第13話
山に建つラブホテルは、戸別になっていた。
塀入口から坂道を上がると、さっき見かけた黒い車が、一番奥の部屋にバック駐車している際中だった。
死角になる建物の間から車を止めて降り、そっと男女が出てくるのを待った。
傘も持たないから、びしょ濡れだ。
ほんの数十秒なのに、その時間がとても長く感じた。
バン!と勢いよくドアを閉めて、男が髪を気にしながら降りてきた。
「…あ」
あのブルーのシャツ。
一昨日、私がクリーニングに取りに行ったばかりの物だ。
眼鏡をかけているけれど、間違いなく夫の祐介。
心臓が鷲掴みされた様に痛くなる。
「もぉ、酷い雨ー」
少し遅れて助手席から降りてきたのは、20代と思われる細身の女。
二人は車のナンバーも隠さずに中に入って行った。
車は、わナンバーでレンタカーだと分かった。
体が、打ち付ける雨に切られそう。
声を出さなかったものの、私は泣きながら車に戻ってヘッドライトも点けずに走らせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます