負けヒーローと負けヒロイン

赤岡伊織

第1話 負けヒーローと負けヒロイン

 俺の名前は松下蒼葉まつしたあおば……俺には好きな人がいた。


 その子の名前は清野舞せいのまい……青色の髪色でショートカットヘヤーが特徴の女の子で、優しい性格をしていて、容姿端麗……そして、モデルと間違えるくらいのスタイルを持つ、学校きっての美少女だ……


 俺はその子と中学校、高校と一緒で中学生では、ほとんど喋らなかったけど高校生になった今、同じクラスになったことで彼女とは色々お喋りをすることが多くなった。


 俺は彼女の可愛いらしい顔と包み込んでくれるような優しい性格も相まって彼女に心底惚れていた。


 そして、今日俺は決心する……

 彼女に告白すると……

 

「今日の授業も疲れたね〜〜!」


 今日の学校の授業が終わり、今はホームルームをするために先生が教室に来るのを待っている状態だ……


 そう一際目立つように声を放ったのはこのクラスで一番の美少女と揶揄される、美しい黄色の髪色ロングヘヤーをしている、名前を今田真香いまだまのかという女の子だ……彼女はそのモデルや芸能時だと間違われるほどの容姿と美しいスタイルをしていて、持ち前の明るい性格で人気を博していた。


「おーい! 真香! ちょっとここの問題教えてくんないか?」


「あ! 琥太郎! どこがわかんないの?」


 今、今田さんに話しかけたのは絢瀬琥太郎うやせこたろうといい、大変優れた容姿からクラス一……いや、学校一のイケメンと言われていて、そしてなにより今田さんの幼馴染だ。


 この二人は幼馴染というだけあって大変仲がいい……今田さんがめちゃくちゃ可愛いのに全然告白されない理由はこの難攻不落の城が今田さんを覆っているからであろう……

 

 そんなことを考えていると先生が教室にやってきてホームルームが始まった。  


 俺はホームルームの最中も告白のことに気をとられて話を全くと言っていいほど聞いていなかった。

 そして、ホームルームが終わった頃……俺は思い切って彼女の所に行って言う。


「清野さん……ちょっと来てもらってもいいかな?」


「え? うん! いいよー!」


 そして、俺は誰もいない空き教室へと清野さんを連れて来た。


「どうしたの? いきなり、こんな場所に連れてきて……」


 俺は真っ直ぐに清野さんの顔を見つめる。

 また、清野さんも俺の顔を見ていた。

 俺は深呼吸をして口を開いた。


「ずっと前から好きでした! 俺と付き合ってくれませんか!!!」


 俺は清野さんに律儀にお辞儀をして手を伸ばした。


「…………」


 そしてしばらく沈黙の時間が訪れる。

 俺はその間、緊張と期待が入り混じって心臓がバクバクしていた。


「……松下くん……」


「は! はい!!」


 俺はいきなり清野さんに名前を言われて思いっきり大きい声を出す。


「ごめんね……ワタシ今、とっても好きな彼氏がいるの……だからお気持ちは嬉しいんだけど……君とは付き合えない……」

 

「…………っ!?」


 俺は清野さんにそう言われて俺の中の何かが崩れる音がした。


「……こんなワタシの事好きになってくれてありがとね……松下くん……」


「……ううん! 気持ちを伝えてくれてありがとう!! その彼氏さんとお幸せに……」


 俺が声にならない声でそういうと、彼女は走ってこの場をさってしまった。

 俺はしばらくこの教室に立ち止まって窓の外をただ虚しく見つめていた。


 そっか……清野さん……彼氏いたんだ……全然気づかなかったや……


 もしもだ、その彼氏よりも俺が早く清野さんに告白していれば……また結末は変わっていただろうか……俺はそんなことを考える。


 いや……変わらないな……


 そしてしばらく経って俺はゆっくりと空き教室を出て行って荷物を教室に置いたままだったので教室に取りに行くべく向かった。


 俺が教室に着くと、クラスには一人の生徒を除いて誰もいなかった。

 俺が荷物を取ろうと自分の席に向かうと一人の生徒の泣く声が聞こえてくる。


 俺は恐る恐る泣いている生徒の方を見た。

 すると、その泣いている生徒は今田さんだった……


 今田さんは自分の席に座りながらただひたすら泣いていた。

 俺が泣いている彼女を見逃すこともできずに彼女に話しかける。


 俺は普段……清野さん以外の女子とは積極的に会話しようとはしないのだがこの時は何故だか、俺は彼女に自分から積極的に会話をしようとした。


 もしかしたら、彼女が今の自分と重なるところがあったと俺の本能が告げていたからかもしれない……


「どうしたの? 何かあったの?」


 俺が彼女にそう聞くと、彼女はしばらく経ってから口を開いた。


「このことを誰かに話したところで先程の展開が覆ることはないんだけどさ……聞いてくれる?」


「うん……聞くよ……」


 彼女が手で涙を拭き取り、俺にそう言ってきたので俺は真剣な顔でそう言った。


「実はさ……私、ずっと好きだった幼馴染がいたの……それでさっき意を決して告白したらさ……彼女がいるからごめんって、私振られちゃったんだよね……」


 彼女は悲しそうな顔で先ほどあったと思われる事柄を話し始めた。  

 俺はその話を聞いて、とても他人事だとは思えなかった。

 だって、俺と全く同じだから……


「……あ、なんかごめんね……私、こんな話を紙にしちゃって……迷惑だったでしょ……」


「全然! 迷惑なんかじゃない!!」


 俺は悲しそうにそういう彼女にそう叫んだ。


「俺も今田さんと同じだから……」


「同じってどういうこと?」


 俺がそう言う発言をしたので、今田さんは不思議そうにそう呟いた。


「実は……俺もさっき好きな人に振られて……その理由が彼氏がいるからだったんだ……だから、その……今田さんの気持ちすごくわかるよ……」


 俺がそういうと、今田さんはたいそうびっくりしたような顔をしていた。


「そうだったのね……ねえ、あなたはさ振られて悲しい?」


「そりゃもちろん!!」

 

 俺は彼女が何故そんな当たり前のことを聞くんだと不思議に思った。


「じゃあ……この後時間ある?」


「え? あるけど……」


 俺は彼女に突如そう聞かれてびっくりする。


「じゃあ、この後ちょっと付き合って!!」


「え? うん……」


 俺は彼女にそう言われて気がかなく了承する。

 そして、彼女と一緒に学校を出た。

 


「あの……今これ一体どこに向かって歩いているの?」


 現在、学校を出てから、俺は彼女に任せて彼女の横でどこかに向かってただ歩き続けていたが、流石にどこに行くか気になってそう聞いた。


「え? どこって……ゲーセンだけど……」


「ゲーセン!?」


「なに? もしかして嫌だった?」


「いやいや!! 全然嫌じゃないけど!! ちょっとびっくりしただけ!」


「だって! 悲しい時はさ! 楽しいことして忘れろ!! ってよくいうじゃん!! だから今は楽しむ!!」


 だからゲーセンなのか……

 俺は彼女の一言でえらく納得する。

 でもまさか、今田さんとゲーセンに行く日がこようとは……


「あ! 着いた! ここだよ! って知ってるか!」   


 今田さんと俺が到着したゲーセンは俺たちの近所じゃとても有名なゲーセンで……店内は広くて、クレーンゲームやメダルゲーム……そのほかにもいろいろ揃えてある。


「さあ! 入ろっか!!」


「そうだね……」


 俺と彼女はそんな話をしてゲーセンの中に入って行った。

 ゲーセンの中に入ると、目に入ってきたのは数多のクレーンゲームだった。


「よーしな! いっちょ! 楽しむぞ!!」


 俺の横でそう、さっきと一変して元気よくそう行ってクレーンゲームの方へと歩いていく。

 俺が今見ている今田さんは俺がいつもクラスで見かける今田さんそのものだった……

 俺はそんな今田さんの後を追って、歩き出した。

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