞いていたのです。



 逃げようとしている、チノさんの尻尾を男の子は、掴んで可愛い笑顔でにこにこしている。



「あわわわっっ!放すのこっっ!!」


 あたふたして、じたばたと体を震わす、チノさんに男の子は言う。


「ぼく、ツチノコさんに悪いことしないよ!ぼくの名前はゆうまって言うの。7歳だよ。ツチノコさんは?」


 可愛く聴かれて、恐る恐るたずねる。



「本当に悪いことしない?のこは、ツチノコのチノだのこ」



「チノちゃんって言うの?可愛いお名前だね。ぼくと、お友達になって」



「また、遊びに来るね~っ」



「うんっ、またねのこ、ゆうまくん」



 その日から、その日からチノさんとゆうまくんは、お友達になって一緒に遊んで仲良くなって行った。





 🔶






 しかし、それを快く思わないツチノコ族の仲間と長老が見ていて、チノさんをツチノコの里から追放してしまった。



 チノさんは、お父さんとお母さんと離されて悲しくて、悲しくて涙がとまらない。



「ごめんね。チノちゃん。ぼくのせいだよ……」



 いつもの元気がなくなって、涙のとまらないチノさんに、ゆうまくんはぽろぽろと涙を流して、謝る。



「ううん、ゆうまくんのせいじゃないよのこ。でも、すっごく悲しいよ!わーんわーん」



 それを見ていたゆうまくんも、泣き出してしまい二人で、両脇に畑のある道を歩き出した。


「ねえ、チノちゃん。ぼくんち来る?」



 チノさんにゆうまくんが聞いた。

 しかし、チノさんは首を横に振ると、にこっと微笑んで言った。



「ゆうま、さよならのこ」



「――えっ……?チノちゃん」



 これ以上、ゆうまくんと一緒にいたら迷惑がかかる。

 そう思ったチノさんは、姿を消す力でふっとその場から消えた。



「チノちゃーん!!!」



 ゆうまくんの悲しそうな泣き声が辺りに響いた。





 🔶





 それから、数週間が経ってから、ゆうまくんのお母さんに待望の女の子の赤ちゃんが生まれた。



 ゆうまくんは、お兄ちゃんになり、赤ちゃんの近くでお昼寝をしていた。

 ゆうまくんは、夢を見た。チノさんがゆうまくんに笑い掛ける。



「チノちゃん!」



 ゆうまくんが声を掛けると、チノさんはゆうまくんの妹の姿に変わった。



「お兄ちゃん。ただいま!」



 人間になったチノさんは、ゆうまくんに抱き着いた。



 -終わり-


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る