序章

第1話

「うっせぇ化け物!


こっち来んな!!」




そんな声と共に投げつけられた石


それは小さな男の子の頭に当たって勢いを失い、地面を転がった




「痛いっ」




石の当たった男の子は小さく悲鳴をあげた


それを聞き付けた1人の女の子が、慌てて彼に近寄る


その女の子は男の子と似た様な というよりも、そっくりな顔つきをしていた




「十夜!


大丈夫!?


…またあんた達ね!


今日こそは許さないんだから!!」




女の子が石を投げた男の子達に対して拳を作り、追いかける




「うわ!


化け物のねーちゃんが来た!


お前も来んな!!」




心ない言葉に傷付きながらも、弟の為にいじめっ子を追い払う


女の子は許せなかった


心優しい弟が 化け物 と蔑まれ、いじめられている事が


いじめっ子達に一発ずつ拳骨を食らわせ、彼女は彼の元へ急いで戻った


男の子は、その場で俯いて拳を握り締め、震えていた


女の子は直ぐに理解する


彼が泣く事を我慢している事を


女の子は男の子を抱きしめた




「…もう大丈夫…


おねーちゃんがあいつ等追っ払ったから」


「………ん……」


「……大丈夫…


十夜は悪くないの」


「……………ぅ、ん………っ」


「今度はおねーちゃんが十夜を守るから……」




女の子は震えた声で 今度こそは… と、誓う様に呟く




「…………ありがと…おねーちゃん


……僕は大丈夫だから…」




そう言って、男の子は女の子の腕の中から逃れる


女の子を見てややぎこちないが、小さく微笑んだ男の子


その表情に、女の子の小さな胸は酷く痛む



何故自分に 力 がないのか


何故自分ではなく彼なのか


何故、何故 何故?



女の子の胸中には自責の念と、疑問しかなかった



あの時自分に 力 さえあれば弟がいじめられる事はなかった


あの時自分が助けを求めなければ弟がこんな目にあう事もなかった



どんどん暗い方へ考え、1人で落ち込み始めた時、

つんっ と袖の端を引かれて今までの思考は霧散する




「……帰ろ?」


「…………うんっ」




一瞬思考が止まり、間が空いてしまったが元気良く首肯する




そして彼女は


後悔する事になる

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