すぎる時間

@wanwanwan123

第1話 大切な人

今日も1日が終わりかけている。 秋の空は幻想的で魅力的だ。

今私は車を運転している。周りは 木々が立ち並び、もう肌寒いと言い、木々達は色々な衣装を身にまとう。紅色 、緑色、黄色、、、

車の中では音楽を パワフルに流している。

そんな中、助手席に座っている大切な人は、景色を ぼんやり眺めている。私が運転している時は、何も話しかけてこない。安全運転しないといけないから。

横に座る静かな人の横顔を運転の合間に、時々確認する。 眠っていないか?起きているかと……

空には大きな夕日、それを隠すかのように、雲と雲がゆっくり流れ動いている。 水色の空に、 落ち着きのない子供たちが 、お絵かきをしているようだ。

次から次とその絵は変わり、完成までには、まだまだ時間がかかりそうだ。

夜になんてならないで、このまま 時間が続いていればいいのにと思う。

家に着いたよ と、家の中に2人で入っていく。すぐにテレビをつける。できるだけガヤガヤして、笑いがある番組を選ぶ。何年も経つのに、声 がしないと寂しくなってしまうから。

それから2人で夕飯を食べ終わり、大切な人の1日が終わろうとしている。おやすみ、と、指を動かす。歳のせいで硬直しているから、ゆっくりと使う。


山に包まれて、静寂の夜の満月。

肌寒い中、夏には聞こえる、虫の声は、もう聞こえない。

二階のベランダに出て、煙草に火をつけた私は、月を見上げる。あまりにも明るいので、部屋の電気を全部消してみた。ベランダから月明かりが差し込んだ部屋は、 優しいあかりに照らされる。ちょっとだけ、お洒落な事をやっている感覚だった。

あぁ見なければいいのに 、ついつい 満月は見上げてしまう。

どうやら私は涙腺の病気にかかっているらしい。夕日を見ては、月を見ては、目頭がぐっと締め付けられる。だらしなく 涙が落ちてしまう。

昔に戻りたいと……声、聞きたいな、と……

そして今夜も私は4回大切な人の寝顔を確認しに行く。

寝息が聞こえない時は、ティッシュペーパーを1枚持って、鼻と口の近くにあてる。ちゃんと息してるよね?

幸せのし だから、毎晩、4回確認する事にしている。ちっぽけな願かけ。


また思う、まだ、そばにいて。明日も明後日も……私が1人に耐えられそうになるまで。 私も歳を重ね気弱になってしまったのね。


朝、味噌汁のネギを切っている私の背中を2度 叩く「おはよう」ニコッと笑う、あなたの顔が私は大好きです。「あっおはようっ」私も元気に手話をする。

耳も聞こえない声も出せない、それゆえに、朗らかに生きている人に、美味しい朝食を毎日私は作る。それは私の幸せだから。


「 今 鮭の骨外すから待っててね」と、言っても聞こえないけど……私は声を出し、自分頑張れっ!と、こっそり気合いを入れてみた。



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