第76話

辺りは暗くなり始めた。


(誰も通らねえじゃねえか、どうするんだよ)


健吾は夜空を見上げて、由梨の笑顔を思い返していた。


手も足も何も感じない。


(あの時もダメだと思ったっけ)


銃で撃たれて、血がドクドクと流れた。


(その時、俺の顔を覗き込んだのが由梨だったな)


健吾は徐々に意識が薄れていった。


そんな中、西園寺組は捜索が難航していた。


「兄貴、見つかりません」


「病院を出たのは確かだ、病院からの帰り道の何処かに若頭はいるはずだ」


「まさか、拉致されたとか……」


裕也の言葉に渡辺も嫌な予感がした。


暗闇の中、これ以上は捜索は不可能と渡辺は判断した。


次の日、渡辺は山本組に向かっていた。


「うちの若頭を返してもらおうか」


山本組組長は口角を上げて、ニヤリと笑った。


「さて、何のことを言ってるのかな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る