第50話 旅立ち


勝ってしまった。


四天王と言われる魔族フェザーに勝った。


そして今は家に戻っている。


「うわぁぁぁぁーーん! アリスはアリスはリヒト様がぁぁぁ死んじゃったかと思いましたぁぁぁぁーー」


「リヒト様何があったのですか? アリスが泣きわめいていますが……」


「一体なにが起きたと言うのですか?」


俺はアイテム収納からフェザーの死体を取り出し、事情と女神の奇跡について話した。


アリスは話を聞いて落ち着いたようでようやく泣き止んだ。


「ぐすっ、本当にそんな事があるのですか?」


「イシュタス様はそこまで慈悲深い女神じゃないと思いますわ」


「本当にそうなら私達を見棄てたりしないと思いますよ」


言われてしまえばそうかも知れない。


だが、若返らせてくれて俺の心配までしてくれミステと引き合わせてくれた女神イシュタス様は素晴らしい神としか思えない。


それにこんな奇跡、女神様以外に起こせる気がしない。


前の世界で神仏にどれだけ祈ろうが願いなんて叶えて貰えなかった。


だから、三人がどんなに否定しても俺には女神イシュタス様への感謝しかない。


だが、揉めても仕方が無い。


俺は心の中でイシュタス様に感謝の祈りをささげ話を変える事にした。


今の問題は……


「所でつい持ってきてしまったが、この魔族フェザーの死体をどうする?」


「流石にアリスも人型は……あっ羽の部分は美味しそうです!」


「そうですわね……」


「リヒト様……私に提案があります。折角良い死体が手に入ったので、メリッサさんに幽霊から死人憑きになって貰っては如何でしょうか?」


「え~と霊子さん、どう言う事なのですか?」


「幽体離脱しての行為は刺激的ですが、リヒト様の消耗が激しいし、メリッサさんが実体を持ちましたら、普通にできますよね?」


「そんな事が出来るのか?」


「出来ますよ! 死人憑きになるのは怨霊ですから、メリッサさんにもなれる素質がありますね? どうですか?」


「この容姿がリヒト様の好みかどうかですわね……どうですか?」


確かに美人だ……だけど、問題はこの羽だ。


この羽、どうにか出来ないと目立ってしまう。


「凄い美人だと思うけど、この羽は不味く無いかな?」


フェザーの多分大きな特徴だ。


「そうですわね、確かにこの羽は目立ちますわね」


霊子とアリスが羽を触っている。


「あっ、リヒト様ぁこの羽引っ込みますよ!」


「肩甲骨の中に入るみたいですね……まぁこの世界には翼人も居ますから羽が生えているのが万が一バレても大丈夫ですよ」


それなら良いか……


「それなら良いか、確かにメリッサに体があった方がなにかと便利だし、その体は物凄く強いから……」


魔族の四天王……間違い無く強いよな。


「「「リヒト様のエッチ」」」


なんでそんな目で見るんだ……勘違いだぞ。


どちらかと言えば、三人の方が盛んだと思うが。


弁解しても仕方が無い……な。


「もうそれで良いよ! 三人といつもイチャイチャしていたいのは本当だから……」


「それじゃ決まりね、メリッサさん準備は良い? 行きますよ……えぃ」


「えっ、霊子さんどう言う事ですの?」


「あっあっ、メリッサさんが小さくなって死体に食べられちゃいました」


霊子が手で粘土をこねるようにするとメリッサが小さくなり、そのままフェザーの口の中に吸い込まれた。


「うっ、痛い、痛いのですわぁぁぁぁーーー」


「あっゴメン……」


俺は慌ててポーションをメリッサ? フェザー? に振りかけた。


「リヒト様ぁ、酷いですわ……切腹状態で本当に死ぬかと思いましたわ……あっ、私元から死んでいましたわね」


しかし、姿がフェザーではなく、フェザーを更に意地悪くしたような感じに見える。


悪役令嬢が近いかも知れない。


「なんか容姿が変わった気がする」


「まぁ、初めて死人憑きになったのだから、こんな物かな? 死人憑きって怨霊に近いからこんな感じに恨みが籠った形相になっちゃうんですよね……私みたいに何百年も経った存在は別ですけどね」


「嘘ですよね? 私、そんな形相になっていますの? リヒト様、嫌いにならないでくれますか?」


「それはそれで悪役令嬢みたいで、魅力的だよ」


「そうですの? 悪役令嬢は解りませんが……リヒト様のお好みなら構いませんわ」


「そう……それなら良かった」


アリスがなんだか悲しそうにこちらを見ている。


「アリスどうかしたか?」


「いえ、2人は齢をとらないんですよね? アリスだけ齢とってお婆ちゃんになるのは嫌だなぁと思っただけです!」


確かに二人は実質不老なんだよな。


「アリス、俺も齢をとるから……」


「アリスさんが死んだら死人憑きにしてくれますわよね? 霊子さん?」


「大丈夫よ! なんなら一遍死んでみる? 死んでしまったら蘇らないけど? すぐに同じにし.て.あ.げ.る」


「アリスは……アリスは……まだ死にたくありませんよ!」


「それじゃ残念……死人憑きになりたくなったら何時でもいいなさい、死んだらすぐにしてあげるから」


「アリスはまだ良いです……」


「そう」


確かに元気なアリスに死人憑きは合わないな。


「まぁ、ゆっくりで良いんじゃないかな」


これで……良いのかな? 良いんだよな!


◆◆◆


もう、フェザーは居ない。


だったら帝国は安全なのか……いや、自分達の軍団長が居なくなったんだ。


探しに来るかも知れない。


だったら……逃げた方が良い。


「それじゃ行こうか?」


「「「はい、リヒト様」」」」


三人で話し合い、帝都を離れる事にした。


今迄魔族が攻めてきたのは帝国では帝都だけ……


それならもっと先に逃げれば問題無い。


ここから歩いて3か月。


『ズイタアガワ』という異世界人の作った街があると聞いた。


温泉と海がある場所らしい。


取り敢えず、そこを目指す事にした。


そこが安住の地なら良いな……


違うなら別の地に旅するだけだ。


俺はただの人だから……4人で平和に楽しく暮せれば、それで良い。


それ以上は望まない




FIN

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