9-3
「ああ、文芸部の作品作りの方ですか?少し興味あります」
「絶対に見せないよ!」
「そう言わずに、少し見せてくださいよ」
「絶対駄目!」
そんな会話が続きつつ天は葵に飲み物を渡し自分の分も用意してからソファへ座る。そして2人はテレビを見ながら他愛のない会話をしたのだった。
「あ……安岐くんって兄弟いる?」
「はい、兄がいます」
「そうなんだ。私も兄がいるのよ」
「お兄さんもご両親とご一緒に?」
「いや、奴は大学の友達のとこでGW耐久ゲーム大会なるものをやってるはず」
「なんですかそれ」
天の話に葵は笑う。
「いやね、GWに友達と集まってゲーム大会するから家には帰らないって連絡がきたのよ」
「仲良いんですね」
葵の言葉に天は頷く。そしてスマホのメモを開いて先程葵が生産したキュンを忘れない内に打ち込んでいく。
「うん、まあね。年も3つ離れてるだけだし」
「そうなんですね。うちと同じです」
「え、ほんと?そんなお揃いもあるんだねえ」
会話しつつ器用に文字を打ち込む天。葵はその動きをジッと見つめる。天は内容は見られてないはずだが、少し気まずくなりスマホをそっと隠す。
しかし葵はそれを見逃さない。
「赤音さん、こないだもカフェでスマホいじってましたよね?俺と会話しながら」
「な……なんのことかな?」
葵は天の反応に図星だなと確信する。そして天をジッと見つめて、意地悪く言うのだ。
「別に悪いことじゃないと思いますけど?会話をメモることなんて」
その言葉に天の心臓は大きく跳ねた。やはり見られているのではと思った天だが、ここは平常心を装ってみた。しかしそれは逆効果だったようで葵はニヤリと笑うのだった。
「赤音さんの作品に恥ずかしいことを載せられてないか少し心配です」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます