第74話

(何だ、ずっとついてくるな)


そう思った瞬間、車をぶつけてきた。


(危っぶねえ)


健吾の車は何度も体当たりされ、急カーブに差し掛かった時、ハンドルを切りそこなって、


崖に転落した。


健吾は意識を失った。


夜になっても戻らない健吾を心配して、由梨は渡辺に連絡を取った。


「あのう、健吾さんが戻らないんですが……」


「若頭はどちらに行かれたのですか」


渡辺に問われて経緯を話し、病院を伝えた。


「わかりました、由梨さん、いえ奥様は若頭がいつ戻るかわかりませんので、待機していてください」


渡辺は嫌な予感が脳裏を駆け巡った。


「裕也、若頭から連絡ないか」


「へい、今日は何もありません」


「若頭は一人で出かけて、まだ戻らないらしい」


「えっ」


(あれほど注意したのに、全く)


「俺、探しに行ってきます」

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