6-6

「そんなことありませんよ!私は永遠に小説を書き続けますから!」


「うん、ならいいねぇ」


 そう答えつつ、ケイトの顔はまだ何か言いたげだったが、それ以上天は追求できなかった。そして、葵のことが頭から離れなかったせいか、キュンの生産が多くその日の執筆は捗ったのであった。




 部活が終わり帰宅する時間になった。天はいつもと違い少し急いで駅に向かう。葵に会わないようするためだ。今日だけで葵に関して多くのキュンをいただいた。これ以上は遠慮したい。


 無事に電車に乗り、最寄り駅に着く。改札を出て、家までの道のりを足早に歩く。すると、スカートのポケットの中のスマホが振動した。


「ん?なに?メッセ……」


 確認すると葵からでそこには一言。




【うしろ】




 そう書いてあった。


「え」


 慌てて振り返ると自転車を押す葵が笑顔で手を振っていた。


「なんでいるの!?」


「偶然見かけまして、声をかけようとしたんですが、急いでいたみたいので追いかけてきちゃいました」


 しれっと葵はいう。そんな爽やかな笑顔に天の心は高鳴る。だがすぐに首を横に振ると、頭を抱えて葵に言った。


「もー!この方法は本当に心臓に負担ががががが」


「赤音さん、大丈夫ですか?」


「全然大丈夫じゃないけど!?」


 逆ギレする天に葵は驚きつつ、微笑む。その笑顔は今だけは自分に向けられる特別なものだと天にはわかる。昼間の囲まれ具合も、みんなが注目する彼の人柄も、自分だけのものではないとちゃんと理解して天は葵に改めて感謝をする。


「ありがとう安岐くん、本当に。安岐くんにとって、このやりとりも日常の1ページになろうと私にとってはありがたい時間なのだよ」


「はい?」


「いやー、昼間安岐くんの人気っぷりをこの目でみて実感したというか。やはり女子にもきゃっきゃっウフフされてたというか」

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