第16話
ゼクシィの書店にはファンの者たちが詰めかけていた。
「「「「ササエさん下さい」」」」
通販なり何なりと注文すれば届くが、いち早く手に入れたいと誤差程度しかない時間差なのに、それでも直接受け取りたいと、ファンの集う場所に無意識に赴く。
書店にて店員は慣れたやり取りで次々捌いていく。
店を出る時に支払われるシステムを備えているので、ファンたちはデータを受け取るだけでいい。
データはデータなので時間になれば売られる。
しかし、何故書店に行くのか。
同じ志を持つものがいて、それを得る瞬間を共に分かち合いたいからだ。
「ササエさん買えたっ!」
「作者の新作が急に出るって聞いて驚いたぞ」
「私も驚いたわ。しかも、かなりの長編」
「編集者のちゃんねるで五年間もあっためてたって聞いたぞ!」
「早く出会いたかった!」
「ササエさんって、ほのぼのした日常ファミリーものらしいぜ」
「リーシャさんが新作を描くなんて、ジャンルなんて二の次よ!」
「そうだそうだ。俺はホラーでもギャグでもなんでも読むぞ。作者の小説なら俺は雑食だ」
皆それは自分達もだとにっこりとなる。
その前後、ゼクシィコミュニティ。
コンソールを使用し全員が利用出来るチャットが大変盛り上がった。
地球でいう呟きだ。
ゼクシィチャット
・#ノラえもんの作者による新作っ
・やっふー!等々待ちに臨んだ新作だぜっ
・ぎゃー!心臓に悪い!
・なんなの、最近作者関連の話題が熱い
・ノラえもんのアニメといい、漫画といい。というか、漫画ってなに?至高の存在の作りしものなのか?
・ノラえもんに埋もれて立ち上がれぬ
・漫画を始めて見た時は最初、私はなにを手にしたのか本当の今で分かってなかった
・ノラえもんってこんなにアニメが作られていたのか。ゼクシィ大統領は密かに作らせていて、自分だけで楽しんでいたということなのか?
・放送見てないの?アニメは地球という星がつくっていて、それをゼクシィに持ってきたと大統領は説明していた
・濡れ衣回避お疲れ
・ノラえもん!
・仮にアニメを密かに作っていたのが大統領だったとしても、放映するかどうかは大統領が決める事。
・非難じゃなくてありがとうの方が放映してくれる。それが一番
・そうそう
・ノラえもんから帰ってこれぬ
・大統領が作ったのなら独占するのは当然。リーシャさんのファンなら当たり前の感情ですよ
・私だって独り占めする
・でも、大統領は隠さずに、皆に見せてくれた
・偉大なる大統領。ちょー好き
・愛してる大統領。一生ついていく
・小説楽しみだ
・読んでる最中
・読破したいけど長い
・ササエさん、長編過ぎる
・嬉しい悲鳴があちこちから聞こえてくるようだ
・ノラえもんミュージアムのこと聞いたよな?拡張は予想してたが、映画ってなんだ!?
・映画見た。語彙力無くした
・映画の建物丸ごと再現されるらしい。更に世界観の拡張及び解釈の拡張。更なるノラえもんミュージアムの発展が待っている。
・大統領だもんな
・やるよ、大統領
・大統領、信じてるし絶対やるよなあ
・皆、大統領だよ!私もミュージアムの今後が楽しみさ!
本物の大統領登場に盛り上がる。
いつものことなのだ、ノラえもんの話題に入ってくるのが。
***
アルメイとジャニクが端末を操作してノラえもんファンクラブの呟きを読み込んでいる。
「大統領、やっぱ出てきたね」
「自分が一番語りたい人だからな」
ノラえもんのことならなんでも語りたいのが大統領。
「ササエさんは好調らしいですね」
アルメイが自分のことのように喜ぶ。
「文字通り飛ぶように売れているみたい」
「確かに読者とかファンとかくるくる飛んで回ってたなー」
ジャニクが笑う。
私もまるでお祭りの日の賑に嬉しくなる。
そういえば屋台出てたな。
飯マズの世界は引き続きなので、屋台が出たところで1ミリも食べなくならないのだ。
空気だけは味わったよ。
ササエさん発売記念になにかしようかと思って、アニメを流そうと思い立ち、地球へササエさんのアニメを流す許可をもらう。
心なしか、顔が強張ってた。
なぜなのかと思っていると、ノラえもんについて説明を受けた。
どうやらノラえもんの人気が謎なので理由を知っていたら教えてくれと聞かれたのだが、これは具体的に教えた方が良いのではと、慌てて地球に向かうことを伝えた。
ジャニク達はついてくるかと聞くと、アルメイだけついていくと、挙手した。
ジャニクはササエさんのササエさんの長男である男の子、チラちゃんの練習とササエ家長男、2人目の子供であるキツオくんの練習をするので忙しい。
と、述べていた。
非常に満足そうな笑みだったことはしっかり明記しておく。
アルメイは機嫌良く、ササエさんについてはリーシャからちまちま聞いていたが、小説として読めて嬉しいと花が周りに咲いている。
「ササエさんの、あのファミリー感はゼクシィでは見ないので、とても興味深いです」
話を聞きながら地球へ行くと、日本の人と他の方が待っていた。
流石に毎回VIPは困るから、良かった。
「私は地球大使館の館長となりました山田です」
「私も同じく、マイクと申します」
私達の翻訳は周りにも作用するので、通訳要らずなのだ。
日本と海外の人達も意識無しで話せて、円滑に物事は回る。
遠回しに翻訳のものを地球に輸入できないかと聞かれたが、曖昧に首を振る。
良い使われ方ばかりでない事を知っている。
いくらでもやばいことに使えるのだから、オーバーテクノロジーは簡単に与えられない。
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