第8話 人喰い刀
田中は旭川の水神龍王神社へ向かっていた。神社は静かな森の中にあり、周囲の静寂は、まるで彼を歓迎しているかのように感じられた。しかし、彼の心には不安が渦巻いていた。そこには「底なし沼」と呼ばれる伝説の場所があり、数多くの人々がその沼に飲み込まれて行方不明になっていた。
神社に到着した田中は、神社の境内を見渡し、古びた石造りの鳥居をくぐる。彼は神社の奥へと進み、木々が生い茂る道を歩いた。道の終わりには底なし沼が広がっており、薄暗い水面が静かに光を反射していた。
「本当にここに人食い刀があるのか…」
田中は心の中で呟きながら、沼の縁に近づく。水面は静かで、波一つ立たない。しかし、その静けさは不気味さを増し、彼の背筋をぞっとさせた。
沼の水がゆらりと揺れ、田中は何かが水中から浮かび上がってくるのを見た。彼は思わず後ずさるが、好奇心が勝り再び近づいた。そこには、奇妙な形をした刀が沈んでいた。それはエペタムシュマと呼ばれる、伝説の人食い刀だった。
その刀はまるで生きているかのように、ひかりを反射し、黒い光を放っている。田中はその刀に手を伸ばすが、沼の水が彼の手首を締め付けるように感じた。恐怖に駆られ、彼は一瞬立ち止まるが、刀に対する執着心が彼を再び引き寄せた。
「この刀を手に入れれば、伝説の力を得られるかもしれない。」
彼は覚悟を決め、刀を掴むために水の中に手を入れる。水は冷たく、まるで彼の意思を試すかのようだった。だが、刀に触れた瞬間、激しい衝撃が彼を襲った。刀の力が彼の体を通り抜け、まるで何かが目覚めるかのように感じた。
「これは…!」
田中は刀を引き上げると、その瞬間、沼から大きな水の渦が巻き起こり、彼を飲み込もうとした。彼は必死に踏ん張りながら、刀をしっかりと握りしめた。
「俺は負けない!」
水の渦が彼を引き寄せる中、田中はエペタムシュマの力を感じ、逆にその力を使って渦を振り払う。すると、周囲が静まり返り、刀から放たれる黒い光が沼の水面を照らし出した。
田中は刀を手に入れたことで、その力の一端を理解し始めていた。だが、その代償として、彼の運命がどのように変わるのか、まだ知る由もなかった。彼は底なし沼から脱出し、神社へと戻る決意を固めた。
その後、田中はエペタムシュマを持って、数々の冒険へと挑むことになる。彼の運命を大きく変える力を手に入れた彼は、この刀がもたらす試練に立ち向かう準備を整え始めた。
田中は、夷王山の神秘的な雰囲気に引き寄せられた。ここには、室町時代の武将武田信広の埋蔵金伝説が伝わっており、その富を求める者たちが数多く訪れていた。しかし、その金は簡単には見つからないという噂が広がっていた。
田中は登山を続け、夷王山の頂上近くにある岩場に辿り着いた。そこには、古い石碑が立っており、武田信広の名前が刻まれていた。彼はこの地で戦い、隠された富を残したと言われている。興奮と緊張が入り混じる中、田中は周囲を見渡し、埋蔵金を見つけるための手がかりを探した。
すると、岩の隙間から微かに光るものを見つけた。近づいてみると、それは金色に輝く小さな小箱だった。彼は息を飲み、小箱を慎重に取り上げた。箱の表面には、武田家の紋章が刻まれていた。中を開けると、そこには金貨や宝石がぎっしり詰まっていた。
興奮しながらも、田中はこの宝物をどうすべきか迷った。埋蔵金を見つけたことは喜ばしいが、その背後には武田信広の悲しい歴史があることを思い出す。彼は富を手に入れることができるが、果たしてそれが正しいのか。
その時、彼の背後から不意に声が聞こえた。「それは私のものだ!」振り返ると、黒ずくめの男が立っていた。田中は瞬時に状況を理解し、金の所有権を巡る争いが始まることを感じ取った。
「武田信広の埋蔵金は、誰にでも手に入るものではない」と男は言った。「この地の守り人が許さない限り、君にはその金を持ち去ることはできない!」
田中は恐怖と興奮が交錯する中、どう行動すべきか決断を迫られていた。金を守る者と、金を求める者の対立が、夷王山の頂上で繰り広げられる。彼は自らの信念を試されることになるのだった。
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