第66話

「俺しばらくタピオカはいらねーかもー」

「疲れたねー」

「後夜祭まで体力もつかなー」


お店の片付けも忘れ、皆が座り込む。


かくいう私も疲れ切って、壁にもたれかかった。


「楓!」


「里奈」


「あまったタピオカミルクティー、飲む?」


「もうタピオカ見たくないよ」


「まあまあ」


そう言って両手にもった2つのタピオカミルクティーのうち、1つを私にくれた。


「里奈、本当に良かったの?その、好きな人と…」


「まあ、それも青春だけどさーこの忙しさも青春って感じしちゃった!」


笑顔で話す里奈に安堵する。


里奈らしいなと思った。


すると里奈が私に耳打ちをした。


「あのね、回らなかったのは残念だけど…実は後夜祭の花火、一緒にやるって約束してるんだ…」


「え!」


「しー!声がでかい!だから、いいの。どうなるかわかんないけど…楽しみなんだ」


なんて可愛い生き物なのだろう。


里奈が、巻いているツインテールの1つをくるくると指でいじっていた。


「頑張れ、里奈」


「ありがと。ってか、楓、なんで今日はポニーテールじゃないの?巻き髪だけってつまんなくない?」


「忙しくて髪のこと忘れちゃったんだよね」


「もう!楓は自分の可愛さわかってなさすぎ!」


「あ、はは…」


笑ってごまかす。


見せたい相手がいれば頑張ったのでだけれど、

今日失恋することがわかっているから、もういいと思っていた。


【全校生徒のみなさん。本日はお疲れ様でした。結果発表を行いますので、体育館に集まってください】

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