1-3
思わず声が出る天と、その声に反応して声を出す男子生徒。
見られてしまった……いや、でもこれは覗きではなくネタ探しのための観察……なんて言い訳を考えながら、天の思考はぐるぐると巡る。
そんな天の思考などつゆ知らず、男子生徒はスタスタと歩き出した。いったいどこに……まさか、こっちに!?
やばいと思った天は慌てて逃げようとしたが、背伸びをしていたので思わずバランスを崩す。体幹のない自分のアホ!と嘆くが体は後ろに倒れーー……ぽすっと何かに体が受け止められた。
恐る恐る天は少し後ろを見る。そこには天が見惚れた、男子生徒の顔が間近にあった。
「ひえっ……ご、ごめ……」
「……いえ、怪我はないですか?」
天が顔を真っ赤にして頷き急いで距離を取ると、道場から出てきたのであろう先程の男子生徒は人の良い顔で微笑む。
なんて素晴らしい精神の持ち主だと天は感謝した。こんな覗きの奴を道場から出てきてまで助けるなんて……いや、こいつが歩いてこなきゃこちとら倒れてなかったわ。
それにしても、やはり背は随分低い、155cmくらい?二重のタレ目が印象的な人。目も割と大きいような、うん背が低いのもあって可愛い印象だ。
天の思考など相手は知る由もなく、男子生徒はジッと天の制服のネクタイカラーを見ていた。
「緑ネクタイ……二年生ですか?」
「え、そうです……」
「じゃあ同い年ですね。俺は2-1の
「ええっ……2-4の赤音
やはり運動部。流れるような自己紹介。思わず名乗ってしまったことに若干後悔する天。深く関わる気なんてないのに名前など知られたくない。しかもこんなネタみたいな名前。
しかし天の考えとは反対に葵と名乗った男子は「へぇ……」と短く声に出した後、また微笑む。
「あかねも、そらも綺麗な響きでステキな名前ですね」
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