第4話 異世界召喚とか聞いてない

 アドミスは、説明の一切を理解できていない生徒達を見て深刻そうに目蓋を閉じ、もう一度生徒達を見渡してため息をつく。

 「無理もないか。むしろ、冷静でいられるはずないよの」

 「すみません、質問をしてもよろしいでしょうか」

 困惑する生徒達の中から、まっすぐに挙手が上がった。生徒やアドミスは、暗闇に見つけた唯一灯火の如く、一斉に挙手をした人物に注目する。

 「君は・・・よし、何か聞きたいことがあれば聞くといい」

 「ありがとうございます。僕は黄昏ヶ丘高校生徒会長立川要と申します」

 周りからは「おおっ」と言う大規模な歓声が上がった。

 立川要は誰もがしる生徒会長。生徒会長と言う肩書きだけでなく、あらゆる物事をそつなくこなし、どんな出来事や面倒事にも積極的に取り組み、その度に誰にとっても最高の結果を残してきた立川は数多くの生徒から慕われていて人気も圧倒的。

 そんな人物が自ら積極的に動いてくれたのだから、それだけで安堵すら覚える。

 「まず最初に、何故僕たちの身にこのようなことが起こったのでしょうか」

 立川からの質問を、アドミスは深くうなずいて答える。

 「うむ。率直な質問感謝する。まず何故諸君らがこちらの世界に呼ばれたかと言うと」

 そこで一つ間を開けて話し始めた。

 「いきなりで飲み込めないかもしれないが、こちらの世界には始祖と呼ばれる九人の神々が存在している」

 「か、神・・ですか?」

 「そうだ」

 立川だけでなく、聞いた者は目を丸くしたり、自分の耳を疑った。

 よもや神などと言う言葉が出てくるなど思ってもいなかった。

 話の中に神という単語が出てきたならば、事の重大の重みがより鮮明に伝わってくる。

 「話を続けよう。始祖の神々達は何年かに一度、神託と呼ばれる導きの言葉を人間へと送くり、それに従い我々人間は生きてきた。そして一月前に新たな神託を授かったのだ。神託の内容はこの世界における新たな力として、選ばれた生徒達と学舎を召喚せよとのものだった。諸君らは選ばれたのだ、それも神々に」

 アドミスが話終えると、立川も生徒も絶句したままではあるがすでに理解は出来ていた。

 信じられないかもしれないが、ここは異世界で自分たちは神様達に選ばれたため召喚された。それは嘘のようで、誰もが予想することなど出来なかった紛れもない事実。

 「そして――」

 再びゆっくりと話し始めたアドミス。生徒達は緊張で生唾を飲み込んだ。

 「諸君らは選ばれたと言ったが、召喚されたのは黄昏ヶ丘高校だけではない。神託を渡された五つの国に一校づつ、学舎と生徒達が召喚された。おそらく、他の四校でも今頃は同じようなことをしているだろうな」

 黄昏ヶ丘高校以外に四つもの高校が来ていると言う、衝撃的な発言の後にアドミスが右手を上へとつき出すと、それぞれの突起に学校名が記された五芒星が現れた。

 印された学校名はみたことのない文字で記されていたが、生徒全員が不思議と読むことが出来た。

 上から時計回りに「白星学院しらほしがくいん」、「天文寺高校てんもんじこうこう」、「叢雨学園むらさめがくえん」、「梓ノ宮高校あずさのみやこうこう」、そして「黄昏ヶ丘高校たそがれがおかこうこう」とある。

 「おいまじかよ!天文寺高校が来てるのか!?あそこってどの部活も全国レベルのところじゃねえか」

 「いやいや白星学院の方がヤバイだろ。部活もすごいけど学力は全国トップだぜ」

 「ねえ、叢雨学園ってニュースに出てたイケメンモデルがいるんじゃなかった?」

 誰もが知る有名校の名まで出ており、それを知る生徒達は口々に話し始めた。凛人はそれを見て、本当に神様達が選んだのなら妥当な選択だなぁ~、的な率直な感想を抱いた。

 「それともう一つ・・・いいや、これは言う必要はないか。高望みが過ぎるやもしれんしな――それでは、本題に入るので耳を貸していただきたい!」

 今まで以上に力のこもった一言を告げるアドミス。

 「黄昏ヶ丘高校の生徒達よ、神々に選ばれた誇り高き者達としてどうか力を貸して欲しい!心配入らん、我が国は全力を持って諸君らを導く!学び、技術、そしてこちらでの生き方は全て支援すると約束しよう!どうか賛成してはくれまいだろうか」

 アドミスは覚悟ある、そしてどこか助けを求めているような言い方で生徒に訴えかけた。一国の王として、異世界から呼び出された高校生にこんな頼みごとをするのは相当な覚悟があったはず。

 それを示すように、アドミスは拳を強く握って顔をしかめていた。

 だが、生徒達の意見はアドミスのそれとは真反対だった。

 「はぁ!?ふざけんなよ」

 少しの沈黙をおいて、生徒の一人が叫んだ。それが狼煙になったかのように次々と反論が飛び交う。

 「何で関係のない俺たちが巻き込まれなくちゃいけないんだ!」「早く元の世界に返してよ!」「神様だか異世界だか知らないけど、俺らには関係ないだろ」

 一向に激しさを増すばかりの状況を前に、アドミスはもう一度拳を強く握る。

 立川などが荒ぶる生徒を落ち着かせようと尽力しているが、ほとんど意味はない。それでもアドミスはもう一度口を開いた。

 一国の王として、神々の導きに従い国を、世界を守るために。  

 「当たり前だ!ただ普通に日常を過ごしていたというのに、神々に選ばれたからと言っていきなり異世界に召喚されてあわよくば力を貸してくれだと!?わかっておる!そんな話は無茶苦茶だと。だがな、我らはそれでも実行しなくてはならん!日々増進するモンスターによる被害!人々に厄災と不幸を与える悪逆の組織「混沌騎士団」!これらから人と世界を守ることにおいて、諸君らは人類の新たな希望なのだ!これまで言った言葉を、ただの老骨が話す戯れ言に聞こえた者にはもうなにも言わん。ただもう一度言わせてくれ!どうか力を貸してくれないだろうか!」

 アドミスは力の限り言い尽くした。その後には、誰の反論も起こらなかったが誰の発言も無くなっていた。

 ここまで来ると、判断は難しいだろう。アドミスという国王は己のプライドを捨ててまで切望の言葉を放った。それを聞いたのなら当然、人間として断るわけにはいかない。だが、得体の知れない異世界で果たして明日から生きてなどいえるのだろうか。

 そして生徒達に不安を与えたのは言葉の中にモンスターや悪逆の組織というものが出てきたからだ。

 つまり力を貸してほしいとはすなわち、闘うことでもあるのだろう。

 なら危険は常に隣り合わせということだ。

 もちろんそれは怖いし、なんならそのせいで判断力が鈍ってしまう。

 誰も自己の意見を言い出せることが出来なくなっていた。

 「ごめん、ちょっと開けてくれるかな」

 答えを出せずにいる生徒達を掻き分けて、立川が一番前に躍り出た。その目には確かな覚悟が宿っていることが伺える。 

 「みんな、確かにいきなりで状況はわからないしこの先どんな目に会うかだってわからない。本当に怖いことかも知れないけどさ、アドミス様は全力で支えてくれると言ってくださったんだ、それに本当に世界が僕たちを必要とするならそれに応えて上げないかな。何てたって―――僕らは神様達に選ばれた黄昏ヶ丘高校の生徒なんだから!」

 一人一人が沈黙しているなか、立川は真っ直ぐに生徒会長の勤めを果たす。立川自身も自覚していた。この場は、生徒会長としてまとめなければならないと。

 「だからさ、力を貸そうじゃないか!僕たちには選ばれた。もしそれに見合う力があるのなら、応える義務だってある!」

 最後に「どうかな・・・・」と控えめに一言添え着けて立川は言葉を止ると・・・・。

 「まあ確かに力が必要なら貸してやっても・・・悪くはないな」

 「そ、そうだな!それに神様に選ばれたんなら俺たちって実はすごいのか!?」  

 「え~っと、一応支援してくれるなら心配要らないよね?」

 「スマホ使えれば、まあいいか」

 先導者が現れてから直後、反論から一変、生徒達は次々に賛成していく。立川もアドミスもその変化を見て少しづつ希望が芽生えていく。

 流れを変えた立川は、この後も株が上がることが予想される。

 一方で、アドミスはとてもほっとした表情を浮かべ、硬い表情も解いていた。

 「立川要よ、本当に助かった。さて、諸君らの答えを聞いてもよいだろうか。」 

 アドミスが訪ねると、反対するものはおらず、既に全員の意思は同じだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

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