第48話

 パタパタと可愛らしい足音がスタジオに響く。


「みなさん、お疲れ様です♡ドリンクを持ってきたのでどうぞ♪」


 モアが一人ひとりにドリンクを渡して回る。スカイに渡そうとした瞬間、あっ、と可愛らしい声を上げた。


「スカイさん、額から汗が出ていますよ♡」


 すかさず、白いふんわりとしたタオルをスカイの額に持っていき、優しく拭いてあげる。タオルからは甘い香りがして、スカイの嗅覚を刺激した。


「このタオル…甘い香りがする?」

「あ、分かりましたか?体をリラックスさせる香りを振りました♪」

「へぇ、ありがとう。モアは気が利くんだね」

「あ、はい…モア、嬉しい…」


 スカイにお礼を言われて、モアは顔を赤く染める。


「なんか、モアちゃん、スカイを特別視してねぇ?」

「やだぁ、レンノスケさんの気の所為ですよ!はい、レンノスケさんのタオルです♪」


 モアが笑顔でレンノスケに渡すと、レンノスケはデレデレして受け取る。デレデレしているレンノスケを遠くから見ていたユーシはアヤトの隣に来た。


「あの人、頻繁に来てますけど、暇なんですか?」


 ユーシは冷めた目線を送りながらアヤトに話しかける。


「うーん…ツアーもないからお休み期間中なのかな?後輩だし大目に見てあげて」

「後輩…ね…」


 モアを冷めた目で見ていた。


「スカイさん、なにか食べたいものはありますか?また、モアが作ってあげます♡」

「うーん…大丈夫だよ。モアちゃんありがとう」

「あ、この前のモアが作ってきたクッキーはどうでしたか?」

「うん、美味しかったよ」

「やったー!スカイさんに褒められちゃった。モア嬉しい♪」


 スカイの腕を掴み自分の方に引き寄せる。周りから見るとイチャイチャしているように見えた。


「あれ、付き合ってないですよね?」


 まだ、恋愛が良く分からない18歳のキキでも間違うほどに距離が近くベタベタとスカイの体に触っていた。


「…さすがに後輩だよ?」


 アヤトは苦笑いする。


「ですよね…」


 キキが納得している。っと、スタジオのドアが突然、開くと、スタジオ内に居た全員がドアの方に注目する。上品な黒いシャツワンピースを来た女が紙袋を持って立っていた。


「みなさん、お疲れ様です」


 女の凜とした声が響く。


「あの、誰でしょうか?」


 見たことのない上品で綺麗な女にアヤトは目を丸くしながら声を掛ける。


「アヤトさん、私ですよ?」

「はぁ…?」


 アヤトは首を傾げる。


「紗奈!?」


 スカイは言った。


「「「「え!!?」」」」


 紗奈の変貌ぶりに、【SPIRE】のメンバーはビックリして動きが止まる。


「みなさんが帰ってこないほど練習に打ち込んでいると聞いて、差し入れを持ってきました」

「あ、え、なんでそんな格好…」

「ONとOFFを使い分ける権利はあると思ったんで、今はプライベートで来ています」

「はあ…そ、そう」


 アヤトは苦笑いで紗奈を見た。


「お腹が空いていると思いまして、おにぎりを作ってきました。飽きないようにいろんな具材を入れています」

「うわっ!うまそー!」


 レンノスケは紙袋の中身を見てテンションが上がる。


「…紗奈さん、ありがとう」


 キキは紗奈にお礼を言う。


「紗奈さん、少しは戦う気になったってことかな?」


 ユーシが紗奈に近づいた際に耳打ちした。


「ユーシさん…なんのことでしょうか?」

「ふーん、まあいいよ。おにぎりありがとう、いただきます」


 ユーシは笑顔で紗奈にお礼を言った。


「…残りは置いて帰ります。では、練習頑張って下さい」


 紗奈は紙袋をアヤトに託すと、お辞儀をしてスタジオの扉を締めた。


「……スカイさん、あの女性はだれですか?」


 モアがスカイに話しかけるが、スカイは紗奈が出ていったドアを見つめていた。


「スカイさん!?」

「モア、ごめんね。いかないと…」


 スカイは笑顔でモアを交わすと、急いでスタジオを出ていった。


「もう、なんなの!!?」


 無視をされたモアは怒った様子だった。









 

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