天才と秀才が集う異世界で何故か強くなった僕は、できる限り普通に生きる

@rakut

第1話 教室

 午後十四時。

 その日も二年三組では、いつも通りの授業風景が広がっていた。

 教師がチョークでカッ、カッ、と黒板に書いた文字や図形を生徒はノートに書き写すなど、各々の授業スタイルで取り組んでいる。

 「ふわ~あ」

 ノートを取る手を止め、黛凛人まゆずみりんとは憂鬱そうに窓の外に広がる空を眺めながら欠伸をした。

 (全然頭に入ってこないな。ていうか・・・・眠い)

 「はぁ」とため息を吐きながら凛人はシャーペンを握り、またノートを取り始めた。そんな感じでいつも通りの授業風景が教室に流れていた。


 「さて。これが現代魔法学における定理だ。魔法は魔力によって成り立ち、また魔力は魔法によって新なる力を解放できる」


 漫画やアニメに出てきそうな、大きな魔法陣のようなものを黒板に書きながら、後頭部で大きな三つ編みを作っているベージュの髪をした教師が普通の授業ではまず出ない言葉を出しながら説明する。書き終えると同時に生徒の方へ振り向き、眠そうにノートを取っている凛人へと視線を写す。

 「それではおさらいだ。スキルと魔法の違いは何か・・・・黛くん、答えたまえ」

 「ギクゥ!!」

 「おやおや、不意打ちを食らってたまらず、擬音が口から出てしまっているぞ。さては居眠りをしていたな?」

 「し、してません!しようとしていただけです!!」

 「うむ。同罪だ」

 あたふたする凛人を見て、教師はハッハッハッと笑う。しかし、他の生徒は誰一人として笑うことなどなかった。

 そもそも。

 つい最近まで国語や数学などの座学を習っていた高校生がある日を境に魔法がどうのこうのなどと学ばされ、それについて教師からの問いに一人の生徒が答えられなかったからと言って、果たしてその生徒を笑うことなどできるだろうか。

 

 

 

 

 

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