第34話

くちびるが触れるかどうかの

微妙な距離…


嫌がられるのも

悲しいと思ったし

だからと言って

いきなり大人のキスというのも…

まだお昼だし…


って

そういう問題ではなくて…


柔らかいくちびるの感触が

心地よくて


もっと

彼女のことが欲しいと思ってしまった…


ほんの一瞬のキスだったけれども。


吉田さんは

目を見開いたままで

驚きを隠せないようだった。


「…すみません、あまりにも可愛いと思えたので…」


「……」


「嫌…でしたか?」


「…びっくりしてしまって…」


「続きは、また今度で」


そう言って、僕はなり続けていた電話の相手に

電話をする。



好きな人と一緒に仕事ができるって

やっぱりいいな。


どうしよう…

一気に二人の距離が縮まった気がして

ニヤつきそうになってしまう。


年下だけれど

社長っぽく振舞わないと。


努めて、落ち着いた声を出すようにしながら

電話をするけれど…

やはり、嬉しさを隠せていないようで

電話の相手に


「今日は、元気が良さそうですね」


なんて言われた。


「ええ、まぁ、色々ありまして」


僕は、曖昧に誤魔化す。


本当は、好きな女性と一緒に仕事していると

言いたいところだけれど…


そんなことを言ったら

それこそ公私混同していることになる。


年上の女性なのに

僕の気持ちを知って

動揺するなんて

愛しくてたまらなかった…



あと、数時間後まで

我慢しなければ…


さっきの続きを…

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