第3話

彼は母親の顔も知らずに育った。




写真も無い。




親はただ一人、父親のみ。








ただ、その父親こそが問題なのだ。






なぜならば、



父親は真正なる悪魔だからだ。






その父親をどう表現するのが最適なのかは

わからない。

今、他に表現の仕様が無く悪魔と呼んだが、

異形の姿をしているわけではない。



人の形をしているのは偶々たまたまだろうが、

人というカテゴリーに含めるには抵抗があり、

敢えて悪魔と呼んだ。

…というのが正しいか。






では、どんな人物なのか。






闇の住人? 巨悪の根源? 



いや、そんな程度の生易しいものであれば

何も苦労はしないだろう。





その男は、おびただしい数の日本人を殺している。



その数字は本人だけが把握しており、

公式な記録に残っているわけではない。




人を殺めたその数は、

なんと 日本の総人口を超えているという。




人口を超える数の人をどうやって殺せるというのか? というのはもっともな意見ではあるが、それについては改めて、順を追って話そう。





しかし、それだけのことをしておきながら、

男はとがめられもせずに生きている。




のうのうと、飄々と、何事もないように。





不思議な事ではあるが、

それだけのことをしていながら、

名前を知る人も何故か限られている。




現在、檻の中に収監されているが、

それも形だけのことだ。


そもそも拘束し続けることは不可能だ。


裁く法律も無い。





それらについても追々話すことにする。

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