第10話 5人の男
ふっと目が覚めた。
ふかふかの布団と温かい毛布の感触が心地よくて、そのままもう一度眠りにつこうかと考える。
「はい、はい、…はい。は?いや、だから…。あー、まぁ、言われた通りにしましたから」
声がする。誰の声だろう。
起き上がろうとして気づく。左手首に付けられた腕輪。いや、訂正。鎖がついた、手錠だ。
でも、鎖が異様に長い。
この長さは、普通にこの部屋から出れるし、動き回れる。
意味がわからない。なんのつもりだろうか。
「あぁ、今起きたみたいです。……というか、あれは強すぎます。………は?……だから、一応私の方が地位は高いんですよ。顎で使うのは辞めていただきたい」
なんの会話だろう。
揉めているのか、戯れているのか、それともこの男が遊ばれているのか。
その時、玄関の開閉音らしき音が聞こえた。
「おい幸架ー。言われたもん買って来たぞー」
「え?私、何か頼みましたっけ?」
「あ゛?ふざけんなよ」
新しく入って来た男が、元から私の隣にいた男にコンビニの袋を突きつける。さっきから電話をしていたのは幸架というらしい。地毛らしい赤毛の髪に、ほんの少し茶色味のある黒い少しタレ目で、その面立ちは真面目、という言葉が似合うだろう。泣きぼくろが一つある 。
新しく入ってきた男は、茶髪の短髪に、左耳に3つ付けられたピアス。髪と同じくらい明るい瞳。今時の若者って感じがする。
「お前がなんでもいいから消化にいー食いもん買ってこいっつーからこの俺が買ってきてやったんだろーが」
「え……いや、……あぁ…」
幸架がガックリとうなだれた。
すみません、と言いながらそれを受け取ってこの部屋を出て行く。
ここは寝室らしい。
幸架が出て行くと、来たばかりの男がドカッとベッドに座る。
「で?」
にこやかな笑みとは裏腹な、鋭い視線に怯む。
なんだこの人。さっきから随分と高慢な態度だ。
そう思って顔を顰めたとたん、私は思いっきり押し倒され、首を絞められていた。
「ぅ……ぁ……離し、っ……ぁ…」
「おい、あんた、湊(みなと)さんどこにやった」
「み……なっ……ぅ……?……だ……?」
湊?誰だろう。
私の近くに、そんな名前の人はいなかったはずだ。
それよりも答えろというくせに、こいつは首を絞めてくる。これでは声にならない。しかも苦しい。死ぬかもしれない恐怖に体が震え始める。
「あっ、璃久さん!やめてください!私が殺されます!」
部屋に戻って来た幸架が、私を見て激怒している男──璃久を止めに入る。
そこでやっと璃久の手が私から離れる。
「ゲホッゲホッ…ゔっ……ゲホゲホッ」
「あぁ、ごめんなさい。璃久さんものすごく短期で…」
「幸架。お前はこいつ見てなんも思わねーのかよ」
両手拳を指が白くなるほど握り、璃久は肩を震わせる。
幸架も穏やかに接してくれているし、助けてくれたけれど、どこか義務的だ。
おそらく誰かに頼まれてしてくれただけなのだろう。
「俺も、この女に聞きたいことは山ほどありますけど…」
ずっと穏やかだった幸架の目が、鋭く光る。
「あの人待ちましょ。あの人の命令だし」
「あいつ、俺らの後輩のくせになー。頭いーから仕方なく従ってっけどさ」
なんだか、全く状況がつかめないままここに来たけど、私もこの人たちも、ここにいるのは本意ではないらしい。
2人で何やら話しながら部屋を出て行った。
私は、首を絞められたせいか、息が苦しくて。そこで気を失ってしまった。
頰に触れられた感触で目を覚ます。
カーテンは閉められ、電気もついていないせいで、暗い。目の前にいる人物の顔が全く見えない。幸架と璃久のどちらかだろうか。
…いや。違う。2人はこんな雰囲気じゃない。こんな張り詰めたような、ピリピリと皮膚が泡立つような雰囲気じゃなかった。
「だ……れ…?」
「………………」
返答はない。パチッと電気がつく。
「おいおいー、レイ。電気くらいつけろよ〜」
部屋の入り口に幸架と璃久がいた。
突然ついた電気に目が霞んだ。
すっと首に、目の前にいる人物の手が触れられる。
目が慣れて来て、ようやく目の前の人物が見えた。
スーツの上着を脱ぎ、シャツの第1、第2ボタンを外し、ネクタイが緩めてあるという格好だ。
しかしなぜか、泣きピエロの化粧をしている。髪は色素の薄い茶髪で、短髪で顔は化粧インパクトが強すぎて原型がなかなかわからない。どことなく私を助けてくれたあの人に似ている気がするが、こんなド派手な化粧なんてしていなかったので別人だろう。
男──レイは無言で立ち上がると、2人の手を引いて部屋を出て行った。
ゴッ。バキッ。ゴッ 。ガッ。
しばらく物騒な音が続いた後、あたりはシーンと静まり返る。
するとスタスタと足音が聞こえてきて、レイが、何事もなかったかのように戻って来た。そして私の傍に座った。
しかし、ものすごく突っ込みたい。
今、何して来たの?、と。いや、想像に難くはないが。
なぜ、殴った?
また、零の手がすっと私の首に伸びた。
優しく撫でるように触れるので、くすぐったい。
「……ゴホッ…。レイ、その女に、聞きてーことが…ゴホッ…あんだけど…」
顔を腫らして脇腹を抑えた璃久が入ってくる。
レイは、それをガン無視した。
「………あ、あのぉ……れ、レイさん?」
璃久の後から這うようにして部屋に来た幸架が、恐る恐るゼロに声をかける。
「はぁぁーーぁ」
するとレイが、ものすっごい長いため息をついた。私の頭を撫でると、グッと顎を持ち上げられる。
そのまま。キスをされた。
「ぅ……んっ……ん」
濡れた音がする。
絶対見られてる。恥ずかしい。
しかも、慣れていないせいで息ができない。
苦しい。でも、ふわふわする。
息苦しさに意識が遠のいていく中、コロッとした何かを口に移された。苦い。
零が何かを口に含んでいた様子はなかったから、最初から何か口に仕掛けていたのだろうか。
手で目を覆われる。
息苦しさに、口に移されたものを飲み込んでしまった。
「んっ……はあっ…はっ…ぅ……」
唇を離されても苦しくて、目は手で覆われたままで。
ふっと上体が持ち上げられる。
目を塞がれたまま、レイに寄りかかるようになる。レイは、空いている手で私の背をぽんぽんと優しく触れた。
少しずつ呼吸が落ち着いてくると、レイは私の首もとに唇を寄せて吸い付いた。
「んっ…….」
突然の刺激に声が漏れる。
こんな行為、慣れていなくて恥ずかしい。
さらに私の着ていた服は男性ものだったせいで、かなり際どいところまで手で下げられる。
いくつもいくつも華が散るように跡をつけられる。
そして最後に。
「うっ……ぁ……痛っ」
思いっきり噛まれた。
痛い。痛いのに、意識はふわふわと、遠ざかっていく。
さっき飲まされたのは、何の薬だったのだろうか。危ないものでなければいい。
そして今日、何回意識を失えばいいのだ…と自分に突っ込みながら、愛おしそうに私を抱きしめてくれる温かい腕の中で。
瞳を閉じた。
意識が少しずつ浮上してくる。ぼんやりぼんやりと。心地いいというか、気持ちがいいというか。いや、何かがおかしい。
「はぁっ……はっ…はぁ……」
荒い息遣いが聞こえる。
水音と、ぐちゃぐちゃと何か混ざる音。
「はぁ……ぅっ……はぁっ……はっ」
遠くで自分の声がする。
身体がふわふわする。
身体が激しく揺れている…?
いや、揺らされている。
「う……ん………?」
ゆっくり瞼を開くと、部屋は真っ暗で。
カーテンも窓も開けられていて、外から月の光が入って来ている。
私の目の前には、美しい男がいた。
黒髪に、鋭い瞳。
汗をうっすら滲ませて、色っぽさが際立つ。
「……フッ。……起きた?」
何か悪巧みをしたような、そんな顔で笑う。
揺らされていた身体が止まる。
何が起きているのかわからない。
身体が熱くて、お腹の奥がじんじんする。
男がすっと私の頰に手を当てる。
その手が心地よくて、温かくて。
「……続けるから」
続ける?
何を?
わからないまま、身体が揺れ出す。
「うっ……ああぁっ!……んんっ…あっ…」
これは、だれの声?
「はっ……締まる……きつっ…」
やっと、意識がはっきりしだす。
下腹部の違和感。
これは…。この男が、私の中に、いる。
どうして?そしてこの人は誰だ。今日だけで知らない男4人に会っている。
路地裏で助けてくれた人。璃久、幸架。目の前の男。わからないことばかりで、頭の中はパニックだった。
でもそれも束の間で、身体の奥の奥を何度も貫かれると何も考えられなくなっていった。
身体が揺れる。
ジャラジャラと左手首の手錠と鎖が揺れる。
「あああぁぁっ!……んんっ……も……だ、めっ……ああぁっ!……や、やめっ……んんっ」.
「やめない」
男は、楽しそうに笑った。
何度も私の体に唇を寄せては、華を散らす。
何度も、何度も。
「ああああぁぁぁっ!」
散々華を散らした後に、今度は至るところに噛み跡を残される。
噛まれたところから血が滲む。彼はそれをジュルリと啜るように舐めとる。
「……はぁっ…はっ…」
男の顔が歪む。
終わりが近いのかもしれない。
自分の悲鳴が聞こえる。
今まで聞いたことのないような声を出す自分に、ひどく戸惑う。
男の終わりが近くなるほど、男が噛む力が強くなる。
痛い。ふわふわする。お腹の奥がじんじんする。息がつけない。苦しい。
「ーーっ!」
「んんっはぁっ…え?」
聞こえないほど小さな声で、男が何かを言った。
その時の顔が、脳裏に焼きつく。
今にも泣き出しそうな、苦しそうな。切なそうな。
そして、大事そうに。
そんな顔だった。
「はぁ…はぁ……」
やっと終わった時には、自分の足の間からどろりと何かがこぼれ落ちた。
──ゆらゆら
──ゆらゆら
煙が揺れる。
私はぐったりとベッドに横たわって、荒い息を繰り返す。
一方、男の方はこんなの楽勝とでも言うかのように、平気な顔で一服している。
ムカつく。
その綺麗な顔面に一発…いや、50発はグーパンチをお見舞いしたい。
その、無駄に綺麗な顔もムカつく。
しかも、終わりだと思ったら、終わりじゃなかった。
あの後、男は一度終わったのに、また私の体を揺らし始めた。
嘘でしょ、と思う間も無くぐちゃぐちゃにされ、さらに何度目かわからくなった頃、ようやく終わったのだ。
──ゆらゆら
──ゆらゆら
煙を見ると、いつもなら意識が遠のく。
今は、呼吸が精一杯のせいか、そのおかげなのか意識が遠のくことはない。別の意味で再び気絶しそうではある。
──ゆらゆら
──ゆらゆら
私が最初に目を覚ました時、すでに何度も男が達していた後だったらしい。
その後も何度も何度もされたから、明日は病院で薬をもらいに行かねばならないだろう。
というか、避妊くらいしろよ。
マナーだろ、おい。
あなた男として最低だよ、ほんとに。
と言うか、明日、私は起き上がれるのだろうか…。
いや、仕事もあるし、気合いと根性で何とか行くしかない。
そうだ、仕事へ行こう。
そんなノリで楽観的に行けば絶対何とかなる。
カタン、と音を立てて男が立ち上がった。ペットボトルを手にこっちに向かってくる。
ベッド脇の机にペットボトルを起き、まだ息の荒い私の上体を起き上がらせると、ぎゅっと抱きしめる。
何なんだ、この人は。
めっちゃ雑に抱かれたと思ったら、今度は壊れ物を触るかのように抱きしめる。
意味がわからない。
──あれ?
何も言わずに私を抱きしめる腕が、身体が、震えている。
「ふっ……ぅ……」
泣いているのだろうか。
それとも、耐えているのだろうか。
私の首に顔を埋めている男の顔は、見えなかった。
静かに、ゆっくりと男の体に腕を回して、そっと頭を撫でてみた。
「…おつかれさま」
なんとなく。その言葉が浮かんだので、声に出した。
「えっ……うぁっ!」
その途端に思いっきり押し倒される。
それでも、男は私を抱きしめ続けた。
強い力で、体からミシミシと音がなりそうだ。
「なんでっ……」
絞り出されたような、苦しそうな声。
耐えられずに泣く、それでも耐えようとして漏れている声が、耳元で響く。
すっと男が私を見下ろすような体制になる。
ポタポタと男の涙が落ちてくる。
右手でそっと拭ってやると、その手を掴まれ、頰に押し付けられた。
涙で濡れたその頰は、次から次へと流れる涙でどんどん濡れていく。
華奢に見える身体は、引き締まって筋肉もついている。私とは比べ物にならない、しっかりした身体つきだ。
こんなのに押さえつけられていたのだから、抵抗できるわけはない。
でも、触れている男の頰は、かなり痩せているように思う。
ちゃんと食べているのだろうか。
誰かと親しく話したりできているのだろうか。
そんな人たちに、悩みを打ち明けられているのだろうか。
それとも、たった1人で耐えているのだろうか。
ついに自分の手がパタリと落ちた。私の体力は限界がきたのだ。
そのまま、眠ってしまった。
〜・〜
俺の手に触れていた女の手から力が抜ける。
パタリとベッドに落ちたその手は、折れそうなほどに細かった。
散々泣かせたせいで、目がほんの少し腫れている。
左手首の手錠を、外して抱き上げ、風呂場へ連れて行く。
無理やりすぎた自覚はある。
でも、耐えられなかった。
この女の名前も、性格も、何をしてきたのかも、知らない。
知らないはずなのに。
胸が苦しい。
女々しいな、と我ながら思う。
でも、この女を見ていると、自分のものにしたくて、他のやつなんて目に映して欲しくなくて。
気付いた時には、睡眠薬で眠らせたままの、無抵抗な女を犯していた。
何度も、何度も。
何度達しても足りない。
聞き足りない、女の喘ぎ声。
快感に耐える表情が、たまらなく誘ってくる。
足りない。まだ足りない。
もっと、もっと。
もっと……
でも、これ以上は壊してしまう。
それではダメだ。
人間は、痛みや恐怖より。
快楽に弱い。
薬漬けにするなんて簡単だ。
でも、それでは。面白くない
ゆっくりでいい。
薬のように急激でなくていい。
ゆっくり、俺のものになればいい。
〜・〜
目が覚めた。
日が高く上っている。
やばい、仕事!
起き上がろうとして、起き上がれなかった。
身体が痛い。下腹部や節々ももちろん痛いが、かなり噛まれたせいもある。
部屋に誰かいる様子はない。
私は、左手の手錠を見た。
これくらいなら、外せるかもしれない。
ゆっくり壁伝いに部屋を抜け出す。
広すぎる部屋……。
安全ピンを見つけたので、それで手錠を外しにかかる。
この2年、何度か誘拐されそうになった経験が活きている。ちっとも嬉しくはないけれど。
一度目はなんとか凪流が気づいて通報してくれたから、事なきを得た。
それからも度々狙われることはあった。だからこっそり練習していたのだ。
役立ってよかった。
──カチ
よし、外れた。
どうやら、お風呂には入れてもらえたらしい。身体はさっぱりとしている。
病院にも行かなければ。
私は、持ってきた自分の服が入ったカバンを探した。
カバンを見つけて着替えると、外に誰もいないのを確認して走り出す。
ふらふらした足と痛む身体では、早く走ることはできなかったが、それでも歩くよりは早いだろう。
エレベーターは逃げ場がなくなる。
階段で行こう。非常階段を駆け降りる時、誰かが追いかけてこないかとても不安だった。それも杞憂に終わる。
そのままエントランスに出て、タクシーを捕まえた。そして会社に行くように告げる。
「えっ……はる……は、はるぅ〜〜」
会社に入ってすぐ、運良く凪流に会えた。
無断で遅刻した私を心配していたらしく、泣きながら抱きついてくる。
「悠さん、今日は一体……え」
「はる、それ……」
私がきた報告を受けた宮野課長もすぐに来てくれた。
課長も凪流も、なぜか言葉を詰まらせた。
「あ、すみません。スーツ、見つからなくて….。申し訳ないのですが、今日は体調が悪いので、お休みをいただけないかと…」
「何言ってんの、はる!そんな……こんなっ!」
「悠ちゃん。この傷は?」
「え?」
凪流に首を触れられて、噛み傷が見える場所についていたことに今更気付く。さらに、璃久に強く首を絞められた。その跡も残っていたのだろうか。
「あ……いや、これは、…その」
けっきょく、全て説明する羽目になり、2人をそれはもう酷く心配させることになってしまった。
1人にするのは危ない、と凪流と男性社員の同僚──奏多(かなた)が付き添って婦人科に連れて行ってくれた。
婦人科でアフターピルを処方してもらい、傷は病院で手当てしてもらった。軽い脱水症状にもなっていたらしく、点滴もされてしまった。不甲斐ない。
「はる、はる、はるぅ〜」
凪流は終始泣いていた。
「おまえ……こういうの多いんだから、もっと気をつけないとダメじゃん」
奏多も心配そうに私を気遣ってくれた。
ふらふらと歩く私を、2人は支えながら歩いてくれた。ありがたい。
「ごめん……助けてくれたいい人だと思ってたから、つい」
「つい、じゃないよぉ〜!ゔぅ〜」
私の家は場所を知られていたため、今日は奏多の家に私と凪流がお邪魔することになった。
本当に申し訳ない。
仕事も、今日は忙しくないからと3人抜けさせてもらう形になった。
「本当にごめん」
「警察にも届け出たし、警備強くしてくれるって言ってたけどさ」
「それにしたって、おまえの周りは元から強化して見ててもらったのにさ、今回のこれだろ?」
はぁ、と3人でため息をつく。
警察の方では、私を狙っているのは複数犯であると考え、保護する方向に進んでいるという。
命の危険があるかもしれないのだから、仕事云々なんて言えない。
私が足を止めると、2人も立ち止まった。
「どうした?」
奏多が訝しげに首をかしげる
「つけられてる、かも」
「「え」」
ちらっと周りを見渡した2人も、後方と前方、合わせて4人、隠れているのを見つけたらしい。
幸い、人通りが多いおかげで向こうも迂闊には手を出せないらしい。
近くには、警備員もいる。
「警備の人に、助けてもらおう!」
奏多が私をおんぶして、走り出す。
警備員に言うと、警備員は快く、「安心して、もう大丈夫だよ」と、笑顔で答えてくれた。
3人でほっと息をつき、警備員についていく。
とりあえず、この、後をつけてくる4人さえまければ、今日は奏多の家に無事帰れるだろう。
そう思っていたのは、甘かった。
「あ、あの…。本当にこっち、安全なんですか?」
凪流が不安げにきょろきょろしている。
奏多も、表情が硬い。
どんどん暗い道に入っていく。
人通りも、今ではほとんどない。
「えぇ、安全ですよ。ここが一番、ね」
警備員が立ち止まった。
その時、前方後方、2人ずつ出てきて道をふさがれた。
人通りのない、細い路地。
はめられた。
「なっ!」
「えっ」
私は、奏多に下ろしてもらう。
体力的にも、精神的にも、足の震えが止まらない。
「さてさて、ついてきてもらいましょうか。3人とも」
2人が私をかばうように立ちふさがる。
その足は、ガタガタと震えている。
当たり前だ。
こんなの、慣れるわけがない。
私も、怖い。
完全な悪意を前に、3人で震えることしかできない。
5人が近づいてくる。
不敵に笑う警備員。
なんとかして、2人を逃さなければ。
ふっと横を見ると、ものすごく細い、でも通れなくない道があった。
この目の前の5人は、鍛えられた身体でがっしりしている。
奏多と凪流は細身だ。
2人なら、通れる。
「走って!」
2人をその道に向かって押した。
とっさに押された2人は、その路地に倒れこむように入っていく。
もとから私が狙われていたのだ。
2人だけは、逃さなければ。
その一心だった。
細い路地に入られないように立ちふさがる。
「はる!」
凪流と奏多が私を呼ぶ。
「立って!走って逃げるの!早く!」
「いやだ!はる!はる!」
細い路地は、立ち上がるのも大変そうだ。
2人でもがくように立ち上がろうとし、さらに私を引き込もうと手を伸ばす。
そして、目の前の5人も焦ったように私に手を伸ばしてくる。
後ろの2人は逃げようとしてくれない。
どうすればいい。どうしたら…。
こんな時なのに、脳裏に温かく微笑む誰かの顔が浮かんだ。
誰かわからない。それでも、苦しい時に脳裏によぎる、誰かの笑みが。
目に涙が溜まる。
でも、絶対に泣いてやるものか。
私の失態だ。
私が2人を危険に巻き込んだんだ。
私が、守らなきゃ。
守らなきゃ。
なんでもいい。
誰でもいいから。
助けて。
警備員の手が、私の胸ぐらに触れる。
──ガッ
目の前の警備員が吹き飛んだ。
「あー、発見。B3、5の4裏。……そう、えー。面倒。………へーへー、わかったよ」
頭をボリボリ掻きながら、嫌そうに近づいてくる影は、電話をしながら倒れた1人を蹴り飛ばす。
この声と話し方。視線を横にずらすと、そこにいたのは璃久だった。
「あんたさー」
私の目の前に来ると、はぁ、とため息をつかれる。また見つかった。私からすれば、敵が増えただけの状況で何も改善していない。
いまだ後ろの2人は逃げてくれず、目の前には璃久。万事休すか。
「逃げてもいいけどさ。別にあんたのこと興味あるわけじゃねーし。でもちゃんと質問答えてから逃げてくんねぇかなー、ほんと」
警備員が起き上がる。
顔を歪めて、5人一斉に璃久に向かって来る。
私は思わず「あ」、と声を上げた。しかし瞬きをした一瞬の間に5人は地面にのされていた。
「璃久さん、行きますよ」
「はぁ…めんどくせぇ」
また声が増えた。パッとその方向を見ると、そこにいたのは幸架だ。
2人は、5人はをずるずる引きずって路地を出ていく。
私と凪流、奏多は、それを呆然と眺めていた。
てっきり2人も私を追いかけてきたのだと思っていたから、あっけに取られるしかなかった。
けれどこれ幸いと3人で頷きあい薄暗い通路を駆け抜ける。奏多の家に向かって。
奏多の家にやっとの思いで到着し、少し休んでから夕飯を作った。
「なんか…。すごかったな…」
「そうだね…。はる、あの2人、知ってるの?」
「うん。昨日、連れていかれたところにいた」
「「え」」
しばらく沈黙が続いた。
夕飯の水炊きをみんなでつつきながら、やっぱり悠は保護してもらった方がいいね、と2人は言った。
「ふぅ〜」
湯船に浸かる。
温かくて、心地いい。
傷にはしみるけど。
お風呂場の鏡を見て、ようやく自分の身体の状態を知った。
キスマークと噛み跡、首を絞められた鬱血痕。
手首には押さえつけられた跡と、左手首の手錠の跡。
誰が見てもわかる、執着心の証というか、所有印というべきか。監禁の痕跡というか。
性欲処理なら、キスマークなんて残すだろうか。
噛み跡は、そういう性癖の人もいるからわからない。しかしこれだけキスマークがたくさんつけられれば、強姦が目的でなかったのは明らかだ。確実に私個人を狙っている。
こんな骨と皮ばかりの女のどこに魅力があるのか、私にはわからないが。
アフターピルは飲んだし、痛み止めも飲んだ。
まだ足は震えるし、腰も膝も股関節も痛いし、うまく歩けないけど、しばらくすれば治るだろう。
噛み跡は、少し残るかもしれない。
昨日は意識がふわふわとしていたせいで湧かなかった恐怖が、今更になって襲って来る。
路地裏であった男。璃久、幸架、レイ、黒髪の男。警備員の男と、つけてきた4人。
怖くて怖くてたまらない。
もう、いっそのこと死んでしまえば解放されるのだろうか。
私の見た目は、パッとしないし、狙われるような特殊な何かを持っているわけでも、知っているわけでもない。
どうして狙われているのか、わからない。
失った記憶の中に、何かあるのだろうか。
あの、たまにフラッシュバックする温かく笑うあの人は今何をしているのだろう。
誰なのだろう。
あの、薔薇のような赤は、なんの赤なのだろうか。
お風呂に上がると、布団が敷かれていた。
ベッドは壁際、部屋の一番奥にあり、その前の床に布団が二枚敷かれていた。
「悠はベッドな」
「え!いやいや!私は床で」
「はる、間取り見て」
いや、見てるけど。
「万が一、誰かに侵入……されることは想像したくないけど、された場合、一番奥のベッドにいれば、俺たちを跨(また)がなきゃいけないだろう」
「そうそう。そしたら、私たち、絶対気づくから。それに、傷だらけのはるを床には寝かせられない」
「……わかったよ。ありがとう、2人とも」
2人は、嬉しそうに笑った。
本当は、みんな不安なのだ。
警備員さえ信頼できない。
警察に電話したとして、それが本当に警察なのかなんてことも、きっと疑わしいのだ。
これからのことを考えると、頭が痛い。
明日は、会社に行って、そこでちょっと偉いさんの警察が迎えに来てくれるらしい。
その人は、宮野課長の知り合いらしく、融通をきかせてくれたとか。きっと大丈夫だ。
ここから会社に行くのも、宮野課長が迎えに来てくれると言ってくれた。
大丈夫。
きっと、大丈夫だ。
不安を胸にいだきながら、疲れた身体は眠りへと導いてくれた。
真夜中。
「んっ……」
何かがおかしいことに気づき、目が覚めた。
目の前に、誰かいる。
布団で眠っている2人に、侵入者がいることを気づいている様子はない。
どうやって入ってきたんだ。
口を手で塞がれている。
暗闇に目が慣れて来た。
開いた口が塞がらないとは、このことだろう。
だって、目の前には。
私の、顔
私と同じ髪、顔、服。
にっと笑ったその顔が、耳元に近づく。
「……ねぇ」
鳥肌がたった。
会社のプレゼンの練習で撮った録音機で、自分の声を聞いたことがある。
まさに、その声と同じ自分の声が、耳元から。
この人物から、発せられる。
驚きと恐怖で声が出ない。
目の前の自分──女は、クスクスと笑う。
その笑った顔も、私のそれ、そのものだった。
「このまま恐怖と不安の中で、大事な友達を危険に晒しながら生活するか」
女が、私の服に手を入れて探り始める。
ゆっくりと侵入してくる手は、やがて胸まで届き、ゆっくりと撫でる。
「んっ…ふっ……」
必死で声を抑える。
2人に聞こえてしまう。
「……それとも、外に出れないし、あの部屋の中以外の自由はないけど、あの場所に戻るか」
服の中から手が抜かれる。
その手で首筋に触れられる。
ペロリと耳を舐められ、体がビクンと跳ねる。
「………それとも俺に、ついてくるか」
ひゅっと、自分の喉から音がした。
強く首を絞められる。
耳元から、"女"の顔が離れ、私を見下ろし、嗤う。
"女"から発せられた、今の声は。
昨日の、黒髪の男の声だ。
何が起きている?
こいつは誰だ。
恐怖と困惑。
パニックになりながら、酸素を求めて喘ぐ。
しかし、口も首も手で抑えつけられ、絞められている。
必死に抵抗するが、ビクともしない。
「ぅ……ぁ……は…な……し……」
口を覆っていた手が離される。
必死で首を絞めている手に両手で抗うが、ビクともしない。細く華奢な自分と同じ手だとは思えない力だ。
苦しい。
怖い。
「それとも、ここで俺に好きかってされるか?」
ギリギリと力が込められていく。
さっきより強く絞められていく。
楽しそうに嗤う男。
余裕な表情で、私の首をギリギリと締め上げていく。
服をめくられ、胸を舐められる。
ズボンに手を入れられ、ゆっくりと足の間に滑らせ、撫でられる。
「うっ……んっ……ぁ……」
甘噛みされ、吸い付かれ、卑猥な音が響く。
ズルッとズボンが下げられる。
袖に隠していたらしいナイフで、胸を隠していた下着が切られ、行為が激しくなる。
2人が、起きてしまう。
こんなの見られたら、ということより、2人が起きて、この"男"が2人に何をするのかを考える方が恐ろしい。首から手が離れた。男は片手は私の体に触れ、もう片手にはナイフを持ってクルクルと遊び出した。
それを見て、体が固まったように動けなくなる。目の前で刃物で遊ぶ人なんて、見たことがあるわけない。その異様な光景に身がすくむ。
「ゲホッ……はっ……ふっ…ぅ…」
咳き込んで、その音で起こしたらまずい。
布団を口に当てて、音を抑える。
「……なぁ」
耳元で話しかけられた。私はその声にビクッと体を震わせた。
息が整わない。苦しくて、涙が滲む。
「答えないと、このまま挿れるけど」
やばい。
こいつ、頭イカれてる。
息が苦しくて、声が出ない。
首を横に、ブンブンと降る。
ダメ、ダメと。
男は、私の体を触り続ける。
足の間は、もう濡れてしまっている。
逃げようにも逃げられる場所はなく、力では叶わない。さらにその他にはナイフがある。
男は、避妊するなんてこれっぽっちも頭にないようだ。昨夜もそうだった。
貰ったアフターピルはまだ残っているが、そういう問題ではない。そもそも音で、2人が起きるかもしれない。
だいたい、昨日の行為のせいで、私はまだ普通に歩けるほどに回復していない。まだ朝はフラフラするし、腕にもうまく力が入らない。
「な…にが、…目的…?」
「…………」
男は答えない。
私の顔で、嗤う。
気持ち悪い。夢であるなら、冷めてほしい。誰か、この悪夢を覚まさせてくれ。
「さぁ……ねっ」
「あぁっ!」
とっさに掴んだ毛布で口を押さえた。
男が思いっきり私を貫く。
そのまま動かない。
涙を目に溜め、泣くまいとする私を見て楽しんでいる。
「ははっ。すげっ」
下腹部の圧迫感。中で脈打つ感覚。
恐怖で固まっている私の体は、力がこもっていてガチガチだった。
「あなたっ……誰なの……」
「さぁ?…誰だろうな」
私の頰に触れ、こぼれ落ちそうな涙を舐められる。
そのまま首筋に吸い付き、噛み付く。
「うぅんっ……ぅ……ぁっ…痛っ…ん」
「あーあ、泣いちゃったな」
痛みに耐えられず、涙が溢れる。
話し方は優しげだったが、やっていることは強姦だ。ちっとも優しくなんてない。
動かないで入れられたままの男自身が、中で誇張する。動いていないのに、体が熱くなっていく。
つらい。
「もうっ……や、やめっ…て……」
「じゃあ、答えろ」
華奢な手が、胸を覆い、優しく動く。
「んーー」
凪流が寝返りを打った。私の体がビクッと動く。
クスッと男が笑った。
「今、締まった…クスッ」
「やだ、やだぁ」
「やだって言われても、なぁ」
凪流が起きてしまう。
凪流が起きたら、奏多も起きるだろう。
男は繋がったまま動かない。
ゆっくりと体を撫で回してくる。
「な…んで、……か…お……も、声、もっ」
「さぁ?」
何を聞いても答えない。
私の顔で、私と同じ体格で。
この男は私より長身で、がっしりした体格だった筈だ。
声だって、低かった。
手も、華奢に見えて、指は太く長かった。
体格までかけられるものなのだろうか。何もかも、意味がわからない。
「んっ……うぅ……んんっ……い…やっ…」
体が熱い。
溶けてしまいそうだ。
頭がおかしくなりそうで。
内からガラガラと、何かが崩れていく。
この2年、淡々とした毎日だった。
たまにつけられたり、さらわれてしまうことはあったけれど、こんなこと、されたことはなかった。
日常が。変わらない毎日が、消えていく。
布団を握りしめる。
毛布に口を当て、声を抑える。
与えられる快感に耐える。
流れ出る涙を止めようともがく。
それを嘲笑うように、男が満足気に嗤った。
殴ってやりたい。弱々しく握った拳で、男の胸を叩いた。
「なに?」
「ぅ……もう嫌だ……から、ぅ……それに、むかつくっ!.」
布団から顔を上げ、男を睨む。
「ぅ…その、綺麗な、素っ…顔……んんっ…ボッコボコに…してやろうと…おもっぅぁ……てっ」
フハッと男が吹き出して笑う。
バカにしてんのか、この野郎。
「じゃあ、顔殴れよ」
「うっ……で、あがん…ない…」
「しかも、よわ」
「うるさいっ」
なんて無様な姿なんだろう。
体が熱くなり続けるせいで、涙が止まらない。
両手で拳を作って、何度も男の胸を叩く。
目の前の、自分の姿をした男は、こんなに余裕な顔をしているのに。
というか、女の自分の顔をしているのに、なんつー凶悪なモンを持ってるんだ。しかも入れやがって。
自分に犯されてる気分になって、最悪だ。
男の胸ぐらを掴んで、渾身の力で引く。
意表を突かれたせいか、男は簡単にバランスを崩し私の上に覆いかぶさってきた。
そして、今度こそ仕返しとばかりに。
ガブッっと思いっきり、首に噛み付いてやった。
「ざ、ま……みろ……」
起き上がった男に、笑って言ってやった。
思いっきり噛んでやったのに、男は一声も発すことはなかった。
男が、噛まれた首に手を持っていく。
そこをすっと撫で、手についた血を舐めた。
そして。
今までで一番、ゾッとするような笑みで。
嗤った。
「んんっ………っ!」
男が、ゆっくりと腰を動かし始める。
ゆっくり、ゆっくり。
「仕返し、うまくいったか」
憎たらしい笑みで訊いてくる。
本当、ムカつく。
「わ、かった…行く、からっ……それで、いいっんで、しょ……んんっ…はぁっ…んんっ…」
「イクの?早ぇーな」
「意味が違う!」
相変わらずゆっくり動いていた男が、私の腰を掴む。
「あぁ、そういえば、」
男が、自分の髪を掴んでズルッと剥がした。
昨日の、黒髪と鋭い瞳が現れる。
それはそれは楽しそうな顔で、凶悪な笑みで。
「お前のオトモダチには、ゆっくり寝てもらえるように盛っといたから」
「…………は?」
その言葉を理解する前に。
「ああぁぁぁっ!」
激しく体が揺れる。
散々熱く溶かされた体は、快楽を全身に回してくる。
やっと理解が追いついて、凪流と奏多が薬で起きないようにされているとわかっても、声を押さえたくて、必死で耐えた。
肌と肌がぶつかる音。
私の声。男の荒い息。濡れた音。吸い付かれる音。噛まれる音。
耐えられる範囲を超えた快楽と痛みと、この状況に、涙が溢れる。
「あぁ。でも、そろそろ起きるかもな」
ハッと男の顔を見ると、クスクスと楽しそうに嗤った。
それはつまり、薬が切れる時間が迫っている?
「んーー…はる?」
バッと2人が寝ている方を見ると、凪流が眠そうに上体を起こしていた。
うーんとあくびをして、こっちを見ている。
「え……」
寝起きで状況が判断できないのか、凪流が固まっている。
それなのに、男は動きを止めない。
「や、やめっ」
「なんで?」
「おね、がっいっ」
「来るならいいよ」
「わかったからっ…もうっ…」
ズルッと男自身が抜かれる。
凪流が慌てて奏多を起こすのが見える。
2人そろってこっちを見て、青ざめている。
男は片手にナイフを持ったままだ。
どうしよう。
なんとかして、2人に何もしないようにさせなければと必死で考えるが、考えられるほどの余裕がない。
私の上から退くと男は、私を毛布に包んだ。
そのまま、窓を開けて、身を乗り出す。
「おい!待て!」
「はる!」
奏多と凪流の声がする。男が2人に何もしなかったことにホッとした。こんな状況なのに、ほっとするなんてバカだけれど。
ふっと体が重力に従って落ちる。
男にしっかりと抱きしめられたまま、地面に着地したらしい衝撃が体を襲う。
「誰だ!」
屋内で奏多の声がする。
凪流の悲鳴も聞こえた。
「2人に、何もしないで!」
「あぁ、問題ない。怪我させるわけじゃない」
そっと車に乗せられ、そのまま車が発進する。
「そんなの関係ない!2人に何もしないで!」
「喚くな。何もしない。どうせお前がいないのがわかればすぐに出ていく」
ゴソゴソと動いて毛布から顔を出すと、めんどくさそうに運転している男がいた。
私がいなければ出ていくって。2人は人質にとられたりしないのだろうか。
「人質にされるかもしれない」
「ねーよ。あいつらに限っては絶対にない」
男は断言した。今の私にできることは、ただその言葉を信じるしかない。私は唇をきつく噛み締めた。
しばらくして、早朝で誰もいないどこかの駐車場にくると、男が後部座席に回り込んできた。
そのまま私に寄ってくる。
口に何かを含むと、そのままキスをされる。
絶対飲むまいと抵抗するが、男の力には敵わず。
慣れないキスに息がつけず、けっきょく飲み込んでしまった。
「そのまま寝てろ」
口端から溢れた唾液を指で拭うと、男は運転席に戻って運転を再開する。
2人の無事がわかるまで、絶対寝たらなんかするもんか。そう思っていたのに、けっきょく私は薬に負けて眠ってしまったのだった。
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