【SPIRE】と【Rush】

第39話

 黒スーツを着て、レコーディングスタジオがある新宿まで行くと人混みの多さに圧倒される。


「人が多いなー…あ、この声…新曲の[Crunk]だ」


 何処からかスカイの歌声が聞こえ、上を見上げると、ビルの大画面から【SPIRE】の新曲[Crunk]が流れていた。


「この曲、超いいよね~!」

「それ!!スカイがちょー良すぎー!!」

「ねー、声がイケボ過ぎて推し確だよねー!」

「だねー!!」

「でも、アヤトもダンスがイケてるー」

「やだー、レンちゃんもイケてるよ!」

「ユーシくんもだし!」

「キキとか色っぽいからぁ!」

「キャー、選べなすぎー☆」


 若い子が大画面を見ながら友達と盛り上がっているのを紗奈は微笑ましく見つめた。


「【SPIRE】も、もっと人気が出てほしいな」


 普段、彼らが努力をしているのを間近で見ているので自然とそういう気持ちになっていた。人気と引き換えに、スカイはどんどん遠くに行ってしまうけど、彼はアイドルなのだから、そういう存在なんだ。


「でも、一番はリキト…かな……」


 紗奈はあくまでも好きなアイドルは【Rush】だった。そういえば、そろそろ【Rush】も新曲を作るという情報が極秘の掲示板に載っていた。


「【Rush】は今回はなんの曲なんだろう?」


 独り言を言いつつ、新宿駅から少し離れたビルにあるレコーディングスタジオに来た。アヤトの指示では3階にハカセのスタジオがあると言っていた。緊張しながらビルに入っていく。ビルの3階に着くとインターホンを鳴らす。


「はい、【SPIRE】のアヤトさんの代理で来ました、日菜乃サクです」

「ああ、連絡が来ています。今、開けますね」


 洒落た薄ガラスのドアが開く。そして、中から綺麗な清楚系の女性が出てくる。


「中にお入り下さい」

「失礼いたします」


一礼すると、紗奈はスタジオ内に入る。いろいろな音楽の機材があり、紗奈は圧倒される。


「ハカセ先生は今、レコーディング中なので、もう少々お待ち下さい」

「あ、誰かレコーディング中なのですね!」

「どうぞ、椅子にお掛けになって下さい」

「…恐れ入ります」


 事務的に椅子に座れと指示されたので、紗奈は椅子に座る。誰がレコーディング中なのか気になるので、頑張って背伸びをして見ようとするが、いい位置じゃないのであまり見えない。


「誰か気になるなぁ」

 

 レコーディングスタジオのドアが開いた。どうやら、レコーディングが終わったみたいだ。


「日菜乃サクさん、お待たせしたねー」

 

 頭にヘッドホンをつけたままの気の難しそうな男が紗奈に挨拶をして手を差し伸べる。紗奈も立ち上がって握手を交わすと、ハカセは椅子に座る。


「日菜乃さんは随分と女の子のように可愛らしいんですね」

「え?」

「はは、セクハラじゃないですよ?可愛い子を見ると僕がプロデュースしたくなっちゃう性格なんですよ」

「ああ、そうなんですね」

「さ、冗談はさておき、アヤトさんからの書類を受け取りましょうか?」

「はい、よろしくお願いします!」


 紗奈は笑顔でハカセに書類を渡す。それを笑顔で受け取る。


「ハカセさーん、まだですかー?」

「ああ、まだ待ってて!」


 ハカセを呼ぶ男の声が聞こえる。


「…この声…?」


 紗奈はこの声に聞き覚えがあった。まさかと思い、声がした方を覗き込むと…


「……あれ?ハカセさんのお客さん?」

「あ…」


 紗奈は開いた口が塞がらない。

 

「ババババッ、バンビ!!!?」


 驚きのあまり、上ずった声で言う。


「うん、バンビだけど???」

「ううううそ!【Rush】がなんでここに!?」

「何って、レコーディング中だよ?」

「やだ、生バンビ、超イケメンすぎる!!」

「え……ああ、ありがと…???」


 男の外見で乙女的な声を出すので、バンビはそういう人なのかと思うことにした。


「しかも、バンビのラフ姿キター!!」

「ハカセさん、この子、何者!?」

「ああ、アヤトさんの使いの者だよ」

「へー、テンション高くて面白い子だね…はは…」


 バンビは出てきたことを少し後悔したのは内緒の話だ。


「うるせーなー、バンビ、何してんだ………」

「あ…リキト!!」


 紗奈は驚きのあまり静止してしまった。バンビがいるならリキトも居るのは必然で、リキトは瞬きをする。


「は?お前…なんで男装なんかしてんだ?」

「!!!??」


 紗奈は目を見開く。


 


  






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