第26話 本当に知らない事が多すぎる。


「こちらが報奨金の銀貨9枚と銅貨6枚です」


俺は今、冒険者ギルドに来ている。


勿論、報奨金を貰う為なのだが……


「あの……差し出がましい事ですが、リヒト様は借金でもなさっているのでしょうか?」


「いえ、別に借金などしていませんが……」


なんでそんな事聞くんだろう?


「そうですか? 鬼気迫る形相で仕事をなさっているので、てっきり借金でもなさっているのかと思いました。 あの、それなら、何故こんなに根を詰めて仕事をしているのでしょうか? こんなハイペースで仕事をしていたら、そのうち倒れますよ!」


「えっ、そうなのですか?」


確かに、前の世界では隔週で週休2日間。


つまり、一か月で6日間休みがある。


他に祝祭日も休みだ。


また、それ以上に、肉体を使う仕事、消防官とかは休みがもっとあった気がした。


すっかり忘れていた。


「普通の冒険者は毎日討伐なんてしませんよ? ちゃんと休まないとそのうちミスして大変な事になりますよ?」


「大変な事?」


「討伐しているんです! 男性は悲惨な事になりにくいですが…….負けたら、殺されるんですよ? 充分な体調を維持しないと本当に死にますよ!」


確かにそうだ……ゴブリンは弱いとはいえ相手も殺しに来ているんだ。


体調が悪いからって逃がしてくれない。


前の世界の仕事みたいに体調が悪いからって早退なんて出来ない。


そこには死しかない。


「確かにそうですね! 気をつけます。 一般的な冒険者って大体どの位働く物なんですか?」


受付嬢は指を口にあてて……


「そうですね……良く働く冒険者で3日間に1日位ですね。 普通の冒険者で週1日位、大物狙いや食えれば良いなんて人だと月1日なんて人も居ますよ? 流石に毎日は働き過ぎです」


「だけど、薬草やポーションで回復すれば問題無いんじゃないですか?」


「薬草やポーションで確かに回復しますが、それとは別に数字に現れない疲れが溜まるんですよ! HPは減って無いのにハァハァぜいぜいしたりしますから、休みはきちんと取らないと駄目なんですよ」


「そうですか」


確かに今日一日で9万6千円。


週二で約月80万円。


充分高給取りだ。


月4回で40万円。


理にかなっている。


「そうですよ! 冒険者は自由な仕事です。 だからこそ疲れが溜まりミスしないように気を付けないとなりません! 脅すわけじゃありませんが討伐中心に活躍する冒険者で10年続けられていられる人は2割も居ないんです。 頑張って下さいね」


「はい……所でオークの討伐って幾ら位なんですか?」


「銀貨3枚です。ですが他に素材として肉も買い取りますので、大体そちらも合わせると銀貨8枚程度になる事が多いですね」


ゴブリンが銅貨6枚だから約5倍 3万円。


それに肉の買取りを合わせると8万円って事か?


確かに美味しい。


だけど、プロレスラーを殺して肉を合わせて8万円。


自分が殺し屋なら……決して美味しい仕事じゃないな。


「結構実入りが良いんですね」


「その分、難易度は高くなり、命がけとなります。それでも動きが鈍い分まだ脅威じゃありませんが、一つミスした瞬間死が訪れます。 棍棒、パンチそれが直撃したら大怪我は免れないでしょう。 ゴブリンは、何回も攻撃を喰らっても戦えますが、オークともなれば1回のミスで終わりです……悪いことは言いません。 1体なら狩れると評価はされていますが、もう少し経験を積む事を提案します」


1体なら狩れる……確かにそう評価されたけど、もう少し経験を積んだ後の方が良さそうだ。


しかし……もう少し知識をつけないとまずいな。

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