第45話

「わっ!、なんだよ、いきなり入ってくんなよ!」



健司くんは何をしていたのか、入ってきた私を邪険な目で見る。



「ごめん、開いてたし…」



「女がいるって慣れないな。なぁ、…NATSUさんの知り合いって、ファンじゃないよな?彼女?……なわけないか」



「彼女なら置いてかないでしょ」



男の子特有の匂いがするその部屋にはCDコンポと多数のCD、懐かしいカセットテープが山のようにあった。


「blue-blackのインディーズ最後のアルバム聴く?」



健司くんは誇らしげに取り出した。



「聴く聴く」


♪♪♪♪


母が持っていたCDよりビートが効いてバンドらしい音だった。



「blue-blackはG県の誇りだよっ」


健司くんはニキビができたほっぺを紅くしながら、ノリノリで聴いている。



「バンドブームも終わりなのにメジャーデビューすごいよね、遠い存在になっちゃうかな」



バンドブーム……。


やっぱり90年代のできごと。



同じ世代の人じゃない。


だから余計にCDジャケットの綺麗なNATSUの顔を見ると、


″早く会いたいな″ と、思った。

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