page8:ドキドキのお泊まり①

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 そらはリビングでダラダラしながら、先程別れたばかりの葵のことを思い出していた。結局あの後ちゃんと一緒に帰り、少しばかりの雑談を交わした気はする。気はするというのは、天が何を喋っていたか全く覚えてないからである。それほど、思考はいっぱいいっぱいだったのだ。


「あ〜、私ってバカだなぁ」


 天は呟くと頭を抱えた。どうしてこうなってしまったのだろうと考えるがわからない。ただあの時、葵の言葉にドキッとしたし、嬉しいとも思ったのだ。あの後はちゃんと帰れたのだろうかとか、葵の部活風景を拝み損ねたなとか思わなくはないが、一番気になることは自分の葵への気持ちだ。それは恋愛感情なのか?そう考えた時、天の中で何かが引っかかる気がした。


「違う気がする……」


 天は今までときめきもキュンも全て恋愛小説へと変換してきた猛者。だからまともな恋愛感情というのがわからない。自分が感じたときめきは多くの読者に提供したいと思うし、実際している。


 よく、彼を誰にも渡したくないだとかそんなことも思ったことはない。キュン受給者は皆等しくその恩恵を賜るべきだと天は考えているから。


 だから、葵に対する気持ちがイマイチわからないのだ。この気持ちは自分の思う恋愛小説のキュンとは違う気がする……そう思うも確証はない。考えれば考えるほどわからなくなるので諦めた。


「何か見るか……お、ホラー特集やってる」


 天はリビングのソファからリモコンを操作してテレビの番組表を出す。そこで目についた番組をつけた。ホラーなんてあまり見ないが、新しい要素を取り入れると自分の作品の幅も広がる。天は、夕飯代わりにポテチをつまみつつ、テレビを見ることにした。




 一時間後、天はこの選択をした自分を後悔する。


「怖い……なんでこんな番組見てるんだ私……」

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