6
……可愛いなぁ。
エフィを見つめながらふとそんな事を思い、即座に、
いや、兄として見て可愛いって意味で……!
冷静になろうと自分に言い聞かせる。
と、向い合わせに座っていたエフィが立った。
ウォルトに一番近い椅子をすぐ横に持ってくると、ちょこんと座る。
先程まで泣いていたのが嘘のように、嬉しそうな顔をしている。
「身体は? 病気は治ったのか?」
見たところ病魔に侵されている様子はない。きっとリヴェズが治してくれたのだろうと思いながら訊いてみると、その通りの返事が返ってきた。
「お前……髪、伸びたな……」
背はあまり伸びていないが、それは言わなかった。
「うん。リヴェズが毎日洗ってくれるの」
……! 一緒に風呂に……!?
いや、夫婦なんだから……なんだから……。
「?」
エフィはウォルトの興奮が分かっていないのか、きょとんとしている。
「そ、そっか……。
ちゃんと甘えてんだな、あいつに」
エフィが故郷に居た頃に少し年上の女性が居た。
会う度に羨ましそうな顔をしていたエフィに理由を尋ねたら、絶対に誰にも言わないという約束で教えてくれたのだ。
髪が長いと洗ってくれる母親が大変だから、髪を伸ばしたいが伸ばせないのだと言っていた。
「……あ……」
今更気づいた。
エフィの胸にあるペンダントは――
「うん。お兄ちゃんがくれたの。
貝殻が壊れないように、リヴェズが魔法で守ってくれてるの」
視線に気づいてエフィが嬉しそうに言う。
確かに、当時なけなしの小遣いをはたいて買ったものだが……あくまでそれは子供基準であって、ここまで大人に成長したエフィに似合うものではない。
リヴェズに素敵なイヤリングをもらっているようだし、彼に頼めばもっと似合うものを出してくれるのではないか。
ウォルトが何と言おうか悩んでいるうちに、リヴェズが料理を運んできた。
「うわ、美味そう」
初めて見る料理だったが、見ているだけで唾液が出てくる。
三人でテーブルを囲んで一口食べ、
「……美味い。これ何の肉?」
「君も大好きなバイロウだよ」
……!!!!!!っ!
吹き出すところだった。
バイロウといえば、ウォルトたちの村の近辺でよく見かけられた凶悪な魔物だ。
「ここへ来る途中にちょっと森に入ったら、冬眠前の親子を見つけてね。
若いほうがお肉が柔らかいからこれは子どものほうだよ」
自身も料理を食べながらにこやかに言うリヴェズの姿を見ながら、ウォルトはこの食卓から何と言い訳して去ろうかと必死に考えていた。
見れば、エフィも美味しそうに食べている。
――食わなきゃ……ダメか。
ただ、観念した。
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