第19話

「あ…」


こちらに気付いた彼の方が声を漏らした。


噴水越しの彼は、顔の半分が水に揺れてハッキリは見えない。


けれど、あまりにも。


少し切長な目とか。


整えられたストレートの黒髪とか。


形のいい、唇とか。


電話に向かっていた声とか。


身長、も。


全部が、【あきちゃん】だった。


違うのは、黒いスーツを着ているところぐらいか。


けれど、赤ちゃんに黒いスーツを着せたらこうなると思う。


「あ、あの…」


あきちゃん?


なんて聞けるはずがない。


じゃあ、彼は一体誰?


私があまりにも想うから…神様が創り出した幻影?


ガシャン。


彼が、スマホを落とした。


水の横から顔を出す彼。

一歩だけ、その歩みを彼は進めた。


今度こそはっきりと見えた。


ーあき、ちゃん…?


うるさいくらいに心臓がなる。

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