第121話

ドンッ



想像したものとは違う、柔らかな衝撃と共に人の温もりを感じた。



だ、れ…?



すぐ近くに感じる知らない香り。薄らと徐々に目を開ければ



「フッ、まさか姫から落ちてくるとはな。少し眠ってもらう」



不敵に笑う男がいて。



「いやっ…!」



抵抗する間もなく白いハンカチを口に当てられれば朦朧としてくる意識。



「百合!!」



そんな中頭上から聞こえたのは愛しい人の私を呼ぶ声だった。



答えたいのに


…もう声は出ない。



「チッ…流石はえーな。姫は手に入れた。ずらかるぞ!」



私を抱きかかえながらそう言えばバタンと扉の閉まる音。車…?



キキーーッ!!



急発進する音が車で連れ去られたのだと確信を持たせた。頭の中はあの銃声の中誰も怪我してないか…そして、必死に私の名を呼ぶ颯だった。



あぁ…こんなことになったのは、



私が、




私が…

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