恋バナ集めてみました。

@fisherfamily84

電車の君。1

プシュー…


ドアが閉まり電車が動き出す。


私の地元は田舎だ、田舎の電車は3両しかな

くいつも私は2両目に乗り込む。


最初はドキドキしながら着ていた制服も1カ

月もすれば着慣れたものだ。



「波美テスト勉強やった?」



話しかけてきたのは同じ高校に通う優美子。


私たちが通う高校は地元の駅から電車で3駅

行った場所にあって少し遠い、同じ中学から

は優美子と私の2人だけが受験した。


プシュー…


優美子と話しているうちに次の駅に到着。


この駅で同じ学校の友達が合流して私たちは

3人で登校している。


プルルルル…


発車とともに心臓はドキドキし始める。


どんどん次の駅に近づき低速になった車両の

窓に全神経を集中させる。



「よかった、今日もいる」



プシュー…


車両のドアが開き乗り込んでくる人の中に彼

の姿を今日も確認する。


名前も年齢もわからない。


わかっている事といえば制服からして高校は

私が通う高校に近い高校だとゆう事、つまり

次の駅で一緒に降りるとゆうことだ。


話しかけようなんて思わない、誰かに相談し

ようなんて思わない、毎日会えるただそれだ

けで幸せだから。


プシュー……


季節は夏になり変わらない日々に気が緩んで

しまったようだ、いつもなら車両の中で聞い

ているドアが閉まる音を私は今ホームに立っ

た状態で聞いている、車両の中で私の存在に

気づいた優美子が笑いながら私を指差した。



「はぁ遅刻…あっ…会えない」



遅刻よりショックかもしれない。


仕方なく次に来た電車に乗った、ガタゴト揺

れながら思う、彼がいつも乗ってくる駅に私

は1度も行ったことがない。



「どうせ遅刻しちゃうなら」



迷う事なく彼がいつも乗り込む駅で降りた。


改札を通過して駅を出ると目の前は海、行く

あてもない私はベンチに座る。


波の音が心地いい、目を閉じて海を感じる。



「大丈夫ですか?」



急に誰かに話しかけられ視線を向けた。



「…えっ」



理解できない、なぜ彼がここに?



「大丈夫ですか?」



正直大丈夫ではない。



「電車酔いですか?」

「……は…はい」



としか言えなかった、今まで目が合う事すら

なかった彼と目を合わせ話をしているのだ。



「なにか飲みますか?」

「だっ大丈夫です!」



徐々に理解していく現実、急にバクバクしだ

した心臓、カラカラの喉、あふれ出す汗。



「本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫です!本当に大丈夫です!」



電車に乗り遅れた時は自分を呪った、でも今

は自分を褒めてあげたい。



「もし辛かったら彼女の家ここから近いので

少し休みますか?おい!咲ちょっと!」



彼の視線を追う。


髪の長い見るからに可愛らしい女の子がゆっ

くりこちらに向かって歩いて来る。


私は彼女を知っている。


彼はいつも電車で男友達数人とあの子と楽し

そうにしている、しかもあの子は私と同じ学

校で同じ年で私の友達の友達だ。



「少しよくなったので今日は家に帰ります、

ありがとうございました、失礼します」



それだけ伝えて反対のホームに向かった。


……そっか…そうだよね…彼女いるかな?と

は思ってたけどあの子だったなんて…


勝手に恋をして勝手に失恋してしまった。


2人から見えない位置で電車を待つ、2人と

も私を探すようにこちらを覗いている。


私は電車に飛び乗り背を向け泣いた。

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