第二章 死せる再生者 ⑦

「コンジェルトンさん!起きてください!レビストロンコスの森に着きましたよ!」


馬車の引手に声をかけられ、コンジェルトンは目を覚ました。ここ2ヶ月弱、彼は馬車の中で寝てばかりの生活を送っていた。


「それにしてもこの森、どこから入ればよいのでしょう。中心集落に続く道が見当たらないですが…」


コンジェルトンは周囲の木々を見渡し、そこに迷彩魔法がかけられていることを直観した。


「”カメレオン”だな。複数人が迷彩魔法の網を張り、どこが入口なのか、外部からわからなくしている」


コンジェルトンは杖を取り出すと大雑把にアタリをつけ、”ディスペルマジック”(※)の術式を印じた。すると木々の間に道が見えるようになった。そこには一人の女エルフが立っていた。


「さすがはコンジェルトンさん。一回のディスペルマジックを、魔晶石すら使わずにこれほど広範囲に展開するとは……噂以上の実力をお持ちのようですね。申し遅れました。私は大陸魔法評議会会長ゼルーエの秘書、ディトリートと申します。会長にはあなたを案内するよう申し付けられております」


「ふむ、ディトリートさん」


コンジェルトンと引手はディトリートに挨拶する。と、その時コンジェルトンは何かを感じ取った。


「引手さん、すまないが、あんたはこの馬車で待っていてくれないか」


「ええっ、せっかくエルフ族の聖地に来たのです。私も見物をしたいのですが……」


戸惑う引手にコンジェルトンが耳打ちする「どうやら我々は、必ずしも歓迎されていないようですぜ…」


コンジェルトンは引手を待機させ、一人でゼルーエに謁見する旨を伝えた。


「超大樹レビストロンコスまではここからやや距離があります。地上を進むのではなく、ここはエルフ族らしく木々を渡って行くとしましょう」

ディトリートはそう言うがいなや木の大枝に飛び乗り、そのまま枝から枝へと飛び移っていく。コンジェルトンも枝に飛び乗りそれを追った。これは半樹上性のエルフ族だからこそできる芸当であった。


ターザンのようにしばらく進むと、やがて森は開け大きな集落が広がった。エルフ族の住居は特殊な技法で大木に樹洞を作り、そこを改築したものであった。それら集落の中心には超大樹レビストロンコスがそびえ立っていた。


大陸魔法評議会の本部は、超大樹レビストロンコスの内部に置かれていた。巨大な樹の室を改造した入口を通り、そのまま内壁を滑るように進みしばらくすると、驚くほど広く長い廊下が続く明るい空間へとたどり着いた。


「これ程の大樹、しかしその中にこれほど広い居住空間が……」


「超大樹レビストロンコスは、元々物質界が他の世界と別れる前に、植物の精霊ワタボーによって見つけられたものです。この樹を見つけたワタボーは”あ、温泉もあるじゃないか。ああ嬉しくなっちゃった。よし、みんなに教えてあげよう”と親交のあったエルフ族たちにこの場所を教えました。そしてエルフ族たちはワタボーと協力し、この大樹を中心に大集落を形成したのです」


驚くコンジェルトンにディトリートが解説する。



※魔法の効果を打ち消す魔法

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