迷夢

案の定、贄野さんと関わらないまま、1カ月が経った。

なんとなく視線を感じる気はするが、まあ気のせいだろう。

陰キャを見るような奇特な人は早々いないだろうし、視線を感じて顔を上げても僕を見ている人は見当たらない。

世界が終わる夢は未だに見続けるが、現実はこれといって変化はない。

あの夢の中の少女が贄野さんかもちょっと怪しくなってきた。

姿形が似ているだけの別人の可能性もある。

まあ、似ているというか、その容姿だけは完全一致だが。

不思議だなあと思いながら、本に目を落とす。

あまりにも特殊な夢を見続けるものだから、そういう夢に関する本を最近よく読んでいる。

まあ、夢占いとか睡眠の質だとかそういうものだけど。

意外と面白いので、結構夢中になってしまう。

「それ、面白い?」

しかし、いい加減場所は考えるべきだったかもしれない。

そう声を掛けられて、視線を向けると贄野さんが僕の近くにやってきていた。

僕の机の前にしゃがんで、彼女の視線は僕の手元にある本に注がれている。

「まあ、意外と」

「そうなんだ。それ図書室の本?」

「うん」

大体本は図書室から借りる。なければ、要望書みたいなものを書けば大体通って1カ月後くらいには入ってくる。

前は割と自分でも買っていたが、さすがに親が亡くなって、遺産はあれど今後のことを考えればあまり無駄遣いはできない。

なので、親が死んでからは図書室に足繁く通っている。

元々僕は図書委員でもあるので、割と本には詳しい。

ちょっと場所が遠いので誰もやりたがらなかったのもあるけれど。

「図書室、まだ行ったことないんだよね」

「そうなんだ」

それがなんだというのだろう。取り巻き、というと失礼だろうけど、この1カ月でできたグループの中の友人たちに聞けばよいものを。

正直、鬱陶しいと思う。

(関わりたくないんだけどなあ)

ただわざわざ言うことでもないし、夢の話をするのも困惑させるだけだろう。

その話をした方が頭がおかしいやつってことで避けてもらえるだろうか。

まあ、下手をするとイジメに発展しかねないので、無下にするのも良くないか。

適当に会話しつつ、案内してという彼女の思惑はこちらからは告げない。

向こうから言った場合には応えるけど。

「色々あるんだねえ。皆行かないみたいだから、大したものはないかと思ってた」

「意外と充実しているよ。まあ、遠いからそう思うのも仕方ないのかな」

図書室など静かで、勉強する場所、というイメージが強いのだろう。

遠ければ、自然と嫌煙する。特に勉強が嫌いな奴などは。

「遠いところにわざわざ行くってことは本好きなんだねえ」

「まあ」

「図書委員でもあるんだっけ?」

「うん」

「じゃあ、図書委員の仕事でも、その本を返す時でもいいから、今度案内してよ」

「タイミングが合えばね」

イエスともノーとも言わない。

まあ、ほぼイエスよりかな。

そうなるかどうかは本当にその時によるだろう。

あるいはその言葉社交辞令でなければ、か。

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