第223話

「本当なら、君の意見を尊重しなくてはいけないんだけど、君はきっと断るだろうしね。それに、社長は君を後継ぎにするっていう話、まんざらでも無さそうだし」



「えっ、だって……」



まどかさんのお父さんは、さっき後継ぎは正孝さんに決めているって言ってたし。



「もちろん、現段階の後継ぎは俺にって考えてくれてる。ただ、遠い将来…例えば俺が社長を辞める時、君にその後を継いでもらいたいんだと思うよ」



正孝さんの憶測なのか、まどかさんのお父さんの本意なのか。


どちらにしても、俺を買ってくれているのは嬉しかった。



ただ……。



「すごくありがたいお話ですが、強制じゃないのなら、辞退させて頂きたいです。将来やりたい事もありますし、後継ぎならこれから先産まれる正孝さんのお子さんが継いだ方が適任だと思います」



小早川の血をちゃんと受け継いだ後継者、その方が絶対良いに決まってる。



俺の言葉を受けて、正孝さんは何かを諦めた様に溜息を一つ吐いた。



「きっと何十年経っても、君の意志は変わらないんだろうね。……俺達夫婦は、自然に子供を授かる事は出来ないらしいんだ。それもあって、君の事も考えていたんだけど、まぁ他にも候補はいるから、そっちもあたってみるよ」



そう告げられ、申し訳無さから俺は自然と頭を下げていた。



他の候補っていう事は、康介さんの子供さんとかなのか。


とりあえず、他にいてくれて良かった。

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