第20話

「彼、年下だけど私より全然しっかりしてるんで。私の方が下みたいですよ」



そう告げて、私は照れ隠しに料理に手を付けた。



魚介のトマトソースのパスタ。


高いお店なだけあって、ソースが格別に美味しい。



「じゃあ、俺の前とは違うわけだ」



「え?」



イマイチ意味が分からなくて、聞き返してしまった。



「俺の前でも、いろんな吉野さんを見せて欲しいな。彼氏に見せるような顔とかもさ」



そう言った山下さんの顔は、予想外に真剣で。


私の酔いは一気に冷めてしまった。



「山下さん……?」



「俺が言ってた好きな子って…吉野さんだよ」



「わ、私……!?」



「そう。俺が吉野さんを好きになったから。だから、美雪と別れることにしたんだ」



そう言って真っ直ぐに見てくる山下さんに。


私は、突然すぎて何も言えなかった。

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