第29話『ピクニック騒乱』
魚釣りに敗北した俺は、優勝者であるミティアちゃんを抱きかかえながら、みんなが待っている所へと戻った。
釣りあげた魚はチャーリーが持っており、これから調理する事になるのだが……。
ここで、俺が流石にストップをかけた。
「チャーリー。待て。調理って、どうするつもりだ」
「そりゃお前。中身抜いて、塩かけて焼く。以上だ」
「男飯過ぎないか? 男女比を見ろ。流石にまずいだろう」
「……そういえば、そうだな」
冷静さを取り戻したチャーリーは、はらわたを抜こうと魚の口に割り箸を突っ込んだ状態で固まっていた。
そう。我々第三異世界課は4人とも男であるが、それ以外は女性である。
第七異世界課4名、女神課3柱。そしてキッズ3。
つまり合計で10人の女性陣が居るのだ。
対してこちらは4人。戦力差は約三倍である。
戦えば一瞬で敗北してしまうだろう。
「という訳でチャーリー。なんかおしゃれな料理に変更しよう」
「いや、なんかおしゃれな料理って言われてもな。何か知らないか? ハリー」
「ハリー。今こそ君の知識を最大限に活かす時だ」
「嫌なプレッシャーをかけないで下さい。というかそれを言うなら、女性との関わりが多いタツヤの方が詳しいんじゃないですか?」
「女性……?」
俺は周囲を見渡した。
十代の少女4人。しかし、そこまで関係は深くない。
女神様2柱。ラナ様とはそれなりに親しいが、マザーとは本当に仕事の付き合いだけという感じだ。
他の女神は女性とかそういうカテゴリじゃない。
そして、ちびっ子3名。ロリ。
「親しい女性はラナ様くらいだぞ?」
「タツヤ! この! この!」
「私たちとは親しくないって言うんですか!? あんなに熱い夜を一緒に過ごしたのに!」
「君らはそういう枠じゃないから。しいて言うなら娘枠だから」
座っている俺の体でちびっ子たちがアスレチックをしながら俺の体を蹴る殴るしているのを感じながら、俺は固まった。
ある方向からジッと見つめられている。
主に第七異世界課の方から。
「……」
「タツヤさん?」
「……なんでしょうか」
気づいていないフリをしていたが、声を掛けられてしまえば、返事をしない訳にはいくまい。
俺は返事をしつつ視線を向ける。
「私たちも女性らしくないと?」
「あー。いえ。そんな事は無いですよ! 皆さん大変美しい方々ばかりです! 私も話すだけで緊張してしまうくらいですからね!」
「タツヤ!」
ポカポカと背中を叩かれる感触を受けながら、ハハハと笑う。
「えっ、では」
「そんなの決まっているだろう。親しくないから。そうだろタツヤ」
俺に意見を求めるな。アーサー。
「何故その様な意地悪を言うのですか!? アーサー君」
「真実を言っているだけだよ。ウィスタリア」
「まぁ!」
相変わらずバッチバチのアーサーとウィスタリア様を見つつ、話が逸れて良かったと感じていたが、そんな俺に這い寄る汚物に気づき、俺は子供達をそれに近づけない様に庇う。
「ターツーヤさーん。私たち女神の特性を知っていますね?」
「私たち……? えぇ。知っていますよ。マザーやラナ様たち女神の方は心を読む事が出来るんですよね?」
「私だって女神ですよ! というか! 私の方が女神らしいでしょ!? 見てください! この美しい完璧なプロポーションを! 美しいという言葉以外は何も浮かばないはずです!」
「はぁ」
「なんですか! その反応は!」
「いや、今日もメリア様は元気だなと思いまして」
「信仰! 信仰が足りませんよ! もっと信仰を下さい! 昔はあったタツヤさんからの信仰が最近完全に消えてしまったんですよ!? どういう事ですか! 何だかんだと言って、私の体で興奮して、信仰してくれていたのに!」
「ガウガウ!」
「聖女ぱんち!」
迂闊なメリア様の発言で、猛獣二人が本能に目覚めて俺に襲い掛かっているが、俺はそれを無視し、メリア様に最近の事情を伝える事にした。
「いやー。実はですね。最近、朝ラナ様が朝食を作ってくれて、起こしてくれるんですけど。エプロンを着たラナ様は、それはもう美しいお姿なんですよね。あぁ、幸せとはこういう事なんだな。満たされるというのはこういう感覚なんだな。と、感じてまして。メリア様へのお気持ちが完全に消えてしまったんですよね」
「なんて、事ですか……! では、どうすれば!? もっと、もっとギリギリを攻めれば良いんですか!?」
「まぁ、それは自由にすれば良いと思いますが、それだと男からの信仰はどんどん減っていくと思いますよ?」
「な、何故!」
「そりゃあ、裸が見たいだけなら、サキュバスのお店に行けば良いですからね。向こうはギリギリとか言わないですし」
と、口に出しながら、第七異世界課の人たちの様子をうかがう。
まだ十代の女の子に、この手の話は不潔だと思われかねないし。
なるべくなら、好感度は下げたくないものだ。
「アーサー君は!」
「ウィスタリア!」
どうやら心配をする必要は無いらしく、アーサーと楽しくイチャイチャしていた。
よしと、再びメリア様に視線を戻す。
「正直な所で言えば、俺は言うほど裸に興味が無いんですよ。むしろ服を着ているからこそ、興奮する事もある」
「なん……ですって……」
「ラナ様をそういう目で見たくないので、あまり言いたくはないですが、メリア様がいくら脱ごうが、エプロン姿で頑張るラナ様の方が千倍は可愛いし、尊いし、この女神様に尽くしたいと思えるのです。メリア様は正直、ただのグラビアの神なので、サキュバスの店に行けばその欲望は満たせます」
「んが!! わ、私が、あの淫魔たちと同列……!? やっぱり完全に潰すべきでした! 反対運動なんかで足を止めるべきでは無かった!」
「まぁ、正直最初はメリア様にクラっと来ていた時もありましたけどね。実際言うだけあって可愛いですし。でも……ラナ様と日常を過ごしていると、メリア様で興奮していた自分がなんと愚かであったかと悟った訳です」
「こ、これが、寝取られ……? 脳が、脳が破壊される!」
「いや、貴女と寝た覚えはありませんが」
「やっぱり、この体が良いんですね!? いやらしい体が! 私の信仰を奪ったんですね!?」
「や、止めて、下さい! メリア様!」
これは酷い。
なんて醜い姿なのだろうか。
正直な所、こういう所でより女神としての格を落としている気がする。
「メリア様……おいたわしや」
「まぁ、俺はそんなメリアちゃんも好きだけどな!」
「ほう?」
「まぁタツヤの好みは分かるけどな。俺は裸が最高だと思うぜ。服も結局は脱ぐためにある訳だし」
「まぁ、そうだな。俺の言ったのはあくまで俺の好みだし」
「だから、必死なメリアちゃんは応援したくなるってモンよ! どんな姿だって女の子ってのは可愛いもんだからな!」
「良い奴だな。チャーリー。お前は、本当に」
「私もそう思いますよ」
「そうか? ワハハ」
まぁ言うて、教育上良くないので、メリア様はなるべく避けていく訳だが。
エリスお嬢様たちは健全に育ってもらわないといけないからな。
本人たちの為にも、俺の為にも。
「タツヤ。さっきの話だけど」
「うん? うん」
「服を着ている方がエッチって本当?」
「あぁ、本当だよ。大人のお姉さんはね」
「じゃあ、私たちの事もそんな風に見てたんだ」
「見てるわけないね? 君たちは大人のお姉さんじゃないから」
「何よ! ガウガウ!」
「あぁ、チャーリー。とりあえず塩焼きで良いから作ってくれ。このままじゃあ俺が食われる。物理的に」
「おうよ! 待ってな!」
という訳で、ドタバタと騒がしい場ではあるが、それから日が落ちるまで適当にキャンプを楽しむのだった。
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