第55話

山城はくるみをベッドに寝かせて、ホテルの部屋を後にした。


くるみは涙が止まらなかった。


(山城さんに抱かれながら、我妻さんの名前を口にするなんて、私はなんて酷い女なの)


くるみは一晩中泣き明かした。


山城はマンションに向かっていた。


運転手の山城組、有働はてっきり朝になると思っていた。


「若頭、早いっすね」


「なあ、女は好きな男を思いながら、他の男に抱かれることが出来るんだな」


「そうっすね、でも、目の前の女が感じているなら、それはその女を抱いてる男に感じてるってことじゃないですか」


有働は山城の見たことがない、落ち込んだ態度にびっくりした。


こんなにも、女を守ろうとする言動は見たことがなかった。

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