第10話

由佳が着飾ってくれるのは、俺としても嬉しいんだけど。


彼氏としては、いろいろ複雑なんだよな。



目の前に、一番厄介な狼もいるわけだしさ。



「周りの奴らには、俺らってどんな関係に見えてるんだろうな?」



器用に高級肉を切り分けながら、オッサンは楽しそうにそう呟いた。



どんな関係って……。



「若い母子とその彼女だろ」



バケットを手で千切りながら、俺は吐き捨てるようにそう答えた。



「おいっ、俺は?」



面倒くせぇと思いながら、「ヒモだよ、ヒモ」と再び吐き捨てる。



「ヒモって、俺まだ学生だぞっ。別にお前ん家に養ってもらってねぇしっ」



そう俺に突っかかりながら、ナイフを向けてくる。


マナーってもんを知らないのかよ。



「ま、まぁまぁ先輩っ」



引きつった笑いを浮かべながら、由佳がアイツを宥める。


それすら、俺としては面白くない。



「いつも家でメシ食ってくのは、養ってもらうとは言わないんですか?」



毎日のように家に入り浸ってるし。


家から大学に通うのだって、珍しくない。



そんなんで、よく言うよ。

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