復讐劇の始まり

Reo

前編 幼馴染は聖女様

これは昔の話。

僕は、シリルと言う名。シリルと言うのは、もう亡き母様が付けてくれた母様の形見で大好きな名前だ。響きも良いし!

だけど、今は今の名前がある。

継母ままははが付けてく・だ・さ・っ・た、オチーリアという名だ。

どこまでも堕ちて行け、という意味だそう。

母様が亡くなったのは4歳の頃。3年間は再婚しない方が良く、3年が経つと再婚した方が良いのだ。貴族って、ムズカシイ。

2年前に父様が未亡人の方と再婚。

相手は爵位目当てで、こっちは資金目当てだ。うちがお金に困っている。と言う訳では無く、裕福の部類に入る方だと思うが、父様は民の税率を下げる為に結婚したらしい。

本当は結婚しなくても良かったのだが僕が英才教育のおかげか、その辺を心配していたのを知ったのと、僕たちは王都に住んでいるから領地の屋敷を管理する人が欲しかったそうだ。


これは、4年前になる5歳の頃の話。

僕は不思議な少女と出会う、その子は、ルールネと名乗る。

何故この場所に? と、思いながら僕はルールネが言うがままに色々な遊びをする。

実を言うと、ルールネは『*ルリの称号』を持つ聖女だ。

だが、これを知ったのは次の日になってから。

『※ ルリの称号 大聖女ルリに一番近く歴代聖女(大聖女は例外)の中でも力が最も強い者に与えられ、ルリが名となり元の名が姓(名字)となる』

僕の幼い頃は『無能』と継母ままはは異母姉いぼしに罵られていた。

そんな僕を(精神的に)助けてくれたのは、ルールネ。いや、聖女ルリ様。それが少し誇らしいのは皆んなには内緒。ルールネは僕の初恋だ。叶わない?分かっている。それでも、この幸せが続く事を願っていた。


だが、僕の幸せは長くは続かった。なぜかって? 義母にバレると軟禁まがいの事をされるから。

はぁ、軟禁と言っても毛布と食料、勉強道具、小さな鉄格子付きの窓しか無い部屋に閉じ込められるのだ。なぜ父上にバレていないかと言うと、義母の実家で領主修行をしている事になっているから。勿論、継母ままははの実家もグルだ。今に始まった事ではないけど僕はいつもより悲しくなった気がした。

軟禁をされてから1週間がたった頃に僕はや出して貰えた。

いつもより短い気がしたが、良いことかと思いその時はよく考えなかった。


【今】

今日は教会にでも行こう。『聖女ルリ様』には申請しないと面会は出来無いけど、運が良ければ会えるかもしれない。ちなみに、この家で僕に優しいのは父上とうちの使用人だけ。義母が連れて来た使用人は違うよ?

「そろそろ行くかぁ。」


【教会】

「ん? 話し声?」


教祖? 「くくっ。あのルリ・ルールネとか言う聖女に毒を盛る事に成功したぞ!」

大神父? 「聖王様これで聖王の座は一生貴女様の物。私は一生大神父。クックックッ」


(どうゆうことだ?)


教祖 「聖女に毒を盛るだけで、身分を保証。追加で金もたんまり貰えるなんてな」

大神父 「王族ともあろう方が暗殺のご依頼をしてくれるとは。王族様々ですねぇ。やっと、あの忌々しい聖女を排除できます。」

教祖 「教会の権力が膨らむ事でも恐れたのか?金まで出してくれるなんてなぁ。いやはや、有難い!」

大神父 「はっはっはっ!」


(おうぞく?あの?誇り高き?王族?いや、解毒の情報を…)


大神父 「バレて調べられたとしても、見つかる事の無いスピオレット精霊の毒。」

教祖 「遅効性なのがたまきずだが、仮に見つけられたとしても解毒薬なんて有りはしない!!」


スピオレット精霊!?精霊毒!?有り得ない!伝説の毒だぞ!)


大神父 「私も信じて居ませんでしたが、本当にあった!眠る様に亡くなる、伝説の毒!」

教祖 「ふん!精霊が居るんだ。精霊毒だって有り得るだろう?」

大神父 「そうですねぇ。はっはっはっ…etc以下略


(…調べないと。伝説の毒だって有ったんだ。解毒する方法だってあるはず。)


ルカ使用人、ルリ様に面会の申請をしてから帰ろうか。」

「シリル様、何かしましたか?」

「うん? 教会でか?」(ちょっと前まで盗み聞きしてました!)

「はい。様が、『聖女ルリ様』として呼び出しを…」

「! 心当たりがある。いつだ?」

「明日の9時過ぎとなっております。」

「ああ、分かった。行く、と言う返事をして置いてくれ」

かしこまりました。シリル様。」


【夜】

「全然見つからない!まぁ伝説の毒の解毒、何て聞いた事も無いしな。」

「そうですね。様、そろそろ明日に備えてお休みになった方が宜しいかと。」

「もうこんな時間か…。分かった、ルk

「お茶ですね、どうぞ。」

(やっぱり優秀過ぎない?)

ちなみに、ルカが僕の事をシリルと呼んでいるのは至極簡単な理由だ。ルカは母上が亡くなる1年半ほど前、僕が2歳半の頃からこの屋敷に仕えている。これは母上の葬儀が終わり、僕が改名時の話。

「シリル様…いえ、オチーr」

「ルカ…」

「シリル様、お茶をお入れしましょうか?」

「…うん、ありがとう。ルカ」

「お礼を言われるような事をした覚えは…」

「それでも、ありがとう。」

「どういたしまして、シリル様。ですが、公共の場ではオチーリア様とお呼びいたしますからね!」

「…覚え、あるじゃないか。」

「シリル様、お茶をどうぞ。」

「ルカの嘘つき。」

「お茶をどうぞ?」

「ルカのうs」

「お茶をど・う・ぞ。」

「う、うん。あり、がとう?」


【朝】

「おはようございますシリル様。支度をしますよ!」

「もう? まだ5時…」

「ごちゃごちゃ言ってないで支度しますよ?」


(ルカ!?主人の息子にごちゃごちゃって…。しかも有無を言わせぬ笑顔で…)


に会えるのって9時過ぎだった筈だけど?」

「聖女様、しかも『あの』ルリ様に会うのです!支度の2時間や3時間は当たり前です!」

「そうなの!?」

「はい!準備しますよ〜!」

「えぇ…」


【8時頃】

「疲れた…」

「ふう!やっぱり達成感がありますねぇ。さぁ、行きますよシリル様」

「ねぇ、会うのって1時間後だよね?」

「? はい。そうですけど?」

「教会までが15分、お清めの時間が10分、お祈りの時間が15分。残りの20分は?」

「待機です!」

「は?」

「待機です!」

「そう言う物か…。」

「理解して頂けて何よりです! 行きますよ〜。」


【聖女の間】

「お久しぶりです、ルリ様」

「久しぶり、シリル。その名で呼ばないで。後、いつも通りに喋べる。違和感しかない」

「ですが…」

「オホホホホ!オチーリア様はワタクシにケイゴを使って欲しくて?」

「その名で呼ぶな。」

「私だって、『ルリ』は嫌い。」

「あのなぁ、不敬罪で捕まるぞ。」

「なんで? 私が『ルリ』なのよ?」

「う、確かにそうだった」

「そうよ! そうなのよ!」

「ルールネが『ルリ』として呼び出したんだ。何か話があるんだろう?」

「鋭いね!」

「鋭いか?」

「まぁそれは置いて、本題に入ろうか。」

「あぁ。どうせ教祖が盛った物について話があるはずだしな。」

「え、どうして?」

「教祖直々に話してくれたよ。ベラベラと、ね?」

「盗み聞き? 感心しないなぁ」

「何の事かな? あと、君の方がしてるだろ? しかも、『魔法』で。」

「…何を盛ったかは分かる?」

「毒。」

「…種類は?」

「伝説の毒、精霊毒。」

「教祖、口軽過ぎない?」

「まぁ、否定はしないよ。解毒薬は? あるのか?」

「えぇ。材料しか分からないけど、有るには有るっぽい。」

「詳しく。」

「無理。絶対に無茶する上に、材料を入手にする頃には手遅れ。材料は入手の難易度が馬鹿高いし、市場にも滅多に出ない物ばかり。」

「市場に出ないなら取りに行けば…」

「それを無茶って言うんだよ? 入手難易度 馬鹿高いって言ったでしょ? 命の危険もあるんだよ?」

「でも、」

「教えない。教えられない。」

「教え」

「無理」

「教」

「無理」

「お」

「無理!」

「何で!? *冒険者ギルドにでも依頼すればいい。」

「それでも間に合わないから言ってるんでしょ!」

「だけど…。」

「…」

「ヒントだけ。」

「はぁ、精霊草。私が言えるのはここまで。この話は終わり。遊ぼう? シリル」

「それでも作って見せるから、材料を教えてくれなくても絶対に作るから、」

「最後くらい、シリルと居させてよ!『ルリ』の友達じゃない、『私』の友達と、」

「ルネ、」

「!?、ははっ久しぶりに呼ばれたなぁ。家族とルシーだけの愛称。お母さんもお父さんも、聖女様かルリ様って呼ばないといけないから。ルシーはいいな」

「僕だって久しぶりに呼ばれたさ。母上とルネしか呼んでくれない。」

「でもルシーは侯爵令息だから、ルネって呼んでも不敬罪には成らない。うちが侯爵家だったら良かったのに。」

「そうだね。ところで一つ聞いても?」

「何?」

「精霊毒の解毒薬の材料。」

「えっとね、げっk…って、そこに戻るの!?」

「ちっ。*月光草っと。」

「今、舌打ちしたよね!? 後、何で分かるの? 怖いんだけど!」

「たかが4年、されど4年。言ったでしょ? 解毒薬を作って見せるって。」

「…本気、なんだね。」

「はぁ、(これは使いたくなかったけど、)は無効? はどうなるの?」

「っ、ルシーは生きてよ‼︎ 私はもう、」

「だから僕が!」

コンコンッ

神父「1時間が経ちましたので、面会は終了です。またのお越しをお待ちしております。」

「はい。分かりました。ルリ様、また会える日を楽しみにしております。」

「はい、また。オチーリア様。(ルシー、月光草の日)」

「(あそこに集合。)ルカ、行くぞ。」

「承知致しました。オチーリア様」

『※ 冒険者ギルド 言わば何でも屋。外から依頼を受け、登録をした者達に依頼をさせる。指名依頼やランク指定以外に受ける依頼には自由がある』

『※月光草 数年に一度、満月の夜に花が咲く。花自体は白く、月の光が当たらない時は淡い黄色に発光する。精霊草の中でもレア。花弁が薬の材料になり、夜のうちに発光させた状態で薬を作る必要がある』

シリルは紳士のルールネは聖女の仮面を付け、最後になるかもしれない別れを告げた。


【帰りの馬車】

「ルカ、」

「月光草が咲くのは、7日後です」

「! ルールネとの会話聞いてたの?」

「はい、シリル様の背後でお聞きしておりましたが?」

「あ〜、そう言えば人払いしてなかったな。ルカ、他に誰か居たか?」

「シリル様やルリ様の他にはわたくし以外、誰も居ませんでした。」

「ふう、よかった。」(ルカは、幼い頃を知ってるしルールネと面識もある。連れてきたのがルカで良かった。)


【次の日】

「材料、*氷結草か…。7日で材料を全て集め無いといけないのに。」

『※氷結草 触れるだけで身体が凍てつく。北の果てにしか生えない。精霊草の一種で氷の中に花を閉じ込めている様な見た目。花の色は様々で、淡い青の花弁のみが薬の材料となる。』

「冒険者ギルドに氷結草の依頼をして置いてくれ。」

「畏まりましたシリル様。依頼料とランクはいかが致しますか?」

「どれ位が相場だ?」

「相場は20万、高い物ですと30万行かない程でしょうか…?」

「…25万だ。ランクはギルドに決めて貰おう」

かしこまりました。」


【次の日】

「氷結草の依頼をAランクの冒険者パーティーがお受けになりました。」

「分かった。」


【その日の夜】

「シリル様、」

「なんだ?」

「お知らせが有ります。」

「なんだ?」

「氷結草が手に入りました。」

「! 早いな。ルリ様に面会の申請を。」

「承知致しました。明日の14時にキャンセルが出ている様でしたが、如何いたしますか?」

「じゃ、じゃあその時間でお願い。」(確認済み!?)

「では、明日の14時にルリ様の面会を

(面会を?)

申請しております。後、確認は当たり前です。」

(聞く必要あった?)

「あります」

(ん"! 、エスパー?)


【ルリ・ルールネ視点】


「ルリ様、そろそろお休みになられては?」

「この書類が終わったら休みます。」

「ルリ様、その返答はもう3回目にございますぞ?」

「仕方ないわ。仕事は有り余る程あるのだから。」

「教祖様に押し付け…コホン、幾らかは教祖様に代わって頂いても構わないのでは?」

「そうは言ってもね…。」(あのクソ教祖きょーそにとやかく言っても無駄よ。無駄。主に時間が)

「とりあえず、残りの書類は没収です。幾らかは私がやっておくので明日にでも確認して下さい。」

「あと一枚! 一枚だけ、ね?」

「コラ! そう言って、この前も夜更かししたでしょ! めっ!」

「うぅ、はぁい。」(くっ、何も言い返せない!)

「分かって頂けたようで。」

「ねぇ、月光草って7日後に咲くのよね?」

「ええ。7日後の予定とお聞きしておりますが?」

「私、その日は休み取るから、よろしく!」

「分かりました。(やっと休む気に!)お休みなさい、ルリ様。」パタンッ

「…毒の解析、進めなきゃ。」

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