第25話

今、立ち止まっているのは、自分が本来いるべきじゃない世界――――


そして、現実は、唯一の家族だった母が死んだということ…。




リアルな喪失感にきれいに泣くことができなかった。





これからプロデビューするミュージシャンの前で、不安で崩れ落ちるように、隣に腰かけた。





ヒックヒック、としゃっくりまで出る始末。




「お前、地元の子?何歳?」



「……地元です、…18です」




「…そっか。俺がバンドはじめたの18。


今、なんか……夢ある?」






NATSUの優しい会話の入り口に、少し落ち着きを取り戻した。




「…夢」




私にあったかな ?


あったけど叶わなくなった。



小さいときから願っていたこと。




"お母さんと暮らしたい"





「…家族を作ることです……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る