裁縫スキル

作業着ズボンのおしりが破けてしまったと、連れからLINEで知らせがあった。

新しいのを頼んでいるけど、少し先に納品になるとのことで困っている様子だった。


応急処置として、尻の部分をホチキスで止めて仕事をしているらしい。


なぜ? と思った。


ホチキスで止めるだなんて、応急処置にしても頼りなさすぎる。

再び尻が破けるのは時間の問題だと思うけどな。


裁縫道具が無いのかな? そんなもの百均でも手に入るはず。そもそも縫う気がないのかできないのか……。


実は私も裁縫スキルは小学生レベルだ。


ああいう細々とした作業が苦手だし、どうしてもやらねばならない時にしか針と糸を手にしない。

葛藤の末、やっと覚悟を決めてチクチクと縫っていくのだ。

その間、「わたし縫い物大っきらい!」と、そのストレスを放出しながら縫わねば心が壊れそうになる。


もしかすると私の裁縫スキルは小学生レベルよりも低いのかもしれない。


縫い方は2パターンのみ。

その2パターンだけで堂々とこの人生を乗り切ってきた。


縫い物時の私に評価できるのは、針に縫い糸を3発以内で仕込めることのみ。

必ず裁縫時は針で指を一回か二回はブッ刺してしまう。

それほどの裁縫スキルなのだ。


連れはそれを知っているからか、「縫って欲しい」とは頼んで来ない。


だけど再び、


『ホチキスは弱いから百均で安全ピンを買ってきたよ』


とLINEがあって、私は心を決めた。


『縫ってあげるから持ってきて』……と。


私の裁縫スキルは2パターンのみだけど、そのパターンを試行錯誤しながら尻の穴を塞いでやるつもりだ。


新しい作業ズボンが届くまでの応急処置ならば、ホチキスや安全ピンよりは勝るはずだから。


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