第18話
私が高校一年生の夏に近づいた頃、教室でアヤとミキが盛り上がっていた
『何?何?どうしたの?』
トイレから戻った恵里奈と私は2人に話しかける
『今年のK市のお祭り、市政50周年でいつもより花火が豪華に上がるんだって!見にいきたいな、って話してたの』
『へーいいねぇ』
『このお祭り、屋台とかもすごく豪勢でさ、楽しいんだよ?みんなで行こうよ!浴衣着てさ!』
アヤたちが盛り上がっているが、その日はレッスンがあるし、しかも週に一度の彩子先生の日。休ませてもらえるはずがなかった
『私は...無理かな』
『そっか、レッスン、あるもんね』
いつもそうだった
こんなだから、ずっと友達もいなかったのだ
お母さんも、くだらない遊びをする友人なら要りませんと言うくらいだから
ずっと諦めてたのだ
本当はすごく行ってみたい
だけど、どうせ許さないのだし、わざわざ母の機嫌を損ねるくらいなら、我慢したほうがマシだと考えてしまった
私はその暗い気持ちを引きずったまま、家に帰った
玄関で靴を脱いでいると、母親が電話で何か話していた
『え!彩子先生が入院?』
脱いだ靴を急いで片付けて私は母に近づいた
『えぇ、あぁ、はい、わかりました。レッスン日時変更ですね』
母は電話を切ると、私を見た
『彩子先生、盲腸ですって、しばらく入院されるみたいだから、火曜日のレッスンお休みだそうよ。本部の方も、彩子先生の穴埋めしなきゃいけなくて、支部の先生の調整がきかないらしくて。
だから支部なんかに通わせたくなかったのに...
しばらくは週に2回になってしまうから、身体鈍らないようにしてくださいね、って電話があったわ』
『うん、わかった』
火曜日のレッスンが休みになるということは、お祭りに行けるかもしれないと思った
だけど、お母さんには言えない.......
どうにかして、行けないものかと考えていたら
お母さんはそのまま夕飯の買い物に出かけた
そのとき、携帯電話が鳴り出した
『はい......』
『長谷川?俺』
祥太だった
『あのさ、今度のK市のお祭り、やっぱり来れないよなぁ?』
『来週の火曜日だよね。レッスン、実は臨時でやすみなの』
『本当か?』
『でも、お母さんが多分、許してくれないから...行きたいけど、ごめんね』
『ううん。ごめんな。なんか無理言って。長谷川に来て欲しかったから、なんとなく...』
祥太の一言にドキッとしてしまった
『わたしも行きたかった』
『お土産買ってくよ。楽しみにしてろよ?』
『うん、ありがと』
『じゃあな』
電話が切れてしまった
祥太と祭りに行きたかった想いで苦しくなった
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