第10話

冬美はスマホで調べ始めた。


「副社長の東條健しか、メディアに出てこないわね」


「兄弟?」


「違う、偶々同じ苗字みたいよ」


「そうなんだ」


次の瞬間、冬美の表情が強張った。


「冬美、どうしたの?」


「亜紀、東條理樹のことは諦めなさい」


「どうして?」


その時冬美の言葉に私は愕然とした。


「東條理樹には婚約者がいるよ」


「婚約者?そんな」


やっぱり遊ばれたんだ。


私はその場にへたり込んだ。


「亜紀、大丈夫?」


「大丈夫」


冬美にはそう言ったものの、全然大丈夫じゃなかった。


私は一人でアパートに帰った。


部屋で一人大声で泣いた。


その頃俺は途方にくれていた。


あれから二ヶ月も経ってしまった。


亜紀、待っててくれているだろうか。


俺はスマホを壊してしまい、データーをバックアップしておかなかった為、亜紀の連絡先がわからなくなったのだ。


「理樹、だから言っただろう、あれほどバックアップしておけと」

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