何よりも好きなこと

第1話

【何が一番好き?】



その質問の答えは毎回決まってる。



【ドラムを叩くこと】



どのくらい好きかって?


それは、人間の三大欲求に近い。



寝る、食べる、そして最後の性欲を飛び越えて、”叩く”



性欲なんてものは多分私に必要がない。



恋だとか愛だとか?


そんなもの、私がドラムを追求していく中で一番煩わしいものだ。



そんな考えの元、17才まで生きてきた私の名前は飯塚・フレミング・三波みな



父親がスコットランド人と日本人のミックスで、母親が日本人。



兄弟は私の他に4人いて、上から海生みを渚沙なぎさ哩桜りを美湖みこ、そして私。



上の三人はもう30代オーバーで、海生に関してはもう30代の折り返し地点まで到達してる。



一番近い美湖だって、22才とだいぶ年が離れている。



小さな頃はおぼろげにみんなで過ごしたような記憶もあるけど、物心つくころには家には父と母と、美湖しかいなかった。



そんな美湖だって、高校から日本を離れて海外のハイスクールに通って、そのまま大学を卒業する今年まで日本に帰ってこなかった。




兄弟たちは金融業に携わる仕事や大手不動産会社や美術専門校の講師とか、ご立派な職業について順調に家庭も築いている。



美湖だって、これから大手企業への就職が決まっていて順風満帆だ。



しかも、みんな父母の遺伝子をちゃんと受け取り、美男美女ぞろい。



そんな中、一番下の私といえば、平凡すぎるほどパッとしない見た目しかない。


黒髪、黒目、背も低く、目がきついのもあって辛気臭いと言われる雰囲気。




なんで私だけ兄弟たちと見た目が違うの?


って小さいころは思ったけどね。



でも、よく考えたら別にモテたくないし、愛だの恋だのに時間使うのはもったいないって思っちゃうから、辛気臭い方がむしろ都合がいい。



わたしはドラムさえ叩ける人生だったら他に何もいらないよ。



運動は少し好きだしちょっと得意だけど、勉強は壊滅的にダメ。



ってか、もともとやる気ないし



そもそもさぁ、学校で教わることが社会に出てから役に立つなんて思えないよ。


けど、心配性な海生兄みをにいは私に会うたびにお説教してくる。



プロになるのか?とか、それで食っていけないぞってよく言われるけどさ



とにかく私はこれを極めたいんだ。



今はそれしか考えられないし、頭の中はいつも音楽やリズムの事でいっぱい。

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