4, 襲われた商隊

女神の気まぐれか否か、湯場の調子も元に戻り何とか準備をすませたシャル達。後は商隊に思う存分ケハノの湯を堪能してもらうだけ...といったところで一人の村人が慌てて湯場に駆け込んで来た。


「商隊が襲撃を受けた」、と。


「全く、本当に女神様は気まぐれですね。話が終わった途端に湯場の調子が良くなるなんて…。まるで僕たちをからかっているみたいだ」


シャルは文句を垂れながらバシャバシャと湯もみ板を動かしていた。湯もみは板で上に溜まる熱い湯と下に溜まる冷たい湯をかき混ぜることで湯全体を適温にするための作業だ。硫黄の匂いが少なくなったとはいえ多くの湯の温度はまだ熱く、シャル達は湯加減を整えるために上段と下段の二手に分かれ、熱い湯に対してこの湯もみを行っていた。


「まぁそう言うでない。またいつ女神様が機嫌を損ねるか分からんからな。今はとにかく湯を万全にするのが大切じゃ。この調子だと全ての湯を見た頃にはおそらく商隊がもう村に着いているじゃろう。子供達は都から来た兵や派手な装飾の馬や牛を見たがるじゃろうから村の入り口で出迎えをしたいならば急がねばなるまい」


そう言いながらムイじいさんはシャルが作業をしているやや後ろで静かに佇んでいた。今年で齢七十を迎えるムイじいさんにとって湯もみの作業は重労働であり、下手に手伝えば腰をやってしまうだろう。


「とはいえ、こんな仕事もしないじじいが偉そうに何かものを言える立場ではないがのう」


「いいんですよ。ムイじいさんは僕たちが生まれる前からずっとこの村を守ってきてくれていたんですから」


「しかし今日やったことと言えばお前さんにほんの少し助言をしたくらいじゃ。願うならばもう一度だけ、皆と同じように働き、同じように汗をかいてみたいもんじゃのう」


少し物寂しげに話すムイじいさんを見てシャルは少し考えると彼にこう伝えた。


「だからと言って今から湯もみをさせるのは、僕は勿論村の皆が許しませんよ。じいさんはもうご老体に鞭を打ってまで体を動かすべきじゃない。それよりも僕が暇な時にいつも話してくれた昔話や伝説をまた聞かせてくれませんか?僕はじいさんの話が小さい頃から好きだし、じいさんも少しは気が紛れるかもしれません」


シャルはショウと一緒に遊べない時は決まってムイじいさんの家に行き、彼が出してくれる温かくて良い香りのする茶を飲みながら、彼が話してくれる村や山にまつわる昔話や伝説を聞くのが好きだった。


「ほっほ。お前さんがこの年になってまで儂の与太話が好きだと言ってくれるのは嬉しいのう。うむ、確かにそうしたほうが儂の気も紛れそうじゃ」


ムイじいさんはそう言うと少し考えたような仕草をしつつ、静かに語りだした。


「ではこの話をしようかの。先程湯が熱くなり、硫黄の匂いが強くなった時にお前さんやショウは『女神様の機嫌が悪くなった』と言っていたな。まぁ儂も同じ言葉を使ったわけじゃが。実は今日のように湯の調子が悪くなるのは村に青い衣を纏った女神の反逆者が近づき、これに対する女神様の怒りが硫黄の強い匂いや熱い湯として地上に表れるからだと昔からこの村には言い伝えられているんじゃ」


「青い衣って、それって行商達が言う『群青の軽業師』のことですか?」


群青の軽業師とは、行商達の間で半ばおとぎ話のように語り継がれている存在である。山の中で道に迷ったり足をくじいて動けなくなった行商や旅人の多くは死を覚悟した時この者が眼前に現れ、正しい道に導いてくれたり、気づけばケハノ村の入り口に送り届けられていたといった摩訶不思議な経験談を話す。そしてその者は若い男で全身に青い衣を纏い、険しい山をまるで軽業師のようにひょいひょいと跳ねるように移動することからいつしか人々を助け導く存在としてこの異名が付けられたのだ。だが奇妙なことに、常に山で暮らすケハノの者達がその姿を見た、という話は今まで一度も出たことが無いのだ。その為シャルも群青の軽業師については噂程度にしか信じていなかった。


「うーむ、そうかもしれんのう」


「でもそうしたら何でその人は反逆者なんですか?そんな人が行商や旅人を助けるとは思えないし、それに女神様を裏切るようなまねをしたんだったら女神様はそんな人を山に置いておくとは思えないんですが」


シャルは小首をかしげる。


「実はかつてこの反逆者は女神様の忠実な使いであったとされていての。人々の幸福と繁栄を一番に願うそれはそれは優秀な使いであったそうな。じゃがある時その使いは人々を思うあまり決して破ってはならない女神様の定めた決まりを破ってしまったのじゃ。罰として女神様は彼の魂を永遠にこの山に縛り付け、死してなお山でけがをしたり、道に迷って山から降りられなくなったりした者達を永久に助けることを命じたのじゃ。じゃが女神はそれに加えて、使いには危険に陥った者を助ける時以外は人前にその姿を見せることを禁じ、また人が暮らすような集落にも近づくことをも禁じた。このおかげで、村に反逆者が近づいた時には女神様の怒りで湯の調子が悪くなる、というわけじゃ」


「で、その反逆者は今でも旅人や行商を守るために『群青の軽業師』としてこの山のどこかで生き続けている、という訳ですか…。うわぁ!とっても面白いじゃないですか!僕も『群青の軽業師』を見たり、助けられたっていう行商に会ったこともありますし、おとぎ話とはいえ本当にそんなことが昔あったのかもしれませんね!なんでこんな面白い話を今まで話してくれなかったんですか?」


「それはの、この話が昔から不吉として語り継がれてきたからじゃ」


「…え?」


ムイは急に暗い口調になり話を続けた。


「故はだれにもわからぬ。じゃがこれよりも恐ろしい昔話や伝説は多く残っておるのになぜかこの話だけは特別に忌むべきものとされていての。少なくとも子供が十二歳を超えてからでないと決して話してはいけないと、そう言い伝えられておるんじゃ。人が死ぬわけでもない、魔物や悪魔の類が現れる話でもない。言うなればただ決まりを破った者が罰せられた、本当にそれだけの話なのに、不思議よのう」


「…もしその歳より下の者に話した場合はどうなるんですか」


「知りたいかの…?」


「えぇ。知りたいです」


「よかろう。じゃがその前に腕を動かすべきじゃな。ほれ湯もみの手が止まっておるぞ」


シャルははっとして自分の手元を見た。話を聞くあまりつい湯もみの作業をさぼってしまっていた。


「す、すみません!」


シャルは慌てて手を動かし始めた。と言っても今湯もみをしている湯はもう十分適温になっているようだ。シャルは板を持って別の湯に移動しムイじいさんもこれに続いた。


「それで、話の続きですが…」


「うむ。もったいぶって申し訳ないが、実のところ十二歳未満の者にこの話をするとどうなるか、それは儂にも分からぬのだ。それどころかこの話は多くの者が自分の子達に伝えることをやめてしまっていてな。恐らく今現在この話を知っているのは儂と、儂のような年寄りと、ここで今話したお前さんだけじゃろう」


「…なるほど。でも確かに『伝えてはいけない』、という決まりはあっても『いつか伝えなければならない』という決まりはありませんからね。忘れ去られてゆくのも仕方ないのかもしれません」


シャルのもっともでさしあたりの無い言葉で、この物語についての話は締められた。


 


そうこうしている内に下段から作業をしている者達と合流した。全ての湯の調整がひとまず終わったのだ。太陽はもうかなり高い位置にある。すぐに昼頃になるだろう。


「皆お疲れ様。一時はどうなることかと思ったけど、調子が戻って本当に良かった。もう少しで商隊が着くだろうから一度村に戻って、皆で隊を出迎えよう」


そう言うとシャル達は斜面を登り、脱衣所で着替えた後、湯場を一度後にした。


(よし、何とかうまくいったぞ。後は問題なく行商や兵士に湯に浸かって貰えれば…!)


そう思いつつ、シャルは皆が脱衣所から出たか確認すると脱衣所の両方の扉を閉めた。だが扉を閉じいざ村に戻ろうとした時、村の方から一人の村人が駆け上がって来るのが見えた。見るとかなり息が上がっている。何か緊急の用があるようだ。


(隊がもう着いて、人が足りないから応援を頼みに来たのか?)


シャルはそう思うとその者に近づき、


「何かあったのですか?」


と尋ねる。彼は息も絶え絶えにその場に跪くと苦しそうにその場にいる者達にこう伝えた。


「い、急いで村に戻ってきてくれ…。た、隊が、商隊が…盗賊に襲われた…。人も馬も血まみれでひどい有様だ…」


 


村への道を足早に駆け下りて村に戻ると今まで漂っていた硫黄の孵卵臭ではない新たな匂いにシャル達は湯場に着いた時と同じように思わず鼻を覆った。村には血の匂い、すえた汗の匂い、獣の匂いが交じり合った異臭が立ち込めている。どうやら匂いは村の入り口がある下の方から漂ってきているようだ。どうやら商隊が盗賊に襲われたというのは本当らしい。シャル達は意を決して村の入口へと近づいていった。


入り口にはこれまでとは比べ物にならない程の異臭と、そして襲撃にあったという商隊の凄惨な光景がひろがっていた。百人規模とされていた隊だが、現在村にたどり着いている者はわずか十人程であった。その者達も全身傷だらけで苦悶の表情を浮かべている。恐らく傷を塞ぐ暇もないまま逃げてきたのだろう、彼らが苦しそうに手を当てている患部からは静かに鮮血が滴り落ちている。彼らが連れている馬たちは更に悲惨であった。多くは人と同じように血を流しており、中には村に着いた直後にこと切れたのであろう馬が道のすぐ横に倒れており、既に死臭を放ち始めている。


シャルの後ろで誰かが苦しそうな声と共に嘔吐をする音が聞こえた。目の前に広がる光景と悪臭に耐えられず戻してしまったのだろう。自分の子を強く胸に抱き、しきりに「見ちゃだめよ」と呼びかける母親もいる。


「女子供は皆村に戻るんだ!ここにいちゃいけない!男達は怪我人を集会所の前まで運んでくれ!馬は後回しで良い!」


下のほうから声を上げながら、ケムが近づいてきた。肩にぼろぼろになった行商の腕をかけ運んでいる。


「ケムおじさん!父さんはどこ!?」


「む、シャル君か。悪いが手伝ってくれないか。理由は分からんが村に着いた時には既にこの有様でな…。お前の父さんは下で隊長と話している」


「おじさんありがとう。皆、何が起きたのか分からないけどとにかく緊急事態だ。ケムおじさんが言ったように女の人と子供は村に戻って!男たちは怪我人を広場に集めるんだ!僕は一度下で父さんに話を聞いてくる!」


シャルはそう言うと足早でチムの下に向かった。ケムの言う通り、チムは道の真ん中で膝立ちでしゃがみこんでおりその腕に商隊の隊長と思わしき男を抱きかかえていた。シャルは父に近づき声をかけようとしたが、父が抱える男のあまりにも異様な光景に絶句した。苦しそうなうめき声を上げるその者の右腕は肘が赤黒く染まり、そこから先の腕があり得ない方向に折れ曲がっていたのだ。肘の骨をばらばらに砕かれない限り人の腕はこのようにはならない。驚きの余り言葉が出ないキオに気づいていないのかチムはその男に向かって静かにゆっくりと語りかけた。


「一体なにが起こったのですか。都の兵士が護衛に付くあなたたちがこうも無残にやられるとは…」


男は朦朧とした意識の中、殆どうめき声のような声で答えた。


「夜明けのことだ…。一度馬達を休ませようと私は水場の近くで隊を止めた…。その時を狙って奴らは襲い掛かってきたのだ…。間の悪いことに兵達も多くが仮眠を取っていたのだが、昨日は晴れた日の満月であったためもし賊が近づいてきても物見がすぐに気付くはずだ…。にも拘わらず奴らは私達の寝首を搔いたのだ…」


「生き残った者はあなたたちだけですか?他の者は一体?」


「生き残った者は恐らく我々だけだ…。兵士達はちりじりになり、荷は殆ど奪われ、その際に行商も殺された…。我々は…うぅ…青い衣の…に…」


そこまで言うと彼は目を静かに閉じた。どうやら限界を迎えて気を失ったようだ。力尽きた隊長をチムは静かに抱きかかえるとシャルをちらりと見る。どうやら既にシャルの存在に気づいていたようだ。


「…待たせて悪かったシャル。お前は村の何人かを連れて湯場から薬湯を取ってきてくれ。ありったけだ」


「う、うん分かったよ父さん」


シャルは隊長が最後にこぼした青い衣という言葉が気になったが父の放つ圧力に逆らえず、大人しく湯場に戻ることにした。


 


商隊長の目が覚めたのはちょうど日が落ち始めた時であった。怪我人は全て集会所に入れられ、そこで手当てを受け、馬達も集会所前の広場に集められ人と同じように傷を癒していた。村人たちの献身的な治療により、特別大きな傷を負っている者や足を折られた者以外は何とか立って歩けるまでに回復していた。商隊長も今は小康状態にあり、方腕が全く機能しないためセナに食事を与えてもらっている最中であった。


「それでは本当に荷は全て奪われてしまったのですね…」


「残念ながらそうだ。『帝の足』としてこれ以上の失態はないだろう…。部下も大勢死なせてしまったしな…」


チムの問に隊長は俯きながら答える。隊長が起きたことで、治療に当たっている以外の村人は皆彼の周りに集まっていた。


「助けてもらったのに何も見返りが出来ず本当に申し訳ない。傷が癒え次第すぐ都に戻り、私の命に代えてでも帝に御礼の品を与えてもらうよう計らおう。我々のせいで食糧は勿論、薬や包帯も多く使ってしまっただろうからな」


「それはありがたい。最近は訪れる行商が少ないせいでこっちも商売上がったりでしたからな。ですが今はまず怪我の回復に努めて頂きたい。傷にもケハノの湯はよく効きます」


「隊長さんや、もし差し支えなければ教えて頂きたいのじゃが、その盗賊はどのような奴らでしたかのぅ?」


チムと隊長の話に急にムイじいさんが割って入ってきた。ムイは皆と怪我人の治療に当たっている間、彼らが受けた傷、特に一部の者が負う打撲や骨折といった傷を訝しげにじっと見つめていた。急に出てきた小さな老人に少し困惑したのか、隊長は目を瞬く。


「はぁ。暗い中だったうえ我々も逃げるのに必死だったためあまり覚えてはいないのですが、私が見た限りでは特に変わった点はありませんでした。確かに規模はそれなりのものでしたが、盗賊はしょせん盗賊です。護衛兵にはまず歯が立たんでしょう」


「じゃがその護衛兵は夜襲にあったとはいえ、あろうことか盗賊風情に倒され、おぬしら商隊を守ることはおろか自分達の身も守れんかったと?」


そこで村人の何人かが怪訝そうな表情を浮かべる。事実とはいえ、東ノ国の皇帝直属の者を非難するような言葉を並べるのは角が立つ。


「そうです、そこが不可解なのです。いくら盗賊が徒党を組んで夜襲を仕掛けたとはいえ百人規模の商隊を護衛兵もろとも瞬く間に壊滅させるのは不可能でしょう。それに私の腕を見てください。私は隊に急いで逃走の号令をかけ馬に乗り手綱に手をかけた瞬間後ろから右肘の骨を砕かれました。不意打ちとはいえ、馬に乗った私の肘を瞬時に砕くなんて余程の怪力と武術を持ち合わせた大男でないと困難でしょう。実はそれが出来るだけの恵まれた体格と優れた武術を持った者が護衛兵の中にはいたのですが、少なくとも賊の中にそんな者はいなかったはずです」


隊長はムイの言葉を咎めることはせず、むしろよくぞ聞いてくれたというかのような、少し興奮した様子で続ける。


「それに私を含めた一部の者は裂傷ではなく骨折や打ち身といった、打撃によって出来た傷を負っています。盗賊のような不意打ちと奇襲しか能が無いような奴らは槌のような重たい武器など使わないでしょうし、もしかしたら我々を襲った賊はかつて武人であった者が盗賊へとなり下がった者達の集まりかもしれません。そうなるとかなり厄介です」


「ありがとう隊長さん。ふぅむ。相手は打撃を用いてくる戦闘に長けた集団か…。なるほど…。いや、まさかな、そんなことはあり得ないはずじゃ…」


ムイじいさんは隊長の話を一通り聞き終えると隊長に礼を告げると独り言をぶつぶつと呟き外に出ていってしまった。


「あ、あの隊長さん。僕も聞きたいことがあるのですがよろしいですか」


じいさんが出ていったことで生まれたつかの間の沈黙をシャルが破った。


「あぁ勿論大丈夫だよ」


「先程僕はあなたが気を失うまでそばにいたのですが、あなたは気を失う直前『青い衣』と言葉を口にしていました。その、あなたは襲われている時に青い衣の者を見たのですか」


「あぁ。そういえば我々がどうして命からがら逃げてこられたかを話していなかったな。そうだ、少年。信じられんかもしれないが私達は我々行商が時たま噂にする『群青の軽業師』と思しき者に助けられたのだ。肘の骨を砕かれた後私はかろうじてついてこられた者達を連れ行商路を逃げていた。道は丁度草原の道から、木々が生い茂る山道の入り口に移る位の場所であったが、人も馬も皆深手を負いこれ以上逃げるのは限界であった。私も生き残りたいという本能からか手綱を握る腕が使えないかわりに馬のたてがみを歯でかみしめ何とか馬の背に乗っていたがついに落馬してしまった。私はすぐに追手の盗賊達に囲まれ、静かに死を覚悟した。が、その瞬間頭上の木から何者かが飛び降りて来て今まさに私に剣を突き立てようとする賊の頭蓋をたたき割った。そしてその者は驚き動揺する他の賊を驚くことに素手で叩きのめした後私を再び馬に乗せ、彼自身も私の馬に乗り先行していた他の仲間を連れて山道を上がったのだ。私は朦朧とした意識の中彼の腕に抱かれていたが、その中でも確かに見えていたのは満月によって照らされた、彼の身に着ける群青色の衣だった」


「それでその後はどうなったのです?」


シャルが食い気味に尋ねる。昼間ムイじいさんから聞いた話もあり、シャルは隊長の話にすっかりのめりこんでいた。


「私は助けられた後すぐに意識を失ったので分からないのだが後に仲間から聞いた話によると、その者は林道を抜け丁度岩山の地帯に差し掛かる辺りで馬を止め、静かに山頂の方を指さすと、まるで木に登る猿のように軽々と急斜面を駆け上がりやがて尾根の向こう側に消えていったというのだ。そして我々は傷ついた体を引きずりながらも山道を登り何とか村に着いたという訳だ」


「ほらほらあなたたちはいつまで隊長さんを付き合わせるつもりなの!?食事が冷めちゃうじゃない!それに目を醒ましただけで彼は病人なの!もう安静にしてなきゃだめ!ほらもう行った行った!」


男達の質問攻めで隊長に食事を与える仕事をお預けされていたセナはついに我慢の限界が来たのか集まった村人達に大きな声で外に出るように促した。そしてセナの気迫に負けた者達は、シャルは勿論チムも含めた全員が半ば無理やり集会所から追い出された。

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