第3話
「あ………
ホントに、指輪…」
君が転がり落ちた指輪を手に取る
2つのうち1つを君の左の薬指に嵌めていくと、途中で引っかかってしまった
サイズが小さすぎたようだ
君はもう1つの指輪も試していたが、やはりサイズが小さかったようで、どうしても指の途中で引っかかってしまう
あぁ、俺のバカ
もっと大きく作っとけば良かった
それに、形も歪すぎる
いくら幼い頃に作ったものだと言っても、もう少し正円に近い形に出来ただろうに…
あぁ、恥ずかしい
君も、こんなもの貰っても要らないよね
あぁ、やっぱり俺はここに居なくて正解だったかも
人間だったらきっと、羞恥心で死んでいた
これは間違いない
あぁ、君はどんな表情だろうか?
チラリと伺い見ると苦しそうな表情をしている
何故…?
わからない……
『ごめんな』
俺は君の膝の上に乗り、身体を擦り付ける
君への謝罪も込めて
君はぎゅっと俺を抱き、言葉を紡ぐ
「僕もね…
僕もけーちゃんのこと、大好きなんだ
ここで一緒にタイムカプセル掘り起こしたかった
それで、両想いだってこと分かってたら、僕ら幸せになれたんじゃないかなって……」
君はボロボロと涙を流しながら想いを告げようとしていた
もし俺が死ななければ、君をこんなに泣かせることはなかったのだろうか?
君との未来を笑顔で思い描けていただろうか?
なかなか泣き止まない君に、俺は何がしてあげられるだろうか?
考えが纏まらない間に君は泣き止んだようだ
その間俺はずっと君に抱かれていたままだった
「ねぇ、にゃんこ
僕がけーちゃんに書いた手紙、見てよ
お前に見せたら、きっとけーちゃんにも届くんじゃないかなんて、思うんだ」
君の言葉の意味が分からず、君を見上げる
君はけーちゃんへと書かれた封筒を取り上げ、中身を出す
四つ折りにしていた手紙を開き、俺に見せる
『18さいになったけーちゃんへ
けーちゃん、おげんきですか?
ぼくはきっとげんきです
けーちゃんと18さいになってもいっしょにいられるのうれしいな!
ぼくね、けーちゃんがだいすきなの
これからもずーっといっしょにいよーね
よういちより』
あぁ、君も俺のこと、こんな昔から好きでいてくれたのか…
嬉しい
「ねぇ、にゃんこ
お前、うちに来るか?」
『行く!!』
突然、君から提案されたその言葉
俺は反射的に返事をしていた
もう君と離れたくない
その一心で更に君の方へと身体を押し付ける
「…じゃぁ、今日からお前はうちの子だ
名前どーしよーか?」
俺を抱きしめ、尋ねてくる君
嬉しい
君は手紙を封筒に仕舞い、タイムカプセルの缶に戻して缶のまわりを拭きあげる
綺麗になったタイムカプセルをバックに仕舞い、俺を抱いて君は歩き出す
「…決めた
にゃんこ、君の名はケイだ
クロのK、なんてね…」
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