放課後の彼方
runa
プロローグ
新学期の始まりとともに、桜並木が一斉に花を咲かせる頃、陽向高校には新しい風が吹き込んでいた。四月の空は高く、青く、陽射しはまるで心を温めるように優しい。そんな季節、春休みの間に少しだけ成長した心と体を引きずりながら、あたしは新たな一年を迎える準備をしていた。
「今年こそ、いいことがありますように。」
校門をくぐりながら、あたしは小さく願った。陽向高校は、地元で一番の進学校で、毎年たくさんの生徒がここから大学へと羽ばたいていく。あたしもその一人になりたいと、強く思っていた。
新しいクラスに入ると、見知った顔と初めて見る顔が混ざっていた。席につくと、前の席に座る黒髪の男子、蓮はすらりとした背格好で、初対面なのにどこか親しみを感じる雰囲気を持っていた。彼の視線がふとこちらに向き、心臓が一瞬跳ねた。
「君、名前は?」
「えっと、由紀です。」
なんとか声を絞り出した。由紀、17歳。ちょっと内気だけれど、芯は強い女の子。恋愛には少し憧れを抱いているが、自分からアプローチすることは苦手だった。いつも友達に頼りがちで、恋のチャンスを逃してばかり。
そんな彼との距離が少しずつ縮まっていく。彼はどこか影のある表情をしていて、興味を惹かれる部分もあった。授業が進むにつれて、二人の距離は少しずつ近づいていく。彼の独特な視点や考え方に触れることで、あたしは彼をもっと知りたいと思うようになった。
しかし、そんな彼に近づくにつれ、少しの不安も芽生えてきた。彼には何か隠していることがあるのではないか、と。彼の笑顔の裏には、どんな思いが隠れているのだろう。あたしはその真実を知りたくてたまらなくなる。
放課後、学校が終わった後の静かな校舎で、彼と二人きりになる機会があった。彼の目を見つめながら、何を言おうかと頭の中で言葉を並べる。ドキドキする気持ちを抑えきれず、自然と心が高鳴っていた。
「由紀、君はどう思う?未来のこと。」
突然、蓮が聞いてきた。彼の真剣な眼差しに心が締め付けられる。あたしは何も考えられなくなり、ただ彼の視線に引き込まれてしまった。未来のことを話すことは、恋愛に対する期待や不安、そして希望を語ることでもある。
「私は…まだよくわからない。でも、素敵な未来があるといいなって思ってる。」
その言葉に、蓮は小さく笑みを浮かべた。その瞬間、あたしの心の中で何かが弾けた。彼との距離がさらに近づく予感がした。二人の関係は始まったばかりだったが、これからどんなドラマが待っているのか、期待でいっぱいになった。
陽射しが少しずつ柔らかくなる夕暮れ時、あたしは新しい日々の始まりを感じながら、蓮との関係を深めていくことに決めた。二人の未来にはどんな可能性があるのだろうか。心が踊る期待感に、自然と顔がほころぶ。
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